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オークリッジ国立研究所、試験用原子炉向けに初の3Dプリント製ラビットカプセルを作成

実験用試料カプセル「ラビットカプセル」

オークリッジ国立研究所(アメリカ合衆国テネシー州オークリッジ、以下、ORNL)は、3Dプリンターを用いて「ラビットカプセル」と呼ばれる実験用試料カプセルを設計、製造、成功裏にテストした。このカプセルは、高フラックス同位体炉(HFIR)で使用される。今回の成果は、複雑な形状の部品を迅速かつ低コストで作成、カスタマイズ、認証できるという、従来の製造手法を超えた付加製造(AM)の可能性を示している。(上部画像は実験用試料カプセル「ラビットカプセル」出典:ORNL)

3Dプリンターで製造されたラビットカプセル

ラビットカプセルとは、核燃料や材料研究において、実験を保持するための試料カプセルを指す。ORNLでは、レーザー粉末床溶融(LPBF)技術を用いてステンレス鋼製のカプセルを作成。これを組み立て、充填、密封し、その後HFIRで約1ヶ月間照射テストを行った。結果として、カプセルは炉内の高い中性子フラックス環境に耐えられることが確認された。

「付加製造によって、従来の加工では難しい特殊な部品の開発や認証が可能になる」

ORNLの放射線工学グループリーダーであるリチャード・ハワード氏は述べた。

また、製造デモ施設(MDF)のディレクターであるライアン・デホフ氏も、今回の成果が将来的に原子炉部品の製造において付加製造が標準となる可能性を示唆している。

照射後評価と付加製造の未来への展望

今後、ORNLはこのカプセルの照射後評価を進める予定だ。今回の成果は、核エネルギー分野や、材料組成、設計、認証基準が厳しい他の産業における付加製造部品の活用に向けた道を切り開くものと期待されている。さらに、研究チームは付加製造が可能とする幾何学的な自由度を活かし、従来の手法では困難だった複雑なデザインや独自の機能を持つ部品の作成を計画している。

この研究は、アメリカ合衆国エネルギー省の「先進材料と製造技術プログラム」によって支援されており、新しい材料や製造技術の実証・展開を加速させることを目的としている。

オークリッジ国立研究所(ORNL)の概要

オークリッジ国立研究所(Oak Ridge National Laboratory、ORNL)は、国立研究施設であり、エネルギー省(DOE)によって運営されている。同研究所は1943年、マンハッタン計画の一環として設立され、原子力エネルギーの開発を主目的としてスタートした。現在では、エネルギー、材料科学、核科学、環境科学、計算科学など、幅広い分野の最先端研究を行う世界的な研究機関として知られる。ORNLは、特に中性子科学の研究において世界有数の施設であり、スパレーション中性子源(SNS)や高フラックス同位体炉(HFIR)を有し、核燃料や材料研究を支えている。また、3Dプリンティングや量子コンピューティングなど、新興技術の開発にも積極的に取り組み、産業界や学術機関との連携を通じて研究成果の実用化を推進している。

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国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

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