船橋市が全市立中学校27校に3Dプリンターを導入
千葉県船橋市の全市立中学校27校に樹脂3Dプリンターが導入されることが、令和5年1月13日に開催された船橋市の令和4年度第7回定例記者会見の資料で明らかになった。導入費用は378万円。ShareLab編集部では、その背景や狙いについて、船橋市教育委員会を取材、 船橋市教育委員会の指導課で導入に関わった白土氏にお話を伺った。(写真は導入された3Dプリンター。船橋市教育委員会広報課より提供。)
船橋の中学校に3Dプリンターを導入した経緯
ShareLab編集部:市立中学校に3Dプリンターを導入することになった経緯をお聞かせください。
白土氏:船橋市では、従来より教育委員会指導課の予算で技術室の各種大型機械(帯のこ盤や丸のこ盤、穴をあけるためのボール盤など)を市内各中学校に導入してきました。今回は、令和3年度から新学習指導要領が全面実施となり、技術科の学習内容では新規導入の題材として、プログラミングなどネットワークやデータを活用して処理するものが多く導入されました。改定の要点では、生活や社会の中から課題を設定し、解決策を製図等に表現するなど、
サンプルを作って試行錯誤することが重要視されており、製図の具現化の手段として、3Dプリンターの使用が設定されています。
ShareLab編集部:中学校で導入するにあたって先生方も準備をされたのでしょうか?
白土氏: 新しい時代の技術科の授業では3Dプリンターを使った学習は必修の内容となります。導入に先立って、令和元年には船橋市を含めた千葉県葛南地区の全技術科教員を対象に、CADデザインと3Dプリンターの研修が実施済みです。
なお、文部科学省が策定した「教材整備指針(令和元年8月)」では、各校に整備すべき備品として記載があり、教育委員会が主体となって導入を計画する必要があります。今回は早急に各学校1台の導入を行い、教材研究や学習効果の検証を進めたいと考えています。また、全校で機種をそろえることで、全ての学校で同じ環境で学べるとともに
教員が転勤した際にも同様の環境が保証されており、また、データで送受信を行うことにより、近隣校で出力することなども可能です。
ShareLab編集部:各中学校の生徒の反応を、ご存じの範囲内でお教えください。
白土氏:実際の授業を行うのは、次年度以降になります。先行導入している学校の反応では、自分のデザインしたものが3D出力されることへの驚きと達成感があるようです。
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義務教育で3DCADや3Dプリンターを活用することが当たり前の時代に
写真から、導入された機種はXYZプリンティングのダヴィンチ Jr. Pro X+であるものと思われる。当該機種はFDM方式の樹脂3Dプリンターであり、様々な種類の樹脂を用いることが可能だ。また、個人利用だけでなく、大学や学校などの教育機関にも導入されている。
白土氏が語ったように、文科省の指導要領で3Dプリンターは必須の学習内容とされており、船橋市では2023年度から中学校の実際の授業で利用される。こうした学校での3DCAD利用や3Dプリンター利用の経験だけでは自由にモノづくりができるようになるわけではないだろうが、パソコンの授業のように、STEAM教育の一環として、全国民が触ることで、大きくハードルが下がることに間違いはない。実際の授業が行われる来年度以降の生徒の反応が楽しみだ。
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教育分野への3Dプリンター導入は着実に進んでいる。関連する過去のニュースを以下のご紹介したい。
メーカーの研究開発職として新素材開発に従事後、特許庁で特許出願の審査業務を10年以上経験。弁理士として独立後は、企業の知財戦略をサポートする傍ら、3Dプリンターをはじめとした先端技術に関する情報発信を行っている。趣味は深夜のショッピングチャンネル鑑賞。