Nature3Dとネクアスが高生分解性酢酸セルロースを用いた3Dプリンター用フィラメント「C38TS」を開発
Nature3D社とネクアス社は、酢酸セルロース系バイオマス生分解性複合材料「NEQAS OCEAN」をベースとする3Dプリンター用フィラメント「C38TS」を開発。Nature3D社にて販売が開始された。
「NEQAS OCEAN」 の特徴
「NEQAS OCEAN」の主成分である酢酸セルロースは、植物由来のセルロースと酢の主成分である酢酸を原料とする素材だ。酢酸セルロースは、木材や紙と同様に微生物の働きにより自然環境中で分子レベルまで分解され最終的には二酸化炭素と水になる生分解性と呼ばれる性質を高いレベルで有している。
NEQAS OCEANは、環境に優しい酢酸セルロースに柔軟性を与えたり、加工しやすくするために加える可塑剤(かそざい)とミネラルで構成されている。NEQAS OCEANは自然や動植物への環境影響がないことが確認されている安全性の高い原料のみで作られており、可塑剤までも生分解される点で、従来の従来の酢酸セルロース系樹脂と異なる。
可塑剤は食品添加物としても使用実績のある安全性の高い成分が用いられている。ミネラルは3Dプリント時の造形安定性を向上させるために配合されており、酢酸セルロースと可塑剤が分解された後、土に還る。
従来の生分解性樹脂と「C38TS」の違い
現在、生分解性樹脂としてはPLA(ポリ乳酸)樹脂が広く使われている。しかし、PLA樹脂は55℃を下回る温度環境下では分解が進みにくく、自然環境中では生分解する条件が整わない場合がある。
一方で今回開発された高生分解性酢酸セルロースフィラメントC38TSはNEQAS OCEANをベースとしており、生分解性についての課題をクリアしうるものとなっている。
さらに3Dプリンター用フィラメントへの実用化にあたり、ミネラルの添加によって低吸湿・低反りなどの特性が付与された。このことにより、従来の酢酸セルロース系樹脂と比較して造形安定性を向上させることに成功している。3Dプリンターにおけるフィラメントは、いわばインクにあたるもの。今回開発のフィラメントを使用することで、高い生分解性、高い形状自由度を持つ3Dプリント造形品が作成可能になる。
Nature3D社が販売を開始した3Dプリンター用フィラメントのC38TSは、NEQAS OCEANをベースにして作られた。このようにNEQAS OCEANが3Dプリントに活用されたのは今回が初めてではない。
既存の例としては、株式会社NODが、ネクアス社、株式会社Booleanとともに⾃然と⼈間のつながりを捉え直し、有限の資源を利活用する循環型都市を実現するために開始したプロジェクト「RECAPTURE」では、その第⼀弾として、NEQAS OCEANを使用した世界初の3Dプリンティングされた大型家具が発表されている。
ShareLab NEWSではこのプロジェクトについてNOD代表取締役の溝端友輔氏とBoolean代表取締役の濵﨑トキ氏の両名にインタビューを実施している。
バイオマス素材×3Dプリンターで循環型都市を実現するプロジェクト『RECAPTURE』仕掛け人に話を聞いた!
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