NASAが宇宙用途向けの抗菌3Dプリント材料に資金を提供
NASA(アメリカ航空宇宙局)は、ISS(国際宇宙ステーション)でリサイクル可能な抗菌性材料の開発、およびテストのために113万ドルの助成金をネブラスカ大学オマハ校とCopper3D社に提供した。
宇宙ステーション内における細菌の脅威
現在、NASAでは、月面宇宙ステーション建設や火星探査といった大規模なプロジェクトが進められている。数あるプロジェクトのひとつである月面着陸計画「アルテミス計画」について詳しくは「月面で3Dプリンターを使用するための実証実験が国際宇宙ステーションで始動」をご参照いただきたい。
こうした長期のミッションにおいては、宇宙飛行士の健康管理も重要な課題だ。
微生物や寄生虫による宇宙飛行士の健康被害は、長期にわたる宇宙ミッションの安全性を大きく損なう。今後、宇宙開発を加速していくためには、こうした健康被害への対策も進めなければならない。
こうした背景から、NASAはネブラスカ大学オマハ校(UNO:University of Nebraska Omaha)と、チリのナノテクノロジー企業 Copper3D社に資金提供を行った。目的は、国際宇宙ステーションでリサイクル可能な抗菌性材料の開発だ。
抗菌3Dプリント技術
Copper3D社が開発した抗菌ポリマー材料は、銅ナノ粒子と独自の抗菌ナノ粒子を担持し、微生物を無力化する機能を持つ。しかし、国際宇宙ステーションで使用するためには抗菌性を持つだけでは不十分だ。
国際 宇宙ステーションで使用する抗菌性材料は、空間を大きく占有してはならない。現在の国際宇宙ステーションはもちろん、将来生み出される新たな宇宙ステーションにおいて、貨物室のスペースは大変貴重なものであるからだ。
上記の要求から、リサイクルして繰り返し3D プリント が可能な抗菌性材料という構想が生まれた。 国際 宇宙ステーション内で必要なものがあれば、その都度、その場で3Dプリンティングし、使い終わったらリサイクルして資源化すればスペースを節約できる。
また同時に、リサイクル可能な抗菌材料として用いるためには、繰り返しリサイクルしても抗菌性が失われない工夫が必要だ。
Copper3D社は、再資源化の際に銅ナノ粒子を添加することで、この課題を解決しようとしている。
ネブラスカ大学オマハ校とCopper3D社のパートナーシップ
UNOとCopper3D社のパートナーシップは、NASAから幾度も評価を受けた実績がある。
Copper3D社の抗菌3D印刷フィラメントを微小重力下でテストするための資金提供は2018年に始まった。その後の2019年には無重力条件下で医療機器セットを3Dプリントする技術について評価されている。
3D プリント 可能な抗菌材料とそのアプリケーションにおいて先駆的な業績を残したCopper3D社は、宇宙探査基地を含む極限環境固有の問題について、今後とも国際的なリーダーシップを発揮していくことだろう。
関連情報
国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。