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2024年のAMを振り返り、漢字一文字で表すと?

イントリックス株式会社 丸岡 浩幸

イントリックス株式会社 丸岡 浩幸 樹脂製品メーカーで設計を14年、その後AMソフトウェア・装置販売ビジネスに20年以上携わった経験と人脈を基に、ShareLabを通じてAMに関わるみなさんに役立つ情報とつながりをお届けしています。

2024年のAMを漢字一文字で表すと

2024年も残すところわずかとなりました。このコラムも2024年最後の回となります。今年4月にShareLabに加わり、周りの方々に支えていただいたおかげで、年を越し、新年を迎えることができそうで、とてもありがたいことです。そこで、今回は2024年のAM全体をShareLabの記事から振り返ってみたいと思います。ニュースでは公益財団法人 日本漢字能力検定協会「今年の漢字®」は「金」だったそうですが、それに倣ってこのようなことを始めると、毎年末悩むことになりそうですが、敢えて2024年のAMを漢字一文字で表すとすれば、私は「展」を思い付きました。

漢字一文字を選んだ理由

漢字辞典によると、「展」の意味は「ひろげる」「ならべる」「つらねる」「広く見る」などの意味があるようです。海外も日本もAM産業全体としては、コロナ禍による落ち込みからの回復再成長の2024年であったと思いますが、以前は縦に伸びる成長だったのに対し、今年は水平にひろがる傾向だったと思います。コラム一覧のサムネイルで使った画像は、以前は黒とか原色しかなかったMEX(材料押出法)のフィラメント材料が、今は多色に広がっている感じから選びました。特に業務でAMが使われる用途、材料、プリンターの大きさや価格帯などが広がったと思います。また、用途分野も広がり、2024年1月から現在までのShareLabのタグ別記事数を見てみると、金属3Dプリンターが39件、樹脂3Dプリンターが23件に対し、建築業界の記事が32件で、今年は以前に増して建築土木系へのAMの広がりは大きかったと思います。

特に海外では、買収、出資、提携など、日本の企業も関わるビジネスの記事が多かったと思います。これは企業規模、ニーズに応える範囲、連携を「ひろげる」動きだったと思います。もちろん企業業績悪化による買収統合など負の面もあったと思いますが、メーカーの経営基盤が安定化したり、1社や1グループからより広い総合的なサービスを受けられるようになったり、統合が進むことでユーザーにとっても良い面があります。

また、国内外で対面の展示会、ユーザー会、イベントが増えた年でもあり、「ならべた」をもの見たり、プリンターだけでなく前工程から後工程、品質管理まで「広く見る」ことが出来る機会が増えたと思います。

最後に、AMの実用品製造について、ようやく日本の中小含む多くの企業へのひろがりが見えてきた年だったと思います。このコラム「AM導入活用の正と負のスパイラルとは?」でもお伝えしましたが、長年AMの理解、自社活用の模索を続けてきた企業で正のスパイラルが回りだし、それを公表されることが増えてきたと思います。その例として、日本AM協会がつい先日公開された「未来モノづくり国際EXPO 2024展示報告」のウェブページの中で、とても勉強になり、素晴らしいと思った講演録画動画がありましたので、以下に共有します。

【講演】大阪冶金興業(未来モノづくり国際EXPO2024)
https://youtu.be/ClCxrIDgans?si=LNtwgslvDKM6Fxi6

【講演】倉繁歯科技工所(未来モノづくり国際EXPO2024)
https://youtu.be/xBgZamRmELA?si=jd9_G7_oapkYAqUl

パネルディスカッション(未来モノづくり国際EXPO2024)
https://youtu.be/HWAgq_djRWg?si=yXD4n3vszF3IwrJV

【参考】2022年12月 ShareLab 倉繁歯科技工所 インタビュー記事

製造物としては医療用インプラントや歯科補綴物ですが、「特殊だから」「工業と違うから」ではなく、多くの製造企業や部署に共通する学ぶ点があると思います。それはまずAMありきで始めたのではなく、本業のお客様や自社の喫緊の課題があり、解決する道具としてAMを探し、まず試し、選んだこと、机上の投資回収や損益計算ではなく、起こるであろう変化が起きてからではなく、その前に手を打つ決断を素早く行ったこと、AM製造そのものの損益ではなく、人材、企業文化、地理的距離に関係ない顧客拡大などの副効果を生み、それを経営者が認め、発信していること、自社だけでなく自治体含めた社外にも頼って始め、進めていることなどが挙げられます。また、特に金属AMのハードルとされる「造形条件開発」についても、「メーカー標準条件」をはじめから否定したり、逆に鵜呑みにもせず、それをまず正しく理解したうえで、製造する製品の要求要件を元に最適条件を見つけ出し、AMで足りないところはソフトウェアや別装置で補うことで、従来製法より優れた性能と大幅な工数短縮を実現されています。

このようなことは今年急に起きたことではなく、多くの方々の長年の努力が積み重なった結果で、もちろん「AM産業の発展」が主眼でも目的でもないですし、AMの課題は山積ですが、日本でも社会や経済による需要の変化とAMの利点と進化の接点が近づいてきているのではと感じていて、よい「展望」と共に新しい年を迎えられそうです。みなさんにとって今年はどのような年で、来年はどうなってほしいと思われているでしょうか?

このコラムを年末までお読みいただき、ありがとうございました。みなさま良いお年をお迎えください。

ShareLabニュースにもう一言

「JAXA / 3Dプリンタ AMワークショップ」参加報告

「○○界隈」というのが流行語とのことですが、「AM界隈」では長年よく聞く話として、「AMは航空宇宙産業に適している」がありますが、一方で「機密のかたまり」の産業というイメージもあり、実際日本の航空宇宙産業でAMがどのように使われているのか、ほとんどわからない状態でしたが、偶然にも12月に参加した上記を含む3つのイベントで、JAXAの方々から直接お話を聞く機会があり、少し霧が晴れた感じでした。考えれば当然ですが、ロケットと人工衛星ではAMへの要求も異なり、JAXAでも積極的にAM活用に取り組まれていることがわかりました。

Formnextアワード2024発表!AMの新たな基準を打ち立てる

この記事はあまり国内で報じられていないと思いますが、欧州でAMが発展している背景が垣間見える良い内容だと思います。まず少し前までは、ハードウェア、材料、AM活用製品そのものや、スタートアップ企業も工業関連が表彰されていたと思いますが、今回はまず賞の設定が「スタートアップ賞」「ルーキー賞」「サステナビリティ賞」「デザイン賞」「[R]Evolution賞」と、モノより、それにより出来るコトが基準になっていて、かつ人の医療に関わる課題、環境に関わる課題(EV化含め)を解決する件が受賞しています。これらから、欧州の企業や消費者が何を重視し、何にお金をかけているのか、どのような需要がAMを動かしているのかがわかります。アメリカやアジアとも違う気がしますし、日本がそうなるかはわかりませんが、この先を予測する参考にはなると思います。

ではまた次回。Stay Hungry, Stay Additive!

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