1. HOME
  2. 業界ニュースTOP
  3. 「AM研究会第11回委員会」参加報告

「AM研究会第11回委員会」参加報告

2025年1月17日に「2024年度AM研究会 第11回委員会」が大阪大学中之島センターで開催され、シェアラボから丸岡が講演者として参加した。今回のテーマは「AM×アート」で、会場とオンライン含め400名以上の参加があり、これまでの委員会とは異なる分野の講演者から、多様な視点や内容の講演があった。その中から重要なポイントに絞り、以下に報告する。(上記画像はAM研究会事務局提供)

AM研究会とは

AM研究会は2022年4月に「産学官、学協会の枠組みを超え、AMの学術・技術の構築を行うことにより、デジタル技術を駆使してAM技術を日本に広く普及させ、日本の製造業強化を図ります。また、政府への政策提言、日本学術会議での活動などの取りまとめ、日本AM学会の設立を目指します」をミッションとして設立。AMサイエンス、AMテクノロジー、AMビジネスを3本柱として、情報交換や人脈形成、AM事業の成功例を増加させる場として活動。これまで定例委員会(セミナー)を年4回程度開催し、今回が第11回目であった。2025年4月に日本AM学会が設立、移行するため、AM研究会としての委員会は今回が最後となった。

委員会での講演トピックス

委員会のプログラムは下記の通りで、大阪大学中之島センター10F 佐治敬三メモリアルホールでの会場とオンラインのハイブリッドで開催された。

講演講演者
開会の挨拶大政 健史 氏(大阪大学 大学院工学研究科長・工学部長 総長参与 教授)
委員長挨拶中野 貴由 委員長(大阪大学 教授)
講演① 「【デザイン】と【アート】における3Dプリント活用の出口」 株式会社SUBARU 部品用品本部 アクセサリー企画部 クリエイティブディレクター 須崎 兼則 氏
講演② 「人が身に着けるモノに対するAdditive manufacturing技術適用事例の紹介」株式会社アシックス スポーツ工学研究所 アスレチック機能研究部長 谷口 憲彦 氏
講演③ 「2050年からの創造社会:AMが導くデザイン・アート・エンジニアリングの境界融合」デジタルハリウッド大学 教授 星野 裕之 氏
講演④ AMビジネス トピックス「国内外ニュースから見るAMビジネス動向」イントリックス株式会社 ShareLab事業部 事業開発ディレクター 丸岡 浩幸
講演⑤ AMテクノロジートピックス「AM造形による机上サイズガスタービンの製作と材料試験への活用」株式会社共和プリサイスマニュファクチャリング 今野 晋也 氏
講演⑥ AMサイエンストピックス「AMの製造性を考慮した構造最適設計法」地方独立行政法人大阪産業技術研究所 加工成形研究部 主任研究員 三木 隆生 氏
AM研究会の活動報告及び日本AM学会設立と活動予定AM研究会事務局  山村 英明 氏、桐原 慎也 氏
閉会のご挨拶前川 篤 副委員長(大阪大学 招聘教授)

まず中野委員長から、「2025年4月に設立予定の(一社)日本 Additive Manufacturing(AM)学会🄬は、 産官学連携の一気通貫でAMの社会実装を目指す。使われてこそAM。」との挨拶があった。

次に今回のテーマ「AM×アート」の3つの講演にて、SUBARU 須崎氏は、市販自動車アクセサリーや部品製造へAMを使う考えに至った背景として、ユーザーに選べる楽しさを提供すること、またメーカーだけでなく、ユーザーも共創・協創の時代において、未来へ向けて世の中の価値観を変えることを示し、またデザイナーも価値観を変化させよという提案を述べた。アシックス 谷口氏は同社が大切にする「ヒューマンセントリックデザイン」に基づき、「レース後にシューズを履き替えたい」というユーザーアンケート結果から、開発、AM製造市販されたサンダル「ACTIBREEZE 3D SANDAL」の開発経緯、設計や製造に使われた技術解説、今後のAM活用技術開発の展望を示した。

「ACTIBREEZE 3D SANDAL」 発売時のシェアラボニュース記事

デジタルハリウッド大学 星野氏はロボットデザイナーおよび教育者の立場から、今までと違う不確実性の高い時代において、アート思考やデザイン思考が求められ、若い人の中でデザインエンジニアという新しい職業や、「マルチポテンシャライト」と呼ばれる、いろいろなものになりたい人が増えている変化や、従来の設計CADの領域拡大と3次元CGソフトウエアとの繋ぐ新しいツールが「ゲームエンジン」であると述べた。また生成AIによる3Dデータ作成実験例や、人類の歴史として重要な価値は作る価値、考える価値へ変わり、これからは創造の価値になり、未来的製造の代名詞は「AM+クリエータ」であるとの考えを示した。

次にイントリックス 丸岡からは、シェアラボニュースから読み取れる、AMビジネスの現在起こりつつある変化について述べ、例えばビジネス開発の起点や重点は、従来AM装置やメーカーによる「モノ」から起こり、競争が重点であったことから、用途やユーザーの求める「コト」から起こり、協業が重点になっていることなどを示した。

写真 AM研究会事務局提供

また共和プリサイスマニュファクチャリング 今野氏は、前職での金属AM材料や造形技術研究の知見を活かし、模型飛行機用小型ジェットエンジンや、小型発電機への利用を目指した製品開発として、これまで経験のなかった3DCADをゼロから自習し、ほぼすべての部品をサポートや仕上げ加工不要で金属AMで製造できる形状を設計し、粉末材料も自社で開発製造、試作組み立て、燃焼実験にも成功したことを示した。また大阪産業技術研究所 三木氏からは、金属AM(レーザーPBF)の固有ひずみ解析を用いて、サポートを減らし、造形中の熱だまりやひずみ減少を考慮した、トポロジー最適化ソフトウエア研究について報告があった。

最後にAM研究会のこれまでの活動報告として、前回第10回委員会までの参加延べ人数が4,728人に達したとのことであった。また、2025年4月1日に日本AM学会が設立されること、学会誌「AM Future」の創刊号が、産学の多くの執筆者による約200ページの刊行物として今年1月31日発行予定であること、2025年9月1,2,3日に東京都立産業貿易センター浜松町館にて講演大会の開催を予定していることなどが告知された。また個人会員、協賛企業の募集も始まっており、今後のイベント予定も含め、最新情報や問い合わせは下記の日本AM学会ホームページ(https://ji-am.jp/)を参照されたい。

委員会参加を終えて

本委員会の前日の2025年1月16日には、AM研究会第2回見学会として、三菱重工業株式会社高砂製作所(兵庫県高砂市)施設見学会が開催され、丸岡も参加し、ガスタービン組み立て工場、水素パーク(車中から)、AMセンターの3か所を見学した。当初50名限定で参加募集したところ、応募者多数により午前と午後計100名まで追加してもキャンセル待ちとなったとのことで、大変多くの方が高い関心を持たれていることが垣間見えた。見学内容は非公開とのことでお伝え出来ないが、大変貴重な金属AMによる実用部品製造の現状を直接見ることが出来た貴重な機会であった。AM研究会並びに三菱重工業株式会社の皆様には、この場を借りて感謝の意をお伝えしたい。

今後、日本AM学会は学術だけの学会ではなく、産学官または海外の研究組織含めた連携の主幹となり、日本のAM産業や技術の進展、ひいては製造、航空宇宙、医療、教育を含む産業発展につながることを期待するとともに、シェアラボでも活動をお伝えしていくことで微力ながら貢献していきたい。

特別企画・取材の関連記事

今回の記事に関連するものとして、これまでShareLab NEWSが発表してきた記事の中から3つピックアップして紹介する。ぜひあわせてご覧いただきたい。

設計者からAMソフトウエア・装置販売ビジネスに20年以上携わった経験と人脈を基に、AMに関わるみなさんに役立つ情報とつながりをお届けしていきます。

資料ダウンロード 3Dプリンティング国内最新動向レポート

サイト内検索

関連記事