最終製品にも使える!廉価帯工業グレードの3Dプリンターを販売―フュージョンテクノロジー
2020年1月29日から3日間に渡り、東京ビッグサイトで開催される国内最大級の3Dプリンティング & AM技術の総合展「TCT Japan 2020」。ShareLab(シェアラボ)編集部は同イベントのメディアパートナーとして事前情報をお届けしていく。
手ごろな価格で試してみる、というのは大事だなと再認識させてくれるのがフュージョンテクノロジーの3Dプリンターであり、受託造形サービスだ。数百万する高級機に対する廉価普及機をどう使いこなすか。性能と価格のバランスをみて、適用できるところで時間やコストを削減し、新しい取り組みに進んでいく実務的な折り合いを探すには幅広い情報収集が必要になる。
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――フュージョンテクノロジーさんはどんな会社さんですか?
フュージョンテクノロジーは 2014年に創業した3Dプリンターの企画・販売、造形材料の販売、造形の受託の3つのサービスを提供している会社です。
もともと私が代表を務めるサンステラという会社 で、キャラクターフィギュアや 15センチ径程度の 造形範囲をもった小型の3Dプリンターの販売をおこなっていたのですが、もうすこし大きめの造形を行いたいというニーズがあることを感じていました。
そこで取り扱いできる3Dプリンターや、自社での製造企画を検討していたのですが、たまたま株式会社デザインココと面識を得まして、共同開発という形で3Dプリンターを開発することになりました。試作・開発用途の3Dプリンターを販売していこうということで、フュージョンテクノロジーを設立しました。2015年に発売したのがL-DEVOです。それ以降、フォームラブズや中国製の3Dプリンターなど、取り扱い機種を増やしながら、現在に至っています。
――設計・製造を担当されているデザインココさんにつおいても教えてください。
CG、映像や大型の立体造形物や等身大のフィギュアなどを作っている会社さんです。わかりやすい例を出すと、お台場のワンピースの巨大な造形物などを担当されています。この分野では有名な会社さんですね。自社で3Dプリンターを設計製造し、使っていらっしゃって、独自に販売もしていらっしゃいます。
――いい出会いがあったというのはビジネスにおいて非常に重要ですね。フュージョンテクノロジーさんとして活動される中で、いままでに何台くらいの3Dプリンターを販売されてきましたか?
弊社では、100万以下から500万円台の3Dプリンターが主流なのですが、今までで700台以上の販売実績があります。やはり一番多いのは製造業のお客様です。その次は研究施設、教育機関と続きます。
試作用途で導入されているメーカーの他に、最近増えてきたなと感じるのが、材料メーカーさんが購入されるケースです。やはり自社で材料開発を行う際に、実際に3Dプリンターを手元におき、テストしながら材料開発に取り組んでいらっしゃるのかなと思います。
――3Dプリンターの販売もかなりの実績ですね。造形材料も扱われているとお伺いしましたが、御社ではどんな造形材料を扱っているのでしょうか?
L-DEVOを開発する際に自社独自材料も開発しましたが、それ以外にも、中国のPolymakerという大手造形材料メーカーの日本代理店となっています。大手3Dプリンターメーカーの専用造形材料以外の分野では日本総代理店として活動しています。ここ数年で登場し、注目を集めているのはカーボン配合樹脂、PEEK材などのエンプラで、販売は伸びていますが、従来の3Dプリンターを使っている方々からのお引き合いも多いです。
――Polymakerといえばかなり大手ですね。
はい。大きな会社ですし、 スーパーエンプラ、カーボン配合フィラメントなど、 毎年かなりの種類の造形材料を市場に供給しています。世界での存在感にくらべると、日本での展開はまだまだこれからですが、今後の成長は期待できると思います。
それに人の縁もありまして、実は弊社で以前働いていた社員が、転職してPOLYMAKERの韓国・日本の地域統括担当になっています。所属は変わりましたが、一緒に3Dプリンターの市場を育てていこうとしているところです。
――意外な人のつながりにびっくりです!受託サービスではどんなお客様が多いですか?
毎月20件から30件程度の出力を行っているのですが、多種多様です。自動車部品メーカーさんの治具制作などは定期的にいただいていますし、それ以外にもウェブサイトからのお問い合わせで、多種多様なご相談をいただいています。サイトから3Dモデルデータをアップロードしていただくと、お見積りできるようにしています。
私たちのサービスは価格にもこだわっていまして、大手のサービスビューロよりも価格的に安価だと思います。一度試していただきたいところです。
その他に私たち自身が3Dプリンターの製造、販売も行っているので、装置購入を検討されている方にはお試し造形を無料で対応する場合もあります。
――現在イチオシの3Dプリンターはどれになりますか?
PEEK材などのスーパーエンプラも造形できる機種がおすすめです。INTAMSYS製の試作用3Dプリンター「FUNMAT HT」は廉価帯として手が届きやすい価格になっていますし、2020年4月に発売を予定している「FUNMAT Pro410」は最終製品の小ロット生産や、最終製品に利用できるパーツの製造にも対応できる品質になっています。
――この2台では何が違うのでしょうか?_
HTは試作が十分にできるレベルを目指し、pro410が最終製品の造形に耐えうる性能を目指している点に違いがあります。その違いが仕様にも表れていますので、3点ほどご紹介します。
機種名 | FUNMAT HT | FUNMAT pro410 |
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造形ノズル温度 | ノズル温度 450度 | ノズル温度 500度 |
冷却方式 | 空冷式 | 水冷式 |
造形ヘッド数 | シングルヘッド採用 | デュアルヘッド採用 |
防湿性能 | – | 防湿対応の保管庫あり |
1)庫内温度を一定に保ちつつノズル温度を上げている
HTのノズル温度は450度と、スーパーエンプラを扱う水準を満たしていますが、Pro410 では500度まで温度をあげることで、より結晶化を促し、仕上がりの安定性を強化しています。ノズル温度を上げると庫内温度を一定に保つ際に冷却機能も強化する必要がありますが、pro410では冷却系に水冷式を採用し庫内温度は一定に保たれるようにしています。
2)デュアルヘッド採用で水溶性サポート材に対応し簡単サポート除去
HTはシングルヘッドでしたが、Pro410 はデュアルヘッドです。造形物用のフィラメントとサポート材のフィラメントを別のノズルで造形できるようにしているので、サポートも水溶性のサポート材を利用できます。特に複雑形状を造形する際のサポート除去が容易になっています。
3)防湿フィラメントストレージで湿気を防止し安定性向上
またpro410はスーパーエンプラのフィラメントが湿気を吸いすぎないように、防湿フィラメントストレージを実装しています。日本は湿度が高いのでフィラメントの湿気が仕上がりに影響することが多いです。
――いろいろな点に改善が施されているんですね。どんな方にお勧めですか?
切削加工でPEEKのブロックから部品を削り出しているメーカーさんには、是非積層で造形できないか検討していただきたいです。材料の無駄が省けるので、高価な素材ほどコストメリットがでますし、3Dデータを用意できるのであれば金型代金が不要で、少数生産にも向いています。
先ほどご紹介したように、最近の樹脂3Dプリンターでは庫内温度を一定に保てるように改善されています。ですから収縮性が高いABSなどの素材でも、安定した造形品質が実現できます。以前検討したけれどダメだった点が数年で改善されているかもしれないことを念頭に、再度情報収集されてはいかがでしょうか?
――最後に、TCTJapanでの見どころを教えてください。
いままでご紹介してきた3Dプリンターの装置や受託造形サービスに関してみて触れていただける場です。是非いろいろ質問してほしいです。また、来場者の方には、3Dプリンターで造形したサンプルをプレゼントさせていただきます。取材記事を見たよ、と声をかけてください。
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2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。