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3Dプリンターで進化する個別化医療!投薬治療の課題解決を目的とした独自の3Dプリンターを公開

シンガポールを拠点とする医薬品・栄養補助食品デリバリー事業者であるCraft Health社が、患者への薬剤投与方法を合理化することで、複雑な投薬治療の課題を解決することを目的に、ドイツのViscoTec社製の粘性2成分材料用に特別に設計されたプリントヘッドを使用した独自の3Dプリンターを公開した。

ViscoTec社のプリントヘッド、vipro-Head 5 print head。メタリックな、太めの鉛筆の様な外見。
ViscoTec社のプリントヘッド「vipro-Head 5 print head」 (出典: Craft Health )

3Dプリンターで進化する個別化医療

個別化医療は、3Dプリント業界で最もエキサイティングな分野の1つだ。3Dプリント技術は個別化された医薬品開発や標的治療薬に大きな影響を与える可能性があると期待されている

2016年に初めて3Dプリントされた医薬品が米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けて以来、いくつかの企業が、オンデマンドの錠剤の作成、コストの削減、患者にとって飲みやすい医薬品の作成に役立つ付加製造技術の検討を開始した。Craft Health社もその一つで、3Dプリントソリューションを活用して薬剤の投与を簡素化しようと試みている。

それぞれの患者が必要とする用量、形状、サイズ、リリースを備えた、慎重に調整された医薬品を小ロットで製造する能力は、非常に大きな可能性を秘めている。医薬品と3Dプリントが融合して、オンデマンドでオンサイト(病院、薬局、あるいは遠隔地)で簡単に医薬品が製造できるようになれば、ヘルスケア分野に大きな革新が生まれることだろう。

Craft Health社がViscoTec社製のプリントヘッドを採用した背景

Craft Health社の 3D プリンター「CraftMake」(出典: Craft Health )

Craft Health社は、患者への薬剤投与方法を合理化することで、複雑な投薬治療の課題を解決することを目的としている企業だ。3Dプリンティング技術を用いて医薬品の製造プロセスを合理化できれば、企業は時間を節約し、無駄を省き、最終的には患者のためのカスタム製剤の作成を加速できる

そのための技術として、Craft Health社はドイツのViscoTec社製の粘性2成分材料用に特別に設計されたプリントヘッドが採用された。

Craft Health社は、栄養補助食品や医薬品の3DプリントにViscoTec社のプリントヘッド「vipro-Head 5 print head」を採用している。この種の3Dプリント製品に求められる規制要件に準拠しているため、正確で精密なパーソナライズドタブレット(錠剤)の製造に最適とのこと。

Craft Health社の2人の創業者は偶然にも薬剤師で、3Dプリント用に医薬品材料を処方することが容易ではないことを早くから知っていた。最初に3Dプリンターで試してみたところ、材料がプリントヘッドから出てこず、ノズルの先端から飛び出してしまい、機械全体を汚してしまうようなこともあったという。このような材料の目詰まりはその後修正され、現在では、3Dプリントされる材料を精密かつ正確に投与でき、最終製品が高い均一性を持つvipro-Head 5 print headを採用するに至った

vipro-Head 5 print headは、2つの素材を互いに別々にチューブに搬送しその後、それらは正しい混合比率で混ぜ合わされ、層ごとに塗布される。既存の3Dプリント用システムに簡単に組み込むことも可能だ。

Craft Health社について

Craft Health社の 3D プリンター、CraftMakeで錠剤を3Dプリントする様子。
錠剤を3Dプリントする様子 (出典: Craft Health )

2019年に資金調達を行ったCraft Health社は、Craft Makeと呼ばれる専用の3Dプリンターを使って1つの錠剤に3Dプリントした、Craft Blendsと呼ばれる独自のブレンド製剤を製造するスタートアップ企業だ。この会社の医薬品は、3Dプリントする前に、必要な有効成分を製剤と希望する放出制御のデータを混ぜ合わせるだけで機能する。

Craft Health社の共同設立者兼COOであるSeng Han Lim氏によると、同ブランドのCraftBlendsは、有効成分の個々の要件に基づいて、必要な体積または形状でプリントしなければならないという。しかし、ペーストや半固形物は圧縮される性質があるため、3Dプリント時の素材放出の精度と正確さが主な課題となっている。

「複数のプリントヘッドを使用しているので、個人の要求に応じて、異なる有効成分を含むクラフトブレンドを1つの錠剤に組み合わせられます。また、異なるクラフトブレンドを使用することで、体内への有効成分の放出速度のコントロールも可能です。したがって、必要な有効成分の組み合わせ、種類、用量などを考慮して、個人用に最適化された錠剤の3Dプリントが可能になりました。最終的な製品は、栄養補助食品と医薬品の両方において、患者のためにパーソナライズされたタブレットになります」とSeng Han Lim氏は強調した。

薬の摂取頻度を減らしたり、複数の薬剤を1つの錠剤にまとめたりすることにより、Craft Health社は医薬品の現状を変えることを使命としている。

現在、同社は顧客に対して、オンデマンドでのパーソナライズされた医薬品の製造、医薬品開発研究、および患者の受容性と味の評価のための臨床試験を提供している。今後の動向にも期待したい。

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