コンピューテーショナルデザインはタマゴかニワトリか?

2025年8月22日
CDFAMウエブサイトから引用
イントリックス株式会社 丸岡 浩幸
イントリックス株式会社 丸岡 浩幸 樹脂製品メーカーで設計を14年、その後AMソフトウェア・装置販売ビジネスに20年以上携わった経験と人脈を基に、ShareLabを通じてAMに関わるみなさんに役立つ情報とつながりをお届けしています。

CDFAM2026が東京にやってくる

読者の皆さんの中にも、夏季休暇を終え、なんとなくまだ普段の調子に戻れていないなという方もおられるかと思います。天気予報で聞きましたが、特に関東地方はこれまで2回「高気温の山」が来て、例年だと少しづつ気温が下がるこれから、3回目の波が来るとのことです。「夏は夜。月のころはさらなり」という風情はいったいどこへやらという、残暑の長い夏はまだ続きそうです。わからない先のことを心配しても仕方ないのですが、今回は鬼にも笑われる、来年の秋についての話題です。

既に読んでいただいた方には重複をお許しいただきたいのですが、ShareLabニュースで下記の記事をお伝えしました。

このCDFAMの「CD」は「コンピューテーショナルデザイン(本文でも以下CD)」のことで、日本ではあまり聞かれない用語です。ある生成AIさんに聞いてみると、

「CDとは、コンピューターを活用して設計やデザインを行う手法のことです。具体的には、設計前のプランニングやコンセプトづくり、またシミュレーションなどをコンピューターで自動的に計算・生成し、従来の人間の手作業では困難だった複雑な形状や構造、幅広いバリエーションのデザイン案を創造する技術を指します。」

とのこと。間違えてはいないと思いますが、この説明ではCADやCAE(コンピューター エイデッド)とは何が違うのか、設計前にだけ使うものなのかを含め、私の理解と少し違う感じがしました。そこで別の生成AIさんに全く同じ質問で聞くと、

「CDとは、コンピュータを用いた計算的手法によって、形状や構造、機能を設計するアプローチを指します。従来の「人が頭で考えて描く」デザインから一歩進んで、アルゴリズムやプログラミングを活用し、複雑な条件を満たすデザインを効率的に生成・最適化できる点が特徴です。」

特に太字の点について、私の理解とも合っていて、良い回答だと思いました。逆に、コンピュータが全て完全に設計することとも違う、とも言えると思いますし、一般のコンピュータと「生成AI」の使い方の違いにも近いように思います。

次にCDFAMの「FAM」は、当初は「For Additive Manufacturing」だったと記憶していますが、今は主催者も「Advanced」「AI Driven」や「Manufacturing」「Modeling」「Materials」も加えた掛け合わせとしているようです。

AMの世界では長年「タマゴが先か、ニワトリが先か」に例えられる議論がよくあって、例えばAMがもっと使われるには「メーカーが価格を下げるのが先か、価格を下げられるだけのユーザーが増えるのが先か」とか、AM品の性能を上げるには「装置の性能向上が先か、材料の性能向上が先か」とかがあり、「因果関係が複雑で答えが出ない、堂々巡り」で、あまり議論しても仕方がない論点と捉えられがちですが、特にAMを理解したり、進展させるには必要な論点で、考えたり議論することは大事なことも多いと思います。そこで、設計製造をする方々にとって、CDとAMはどちらが「タマゴ」で「ニワトリ」でしょうか?

コンピューテーショナルデザインはタマゴかニワトリか?

またまた生成AIさんによれば、「科学的な見方では、進化の過程で、ニワトリに非常に近い祖先の鳥が産んだ卵の中で遺伝子変異が起こり、それが“最初のニワトリ”になったとされるので、卵が先という解釈が一般的」とのことで、CDの方がAMより先にあり、範囲も広いですし、CDの結果で出来る形状を現物化するツールとしてAMが必要とされ、発展してきたと考えれば、CDはタマゴだと私は考えています。しかしながら、CDFAMのようなイベントが生まれたり、その講演者、講演企業、参加者、講演内容を見ると、「AMがあるから、CDで設計するニーズがあるし、AMが発展したからこそCDも発展し、CDFAMも出来た」とも言え、それに関してはAMがタマゴでCDがニワトリとも考えられます。つまり、CDとAMは二重らせんのように、お互いつながりながら進展していくもので、設計製造をする方々にとっても、それぞれがタマゴでもニワトリでもあるのではないでしょうか。どちらにしても、あくまで人がタマゴではあるべきで、人の「こうしたい」があって、「まず知って、使ってみる」が無ければ、CDもAMもニワトリにはならないでしょう。

AMが主題でもないCDFAMが2026年10月に東京で開催されることを、ShareLabを通じてお知らせし、支援したいと思ったのは、上で述べたような考えからです。まだだいぶ先のイベントではありますが、日本のAMに関わる多くの方が、CDFAMを通じて、一方的に受け身で情報を得るだけではなく、情報を発信したり、CDを実際使う海外の人と交流することで、日本のAMが羽ばたくためのタマゴになることを大いに期待しています。

ShareLabニュースにもう一言

CDFAMの創設者であり運営主幹でもあるDuann Scottさんは、3MFコンソーシアムにも深く関わられています。3MFフォーマットが国際標準規格に認定されたことはAMにとっても大きな意味がありますし、この先AM以外CAD/CAMやコンピュータ制御の切削加工にも、STEPやJTフォーマットと共に3MFが使われるようになるきっかけになると良いと思っています。

ではまた次回。Stay Hungry, Stay Additive!

関連記事を探す

記事検索

1846の記事から探す

最新記事

編集部のおススメ記事