1. HOME
  2. 業界ニュースTOP
  3. ヤマト運輸、3Dプリンターを活用した国内初のマウスピースのオンデマンド・カスタマイズ生産を開始

ヤマト運輸、3Dプリンターを活用した国内初のマウスピースのオンデマンド・カスタマイズ生産を開始

ヤマト運輸株式会社は、マウスピース歯科矯正サービス「hanaravi(ハナラビ)」を提供する株式会社DRIPSと提携し、ヤマトグループの国内ネットワーク上に設置した3Dプリンターを活用した歯科矯正用マウスピースの製造、配送サービスを開始した。

従来の手法に比べ、治療期間の短縮、および治療計画の変更により生ずるマウスピースの廃棄の削減、歯科クリニック側の患者受け入れキャパシティーの拡大などが期待できる。(写真は3Dプリンターで作られた歯列矯正用マウスピース 出典:ヤマト運輸株式会社)

マウスピース矯正に求められる生産体制とスピード

歯科矯正の方法としてはワイヤーを用いたものが広く知られている。しかし軽中度の場合には透明で周囲から目立ちにくく、ワイヤーと比べ安価なマウスピースも用いた知れる矯正が拡大傾向にある。

マウスピース矯正は1~2週間ごとにマウスピースを交換し、歯列を少しずつ動かす治療法のため、患者1人あたり20~30のマウスピースが必要になる。マウスピースは一人一人の歯列に合わせて作るため大量生産が難しく、人件費が安い海外の歯科技工所で、初期計画をもとに矯正開始から完了までを一括製造し、輸入するスタイルが一般的だった。

3Dプリンターで作られた歯形モデル

DRIPS社は2019年から矯正専門の歯科と提携しマウスピース矯正サービスの提供を開始している。サービスの特徴はSNSを使った遠隔経過診察が可能な点だ。歯科矯正を手軽に始めたい人の需要をつかみ、累計のサービス利用希望者は1万人を超えている。

(写真:3Dプリンターで作られた歯形モデル 出典:ヤマト運輸株式会社)

DRIPS社によれば、マウスピース矯正において治療期間短縮のために重要となるのは歯の動きに合わせて短期間でマウスピースを交換することだという。多くの利用希望者にサービスを提供するためには大量生産に近い生産性を保ちつつ、個々の顧客ニーズに合う商品を製造することが求められる。今回のヤマト運輸との提携は、DRIP社の企業ニーズを満たすものになった。

国内初のマウスピースのオンデマンド・カスタマイズ生産を実現

3Dプリンターでカスタマイズするマウスピースは、以前ShareLabでもご紹介したOh my teethなど、製造コストの削減、カスタマイズできるメリットを活かしたサービス展開は増加している。しかし、今回のポイントとしてはなんといってもヤマト運輸の全国輸送ネットワークが最大の強みだ。

ヤマト運輸は2017年から3Dプリンターを用いた事業に着手し、ヤマト運輸の基幹ターミナルである羽田クロノゲートに「3Dプリントセンター」を開設。全国に張り巡らせた輸送ネットワークに3Dプリント機能を組み合わせた国内初のサービス「3Dプリント・配送サービス」を提供している。ヤマト運輸は同サービスにおいて、人工関節の手術用治具や医療領域における試作品の造形などを行ってきた。

ヤマト運輸は今回の提携にあたり、DRIPS社から送られてくる歯型造形用データから3Dプリンターの造形に適したデータへ自動補正するツールを新たに開発し、3Dプリンターによる製造から最終製品の仕上げ加工まで全工程の機械化により、国内初のマウスピースのオンデマンド・カスタマイズ生産を実現している。

患者と歯科クリニック双方へのメリット

ヤマト運輸の運送ネットワークを活かし、患者は治療進捗に応じた適切なマウスピースをスピーディーに受け取れるようになる。あらかじめ多数のマウスピースを受け取ることもないため、マウスピースの管理や着け間違え上のトラブルも予防できる。

マウスピースの生産体制が強化されれば、患者の治療期間が短くなるので歯科クリニック側には、患者の受け入れキャパシティーの拡大や、提供するマウスピースの品質向上、マウスピースの製造待ちによる治療期間の長期化や途中終了の予防といったさまざまなメリットがある。

サービスの流れ 出典:ヤマト運輸株式会社
歯科矯正マウスピースの配送サービスの流れ 出典:ヤマト運輸株式会社

今後の展開

現在のところDRIPS社と提携している歯科クリニックは東京・大阪・京都に一院の、合計3医院。今後は提携医院数を増やし、患者の受け入れ拡大をしていく見込みだ。歯科領域だけでなく身体全体の予防領域へのサービス拡張も目指すという。

ヤマト運輸は羽田クロノゲートに続き、全国にあるヤマト運輸の主要拠点に順次3Dプリンターを増設し、よりスピーディーに製品を届けられる体制作りを強化していく予定にある。今後は、治療用装具、医学模型市場だけにとどまらず、オーダーメイドが求められるメーカーの試作品製造などの分野にもサービスを展開拡大していく見込みで、東南アジアをはじめとした諸外国への展開も視野に入れ、2025年度までに「3Dプリント・配送サービス」事業の売上100億円を目指すと発表している。

日本では諸外国に比べ3Dプリンターを活用した事業展開の規模は大きくない。配送業者であるヤマト運輸が3Dプリンターを活用した事業に大きく乗り出していることは、日本全体の3Dプリンター活用の追い風になるだろう。今後の展開にも期待したい。

関連情報

国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

資料ダウンロード 3Dプリンティング国内最新動向レポート

サイト内検索

関連記事