
ゴールデンウィークも終わり
今年のゴールデンウィークは祝日の間に3日の平日が挟まるカレンダーだったこともあり、長期連休にならなかった方も、私のように有給休暇で連休にした方もいたかと思います。数えたらShareLabニュースでも12本のAM関連展示記事があった大阪・関西万博に行かれた方もいるでしょうか?私はようやく春らしい日や、もう夏?という日もあった中、おおむね天気にも恵まれ、したいと思っていたことがほぼ出来た連休でした。溜めていたテレビ録画も天気の悪かった日に一気に見ましたが、その中で気づいたこと、考えたことがありました。今回はそんな話題です。
「解が無いことを見つけようとしている」
読者の皆さんには観た方も多くいらっしゃるのではないかと思いますが、5月3日に放送されたNHK総合「新プロジェクトX〜挑戦者たち〜」は「H3ロケット宇宙への激闘~革命エンジンに挑んだ技術者たち~」の回でした。これまでの仕事を通じて実際にお会いしてお話しした方々も出演されていましたし、報道でも大筋の流れは知っていましたが、知らなかった具体的な技術の話もあって、とても良い番組でした。LE-9エンジンに使われたAMの話もでるかなと、少しだけしていた期待ははずれましたが、実際に起きた事実と、取り組んで乗り越えた方々の言葉は重かったですし、自分は全く関わってもいないのに、見ていて何度も目から汗をかきました。H3ロケット開発とAM活用については、NTTザムテクノロジーズ社ウエブサイトに掲載されている「EOSの金属3Dプリンタ技術が支えるJAXAのH3ロケットの挑戦」に詳しく書かれています。
ここでは詳しい内容には触れませんが、H3のエンジン開発中に起きた技術的難題について、分析、対策、実験を繰り返しても解決せず行き詰まっていた時の心境を振り返り、「これは物理的に解が無いことを見つけようとしているのではないかと思った」と正直に語られる場面がありました。その後「わからないなりに」設計と実験を繰り返し、複数策の組み合わせで解決にたどり着いたとのことでした。また番組内では、アメリカのSpaceX社が、多くの実験失敗を繰り返しながら民間ロケット打ち上げを成功させ、H3開発中に多数の打ち上げを通して急速に改良を進め、H3ロケット開発当初の目標を上回る実績を上げたことにも触れていました。
もちろんロケットとエンジンの開発設計製造は想像を超える難しさでしょうし、軽々しく言えることではないのですが、かたや世の中で設計製造される部品製品でも、完全に理論的、物理的に解がわかって開発設計されているか?と考えてみると、実際には「起きること」が重要で、その解にどう早く良くたどり着けるかは共通することだと思いました。
ShareLabニュースでもお伝えした、AM部品が使われ、短期間で開発されたLIFT Aircraft Inc.社eVTOL機「HEXA」が大阪・関西万博でデモフライトに成功した後、4月26日に飛行中にプロペラモーターを1個を含む機体の一部が壊れ、無事着陸したものの、「安全性が確認できるまで当面、飛行を中止する」となりました。当然プロペラは破損しない理論で設計され、実験も繰り返されてきたでしょうが、普通に飛んでいて壊れたのは事実ですし、同時にプロペラ1つが破損しても着陸できたのも事実で、残念な一方でこの対策により、より安全な現実解に近づくことになるとも言えます。
「わからないなり」の開発設計とAM
どんな開発設計にも当てはまるわけではありませんし、もちろん理論や法則が基礎とはなりますが、「単一材料一定断面の片持ち梁」のような理論と実際がほぼ合う設計は現実ほぼ無いに等しく、「わからないなり」で開発設計するには、時間が許す限り多くの設計実験サイクルが出来るかに加え、使い始めて起こる想定以外の現象にも、早く安く対策できるかが重要な部品製品は世の中に多くあり、部品製品そのものだけでなく、実験計測装置や治工具含めそれらにAMを使う価値は大きく、かつまだ見落とされている、気づかれていないことも多いのではないかと考えさせられたゴールデンウイークでした。
ShareLabニュースにもう一言
今回の話題に関係するニュースですが、日本のスタートアップ企業がアメリカの企業と提携して、宇宙ロケットをビジネスとして開発していることは、なかなかテレビや一般メディアで取り上げられませんが、私からするとすごい時代に変わったなとあらためて思わされたニュースでした。何かの成果が報じられるのも、こちらの常識を超える早さになるのでは?と期待しています。
航空宇宙関連や建築関連では国内外でAMが活用されるニュースが増えていますが、全体を見るとAM市場はますます不安定、不透明になってきているようです。しかし、他の海外市場レポートやAM関連展示会レポートでは、AM界全体が実部品製品製造の方向に向かっていて、また成長基調に戻る見方や、「アメリカの関税政策はアメリカのAM産業にも負の影響はあるが、コロナ禍同様、業界体力強化のきっかけになる」という見方もあるようで、それはそれとして世界全体あるいは各地域でAMがどのように変化し、それは日本とどう違い、どうしていくのが良いかを考える参考になります。
ではまた次回。Stay Hungry, Stay Additive!