ニコンがドイツの金属3Dプリンターメーカー「SLM Solutions」の買収完了を発表
株式会社ニコン(以下、ニコン)が、ドイツの金属3DプリンターメーカーSLM Solutions社の買収を完了したと23年1月20日に発表した。今回の買収は、ニコンが有する航空宇宙やエネルギー産業、自動車産業などの顧客に向けて、3Dプリンティングという新たな価値を提供するためのものだとしている。(画像はニコンの社屋 出典:ニコン)
産業用大型3Dプリンターの高速造形が強みのSLM Solutions社
ニコンの発表によると、SLM Solutions社の2021年12月期の連結売上高は7,511万5,000ユーロで、前年比約22%増だ。
2021年12月期の連結損益は2,037万5,000ユーロで赤字ではあったが、その額は2年連続で減ってきており、経営は上向きだったことがうかがえる。
SLM Solutions社の主な顧客は航空宇宙や自動車産業などで、ニコンによれば、レーザーパウダーベッドフュージョン方式の金属3Dプリンターをこれまでに750台以上納入しているとのこと。
SLM Solutions社の強みは産業用大型金属3Dプリンター「NXG XII 600シリーズ」による高速造形だ。ニコンは、12基の1kwレーザーを搭載したSLM Solutions社のNXG XII 600シリーズと自社の光学及び精密分野の技術を組み合わせ、製品力の強化を図っていくと発表している。
「NXG XII 600シリーズ」については、ShareLabNEWSでも過去に2機種について取り上げている。以下の記事もぜひご覧いただきたい。
買収を通して3Dプリンターの領域の事業拡大へ前進
カメラのイメージが強いニコンだが、SLM Solutions社を買収する以前から3Dプリンターの開発・販売を行っている。
「Lasermeister」は、ニコンが独自に開発した光加工機だ。噴射した金属粉にレーザーを当てて造形する DED(Directed Energy Deposition)方式を採用しており、金属積層造形からレーザー加工までを高精度で行える。
金属3Dプリンターは、ニコンが培ってきた「光利用技術」「精密な位置決めの技術」「画像技術」なども活かせる分野だ。SLM Solutions社の買収は、ニコンが3Dプリントの新たな技術を獲得し、業務領域をさらに広げることにつながるだろう。
新型コロナウイルスの影響で落ち込んでいた工作機械の需要は回復してきているものの、半導体不足や素材高騰などを背景に膨らんだ受注残は過去最高水準となっている。製造業を取り巻く環境は必ずしもよいものではないが、そのような時期だからこそニコンのように内部留保を効果的に活用し、戦略的M&Aを推進している企業も目立つ。
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