タイにPLA製造工場を建設するために3億5千万ドルの融資を獲得 ― NatureWorks
ポリ乳酸(以下、PLA)プラスチックの多くを製造している企業であるNatureWorks社はタイにPLA工場を建設するために、Krungthai Bank PCLから3億5千万ドル(約545億円)の融資を受けた。PLAは包装材、医療用不織布、内装材などにも使用されており、石油を基にしない再生可能な代替品として期待されている。(上部画像は左から、ネイチャーワークス暫定CFO ロジャー ケンパ 氏、ネイチャーワークス社長兼CEO エリック リップル 氏、クルンタイ銀行ホールセールバンキング最高責任者 スラトゥン コントン 氏、クルンタイ銀行コーポレートバンキング第7部門副社長兼部門長 サラニャ アサモンコン氏。出典:NatureWorks社)
NatureWorksがおもに製造するPLAの特性と用途
PLA(ポリ乳酸)は、トウモロコシやサトウキビなどの再生可能な植物資源から作られるバイオプラスチックだ。従来の石油由来のプラスチックに比べて、製造過程での二酸化炭素排出量が少なく、適切な条件下で処理すれば焼却しなくても処分可能な生分解性を備えている。現在、食品容器や包装材、3Dプリンターのフィラメントなど、多岐にわたる用途で利用されており、持続可能な社会の実現に向けた重要な素材と位置付けられている。
タイのPLA製造に適した環境
NatureWorks社は既にタイに施設を持っており、じつは競合他社のTotal Corbion社なども同様に工場を建設している。これは偶然ではなく、ライフサイクルアセスメントによれば、タイはPLA製造に適した場所である。原料は主にサトウキビだが、キャッサバも使用されることがある。タイではほとんどのサトウキビ農場が雨水で灌漑されており、小規模で国中に広がっている。PLAの主な投入物である水とエネルギーも、タイでは比較的豊富に供給されている。そういった背景もあり、タイ政府は長年にわたりPLAに関心を寄せ、研究資金を提供し、投資促進のための税制優遇を行ってきた。さらに、持続可能性と技術を結びつけた新しい産業を創出する「バイオサーキュラーグリーン」コンセプトを推進している。
工場の立地、バイオポリマー産業の発展
工場はバンコクの北に位置するナコンサワン県のタクリ地区にあるナコンサワンバイオコンプレックスに建設され、サトウキビ畑に近い場所に位置する。年間生産量は75,000トンと見込まれており、2025年には稼働開始予定で、建設は2月に開始されている。今回の融資は、同工場の建設と運営に使用され、PLAの顆粒と繊維を生産する予定である。工場では、乳酸とラクチドを同じ敷地内で製造する。
産業政策として、農業産業に加えてバイオポリマーを刺激することは非常に理にかなっている。この取り組みは地域の農家に大きな利益をもたらす。また、PLAをタイの市場で非常に競争力のある価格で提供できるようになることで、化石燃料への依存を減らすことができると同時に、PLAは手術用の医療繊維として使用され、コーヒーカプセルの大量生産にも利用され、多くの用途で繊維の代替品として使用できる可能性がある。環境への影響を考慮する企業や消費者が増えれば、更なる成長が見込まれる。
この種の刺激策は、不適切な場所に自動車工場を設立しようとするよりもはるかに論理的である。多くのタイ企業がすでにPLA製品を利用することができ、多くの射出成形やその他の企業がこれらを高度かつ大量のアイテムに加工することができるだろう。この取り組みは素晴らしいものであり、タイがバイオプラスチックの実現に向けて引き続き投資することを期待したい。
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