キヤノンの複合機がリサイクルされ3Dプリンター用フィラメントとして発売―キヤノンエコロジーインダストリー
キヤノンエコロジーインダストリー株式会社は、初の自社開発製品として、リサイクルプラスチック100%のFDM方式の3Dプリンター用フィラメント2種類(PC+ABS、HI-PS)を独自開発したと発表した。本フィラメントは、市場から回収した複合機の外装、カセットペディスタルのリサイクルプラスチックを原料としている。(写真は同社サイトより)
複合機はプラスチックの外装カバー、金属プレートやフレーム、PCB基板などさまざまな材料でできている。中でも高額なPCB基板はボタン電池やバッテリーを交換すればまだ使える場合も多く、リファービッシュパーツとしてリサイクルが盛んにおこなわれるなど、複合機業界はリサイクルに取り組んできた。
複合機業界におけるリサイクルへの取り組み
産業廃棄物処分の許可を得ているキヤノンエコロジーインダストリーではあるが、PCB基板のユニット取り外しを自動化している。基板の形状はさまざまであり、ランダムに流れてくるが、カメラで形状を把握して、ロボットがビスを外し、台車に載せるという一連の工程を自動化応できるようになっているようだ。同様にコピー用紙を格納するカセット部分の取り外しを自動化しているという。
大資本の企業がメインプレイヤーであることからSDG’sを意識した活動は盛んである。そんな中でも、外装のプラスチックカバーを用途転換して3Dプリンター用のフィラメントとして発売までしているのはおそらくキヤノンエコロジーインダストリーが初めてだろう。
再生プラスチックをFDM方式用樹脂フィラメントに
今回キヤノンエコロジーインダストリーが開発したのは、自社の複合機の中でも、外装材として使われているPC+ABS,HIーPSだ。耐衝撃性に優れリモネン(油分洗浄や脱脂、発泡スチロールの溶解などに使われる溶剤)に溶けやすいHI-PSをサポート材に、耐熱性に優れ高強度であるPC+ABSをメイン材料にするなどを想定しているとのこと。
分別した部品の材質が同じものを集め破砕しないと、リサイクルしたものの品質が低下してしまう。製造メーカーならではの経験とノウハウで丁寧な素材分別を行っている点はキヤノンエコロジーインダストリーの強みと言えるだろう。
複合機の外装やカセットぺディスタル(コピー用紙をセットする引き出し状の場所)を破砕、洗浄、押出成形することで、リサイクルプラスチック100%ながらFDM用フィラメントの品質上重要になる安定した線径精度を実現できたという。
販売価格などの情報は開示されていないが、リサイクル材料は、再生時のコストを勘案するとコスト高になりがちという課題もある。そんな課題を、加工し付加価値をつける事で解決しようとした取り組みと受け取ることもできる。環境と経済活動の両立が図られる取り組みとして成長していくことに期待したい。
2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。