小型水力発電装置レンタルサービス「LIFE PARTS」を開始 -リコー
株式会社リコーは、少ない水量でも発電可能な小型水力発電装置のレンタルサービスを開始した。水力発電装置のプロペラには 3Dプリンターが活用され、独自形状のプロペラは小さな水勢でも発電を可能とする。
リコーが開催した水力発電に関するワークショップでは、テクノロジーによる資源の循環と、再生可能エネルギーの地産地消を訴えた。
プロジェクト背景:オフグリッド発電
近年、センサや無線通信等のIoT技術を活用し、業務の効率化が試みられている。
IoT技術の活用において問題となるのが、電源の確保だ。センサや無線通信設備は電力なしには稼働しない。しかし、広大な領域に薄く広く分布する設備に電力を送るため送電網を広げようとすれば、設置コストが掛かりすぎる。メンテナンスにも膨大な労力が必要だ。
メンテナンスが困難な僻地においては、電力供給を既存の送電網から切り離し(オフグリッド)、小型の発電装置を設置する方が効率がよい。発電した電力をその場で利用する「エネルギーの地産地消」は、電力輸送コストの低減にも繋がる。
ただし、従来型の発電機は化石燃料を燃焼するため、温室効果ガスを多量に排出する。これは脱炭素的な潮流と逆行するものだ。よって、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーで電力を供給する方式が好まれる。
しかし、既存の再生可能エネルギー発電システムにも、それぞれ欠点がある。太陽光発電は、近年不足気味の半導体を大量に必要とし、風力発電は発電効率が低い。
こうした背景から、農業分野においては、豊富に存在する水資源を有効活用できる小型水力発電に注目が集まっている。
小型水力発電装置レンタルサービス「LIFE PARTS」
株式会社リコーは、オーダーメイド小型水力発電装置のレンタルサービス「LIFE PARTS」を開始した。水力発電装置を設置することで、農地の水位センサ、農業用ロボット、農薬散布ドローン、電気柵、デジタル水門、照明、防犯カメラ、通信システムや制御システムなどに電力を供給することを目指す。
この水力発電装置は、詰まりをセンサで検知することでメンテナンスに係る労力も少ない。
また、提供する水力発電装置のプロペラは、特徴的な螺旋羽構造(ウィングレット)を持つため、勢いの小さな水流でも発電可能だ。このプロペラは3Dプリンターによって作製される。
3Dプリンターの活用によって、ユーザーの要望に合わせた形状を、オーダーメイドで提供することも可能だ。適用範囲を拡大し、農業分野だけでなく、工業排水にも利用が検討されている。
リコー沼津事業所の工業排水を用いた実証実験では、9カ月に渡り、電灯や監視カメラの電源として電力を供給できることを確認した。災害時などの電力確保にも活用を検討中だ。
3Dプリンターの活用をワークショップにも
LIFE PARTS が目指すものは、農業従事者の労力を減らすことだけではない。
地域のワークショップを通じて、再生可能エネルギーや資源再生利用を啓蒙することもLIFE PARTSの狙いだ。
ワークショップでは、参加者が持ち寄った使用済みのプラスチックを原料とし、3Dプリンターで水力発電装置を製造する様子を見てもらう。使い終わった資源が新たに生まれ変わることによって、参加者に対し、資源の再生利用や循環型社会の大切さを訴えた。
こうした取り組みは、ユーザーの利便性追求だけでなく、グローバルな社会課題の解決にも取り組んでいくという、リコーの決意の表れだ。
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