NASA、2023年予算260億ドル要求。3Dプリント技術開発に期待
NASAは、2023年度予算要求において、前年度比較で4.7%増となる260億ドルを連邦政府に提示していることを報じた。予算要求書には、RRPやOSAMプロジェクトなど、3Dプリントに関する記述もあり、3Dプリントへの期待の高まりが見られる。
2023年度予算要求
NASAは2023会計年度(アメリカでは2022年10月から2023年9月まで)予算要求に際し、260億ドルを提示していることを明らかにした。これは2022会計年度予算を4.7%上回る額であり、世界的に勢いを増しつつある宇宙開発への期待を示している。
Budget Documents, Strategic Plans and Performance Reports | NASA
予算要求の中で、NASAが最大の関心を寄せているのは、人類活動拠点建設を含む月渡航計画「アルテミス」だ。
現在のアルテミス計画では、2022~2026年の間に4回の有人ロケット打ち上げを実施する。そのうちの何度かは月面に着陸し、月面で数日間滞在して各種ミッションを実施する予定だ。その後も1年周期ほどで月面にクルーが送られる。この間、月面での活動拠点建設や、月軌道上のプラットフォームゲートウェイ建設も進めていく。
このアルテミス計画等の深宇宙探査プログラムには、76億ドルの予算を予定しており、全体の1/4程度を占める。
NASAのアルテミス計画には3Dプリント技術も大きく関わっている。オフアースでの活動拠点建設に3Dプリントが活用される予定であることは、以前当サイトでも扱った。ただしこちらはアルテミス計画のさらに先、火星移住計画に関する記事だ。
「NASAの火星移住計画には3Dプリンター住居が!独創的なその仕組みと設計に迫る」
NASAが進める3Dプリンタープロジェクト
当サイトが関心を寄せるのは「NASAが(ひいては全世界の宇宙開発関連事業者が)3Dプリンターをどれだけ評価しているのか」という点だが、「3Dプリンター関連技術の研究開発」という形で予算の割り振りが行われているわけではないため、3Dプリンター関連技術への具体的な支出額は分からない。
しかし、予算要求書の中には、3Dプリンターに関する記述が幾つか見られた。今回はその中の2つのプロジェクトについて紹介する。
Redwire Regolith Print
月面居住施設の建設において重要となるのは、月面の砂礫(レゴリス)を利用した3Dプリントだ。巨大な建造物を作るために建材をロケットで運搬するのではコストが膨大になり、現実的でない。
そこで2021年には、「月面のレゴリスで3Dプリントが実行可能であるのか」を検証するための実験が行われた。
「月面で3Dプリンターを使用するための実証実験が国際宇宙ステーションで始動」
Redwire Rogolith Print(RRP)は、微小重力下におけるレゴリス様材料を利用した3Dプリントデモンストレーション計画のことである。2021年にISSで実施されたRRPは成功し、月面での基地建設計画は一歩前進することとなった。
NASAは予算要求の中でRRPの成果を強調している。宇宙開発において、3Dプリントの役割が拡大しつつあることを裏付ける記述だ。
OSAM
地球で装置を作り、宇宙に打ち上げるだけでは、装置のサイズが宇宙船の大きさを超えることができない。今後の宇宙開発を迅速かつ効率的に進めるためには、宇宙空間で製造を行う技術が必要となる。
この役割を果たすのが、OSAM-2と呼ばれる人工衛星だ。
OSAM-2は「On-Orbit Servising, Assembly, and Manufacturing 2」の略称で、3Dプリント機能や、組み立て機能を備える。
OSAM-2実装の暁には、地球の軌道上で33フィート(約10m)の支柱を建設する予定だ。この支柱は、従来の5倍の発電量を有する太陽光発電システムに使われる。全てがOSAM-2で作られるわけではないが、この建築計画にOSAM-2が果たす役割は大きい。
OSAM-2は2022年内に打ち上げられる予定だ。
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