現代自動車グループ、積層造形ソリューションセンター「AMSC」を新設 設計から検査まで一貫対応

2026年8月26日
出典:現代自動車グループ
出典:現代自動車グループ

現代自動車グループは、韓国・南陽技術研究所に「積層造形ソリューションセンター(Additive Manufacturing Solution Center:AMSC)」を新設した。DfAMによる設計から造形、後処理、品質検査までを一貫して行う体制を構築し、自動車開発の迅速化や軽量部品の開発、モータースポーツ、生産終了車の補修部品、ヘリテージ車両の復元などに積層造形(AM)を活用する。

3Dプリンター導入から30年、AMの専門拠点を開設

AMSCは、2026年6月に南陽技術研究所内に完成した「AMS(Advanced Mobility Solution)棟」に設置された。現代自動車グループが初めて3Dプリンターを導入した1996年から30年を経て開設された、積層造形の専門拠点である。

最大の特徴は、3Dプリンターを集約しただけではなく、積層造形部品の開発・製造に必要な工程を一つの拠点にまとめた点にある。

AMSCでは、DfAM(Design for Additive Manufacturing)による設計、造形データの準備、材料・プロセス条件の設定、造形、サポート除去、熱処理、表面処理、CNC加工、寸法検査、機能試験、材料評価までを内部で実施する。

造形だけでなく、前後の工程を含めて管理することで、積層造形部品の開発と品質検証を一体化する狙いだ。

VPP、PBF、Metal PBF、DED-WAAMなどを導入

AMSCでは、材料や用途に応じて複数方式の積層造形装置を使い分ける。

樹脂分野では、液状の光硬化性樹脂を使用するVPP(Vat Photopolymerization)や、ポリマー粉末を使用するPBF(Powder Bed Fusion)を導入。試験・検証用部品のほか、ロボティクス、アフターサービス用部品、ヘリテージ車両の復元部品などに活用している。

金属分野ではMetal PBFに加え、DED(Directed Energy Deposition)にも対応する。

なかでもDED-WAAM(Wire Arc Additive Manufacturing)は、金属ワイヤーとアークを利用して材料を積層する方式で、比較的大型の金属部品を製造できる。造形後にCNC加工などを施し、最終形状へ仕上げる。

航空宇宙などの新規事業分野では、大型部品やチタンなどの特殊材料への対応も見据え、DEDやMetal PBFを利用したプロジェクトを進めている。

モータースポーツ部品にもAMを活用

AMSCの技術は、すでに現代自動車グループの車両開発に利用されている。

現代モータースポーツ(HMSG)との取り組みでは、軽量性と高剛性が要求されるアンチロールバーブレード、ダンパーブラケット、ブレーキダクトレールなどに積層造形を適用。このほか、オイルセパレーター、シャシーレッグ、コンソールブラケットなども積層造形で製造しているという。

DfAMやトポロジー最適化を利用することで、必要な強度や剛性を維持しながら軽量化できるほか、ラティスやTPMSなどを活用した複雑な内部構造も設計できる。

また、従来は複数部品を組み立てていた構造を一体造形することで、部品点数や組立工程の削減にもつなげられる。

3Dスキャンで旧車部品を復元

生産終了車両の部品復元もAMSCの主要な用途の一つである。

AMSCでは、既存部品を3Dスキャンして形状をデータ化し、リバースエンジニアリングによって設計データを再構築する。破損や劣化した部分をデジタル上で補正したうえで部品を製造できるため、現存する部品の状態に左右されにくい。

この技術は、現代自動車の「ポニー」や「ステラ88」の復元プロジェクトですでに活用されている。2026年からはヘリテージ車両の復元への本格的な活用を開始した。

今後は、生産終了車種のA/S部品や緊急時の部品供給などへの展開も進める。金型の老朽化や破損、部品メーカーの生産停止といった状況でも、設計データを基に必要な部品を製造できる体制の構築を目指す。

現代自動車グループは今後、積層造形の量産適用と技術内製化を進めるとともに、韓国内外のAM関連企業や研究機関との連携を拡大する方針である。

シェアラボ編集部コメント

AMSCで注目したいのは、単に複数方式の3Dプリンターを導入したことではなく、DfAM、材料、造形、後処理、機械加工、品質検査までを一つの製造プロセスとして社内に構築した点である。

また、モータースポーツや高性能車だけでなく、生産終了車のA/S部品やヘリテージ車両の復元まで用途を広げている点も興味深い。自動車分野におけるAMは、大量生産をそのまま置き換えるだけでなく、少量部品、旧型部品、短納期部品、複雑形状部品など、金型生産が不得意とする領域を補完する技術として存在感を高めている。

AMSCは、自動車メーカーが積層造形を「試作用3Dプリンター」から、設計・製造・品質保証を含む本格的な製造技術へと発展させていく動きを示す事例といえる。

用語解説

AM(Additive Manufacturing/積層造形)
3Dデータを基に材料を一層ずつ積み重ねて立体物を製造する技術の総称。一般には3Dプリンティングとも呼ばれる。金型を必要とせず、複雑形状や少量生産に対応しやすい。
DfAM(Design for Additive Manufacturing)
積層造形の特性を前提として部品を設計する考え方。複雑形状、部品の一体化、軽量構造など、従来工法では実現しにくい設計を取り入れることができる。
PBF(Powder Bed Fusion)
粉末材料を薄く敷き詰め、熱源によって必要な部分を選択的に融合させる積層造形方式。樹脂や金属の部品製造に利用されている。
DED(Directed Energy Deposition)
レーザーやアークなどの熱源を用い、金属粉末やワイヤーを供給しながら材料を堆積させる積層造形方式。大型金属部品の製造や補修などに利用される。
WAAM(Wire Arc Additive Manufacturing)
金属ワイヤーとアークを利用して金属材料を層状に堆積させる積層造形方式。比較的高速に造形でき、大型金属部品の製造に適している。
リバースエンジニアリング
既存の製品や部品を測定・3Dスキャンし、その形状情報から設計データを再構築する手法。図面が残っていない旧型部品や生産終了部品の復元などにも利用される。

関連記事

今回のニュースに関連するものとして、これまでShareLab NEWSが発表してきた記事の中からピックアップして紹介する。ぜひあわせてご覧いただきたい。

関連記事を探す

記事検索

2071の記事から探す

最新記事

編集部のおススメ記事