チョコメーカー、カカオの廃棄物から3Dプリントで建てる施設を計画、2022年建設へ
米ニューヨークのValentino Gareri Atelierはエクアドルのチョコレートメーカー「MUZE Cacao」と非営利団体「Avanti」に、持続可能でスマートな村の世界第一号として、実質的な温室効果ガスの排出ゼロを意味するカーボンニュートラルと、カカオ産業における循環経済のためのイノベーションセンターである「cacao eco village」を設計した。「cacao eco village」における構造物は3Dプリンターによって作成される。建設は2022年に開始される予定。
「cacao eco village」について
「cacao eco village」は、カカオ農家とその家族が働き、暮らすエクアドル・マナビ県沿岸部のペデルナレス郡に2022年に建設が開始される予定だ。 観光地でもあるこの場所は、一年中天候に恵まれ、手つかずのパノラマビーチ、考古学、伝承、そして優れた食の伝統で知られている。
設計を担当したValentino Gareri氏は以下のように述べている。
「私たちは、循環型経済の基本原則を非常に重視しており、このプロジェクト全体のデザイン哲学に反映させています。チョコレートの製造工程で出るカカオの廃棄物は、村のパーツを3Dプリントするために再利用される予定です。廃棄物は資源になるだけでなく、建築物にもなるのです。 遠くない未来、私たちは天然素材だけで建物を設計し、ライフサイクルの終わりにリサイクルして、新しい建物をつくったり、自然に戻したりすることができるようになるでしょう」
建築用資材を現地で調達するのは大きなコスト削減につながる。これはNASAの火星移住計画における建築用資材の調達方法とも共通している。
NASAの火星移住計画と3Dプリンターの関係に関しては過去の記事で詳細を紹介している。
≫ NASAの火星移住計画には3Dプリンター住居が!独創的なその仕組みと設計に迫る
「cacao eco village」における持続可能な建築デザインには、5つの基本原則がある。
基本原則 | 概要 |
---|---|
モジュール式: | 拡張可能、複製可能、異なる敷地、寸法、形状に適応可能 |
機能的 | カカオの加工、チョコレート工場、教育・研究センター、共同生活、コワーキング、地元コミュニティの文化的拠点として、また意識の高い観光地として運営される予定。 |
持続可能 | 持続可能:エネルギー自給自足の村(雨水収集と太陽エネルギー、自然換気、竹や木材、カカオ殻廃棄物のバイオフィラメントでできた3Dプリント構造物など地元の材料で建設される)。 |
技術対応 | ブロックチェーン、IOT、NFTを使用。 |
接続性 | 地元のコミュニティや伝統とつながっている。 |
cacao eco villageのすべての建物は、地元の自然素材で建設される予定だ。外観は、エクアドルのさまざまな色の家や、カカオの木のカラフルな実からインスピレーションを受けている。建物の形状は、雨水の貯留を容易にするため、屋根に水槽が組み込まれており、その形状も、エクアドルの地元の芸術パターンからインスピレーションを受けています。
村には、自転車と歩行者専用道路が整備され、電気自動車の使用が奨励され、充電ステーションが設置される。
この持続可能でスマートなインフラ計画は、カカオ産業が環境と社会に与える影響の解決策として生まれた。環境負荷の削減、住民の収入増加、資源依存の低減、廃棄物の最小化のための創造的な解決策として、循環経済モデルが採用されている。
MUZE Cacaoのミッションは、現在約80%が廃棄されているカカオの果実を最大限に活用した、新しく倫理的なカカオベースの製品を作ることだ。それらの製品は、廃棄物を減らし、二酸化炭素排出量を相殺するだけでなく、農民とその家族を貧困から救い、グローバルなサプライチェーンに統合することを目標としている。
cacao eco villageは、循環型経済の導入をすすめる人たちにとっての「シリコンバレー」となり、農業技術、金融技術、フードテック、スタートアップ、企業、メーカー、生産者、研究者のための発明の場、実験場となると見込まれている。また、時代の先を行く人たちが、つながり、共同創造し、刺激を受け、社会的インパクトを生み出すための場所であり、共同生活空間でもある。
村という小さな単位であるものの、実態は非常に近未来的だと言える。持続可能な未来の暮らしのためには、3Dプリンターがなくてはならないものになるのだろう。
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