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バイオ3Dプリント技術で培養肉を開発するTissenBioFarmが新たに160万ドルの資金調達に成功

培養肉

韓国のTissenBioFarm社が、投資会社主導で160万ドル(約2億3500万円)の資金調達

バイオ3Dプリントで培養肉を開発する韓国のTissenBioFarm社が、投資会社主導で160万ドル(約2億3500万円※)の資金調達を行った。今回の資金調達は、春に行われた40万ドル(約6000万円※)の資金調達に続くものだ。(※1ドル147円で換算)。調達した資金は研究施設の拡張計画や、研究所の枠を超えた生産体制の構築などに充てられる。また、動物細胞の増殖・分化技術の開発にも取り組み、規制当局の承認が得られれば、消費者向けに発売する予定になっている。

バイオ3Dプリントは、樹脂や金属ではなく、生きた細胞や有機物を素材とする3Dプリントで、主に再生医療分野での研究開発が進められている技術だ。培養肉の開発にも同様の技術が用いられる。(画像はTissenBioFarmが開発しているバイオ3Dプリント培養肉 出典:TissenBioFarm社)

TissenBioFarm社の培養肉技術

TissenBioFarm社は、食用バイオインク材料を用いて、栽培肉や植物性肉製品を製造している。同社は現在、3種類の食用バイオインクを保有しており、既に市場レベルでの生産に適した状態だという。3種類の食用バイオインクは100gあたり約0.33ドル(約49円※1)で大量生産が可能で、養殖肉と植物性肉の両方に応用できるようだ。スーパーに並ぶ食肉の価格と比べると「高級なお肉」と言えるだろう。

TissenBioFarm社の培養肉は、独自の細胞培養法を用いることで、従来の食肉の食感や霜降り、栄養までを効果的再現している。

バイオ3Dプリント培養肉の研究開発のようす-出展:TissenBioFarm社
バイオ3Dプリント培養肉の研究開発の様子 出典:TissenBioFarm社

TissenBioFarm社のCEOであるWonil Han氏は自社の培養技術について「世界の培養肉分野では、細胞培養の手法でステーキのような厚みのある肉を作ることは非常に困難です。さらに、培養肉で肉の食感や霜降りを再現し、大量生産するためには、最先端の技術が必要です。私たちの技術により、近い将来、味、栄養、感覚、価格において競争力のある高品質な培養肉が提供されるでしょう。」と述べ、バイオ3Dプリンティングによる食肉製造の課題に触れながらも将来展望を語った。

韓国で激化する培養肉開発競争

韓国では、TissenBioFarm社以外にもさまざまな企業が培養肉開発に乗り出し、投資会社からの資金調達に成功している。肉に限らず、細胞培養によるエビ、カニ、ロブスターの開発を行う企業もある。

培養肉の販売は韓国では認可されておらず、これまでは投資会社も注目していなかった。しかし、昨年2021年にシンガポールで世界で初めて培養肉の販売が許可されたことをきっかけに、世界各国の企業が培養肉の市場開拓のために乗り出すようになった。韓国においても2022年8月に、国家計画として初めて代替タンパク質のガイドラインを盛り込むことが発表された。国家計画には培養肉の安全性評価や製造プロセスの管理制度が盛り込まれることが分かっている。シンガポールと同様に、韓国でも近い将来、培養肉の販売が許可される可能性があるといえるだろう。

大豆ミートと呼ばれるような植物性原料による代替肉が、モスバーガーなどの一般の飲食店にも見かけられるようなった(左写真:モスバーガーで発売された大豆が原料の代替肉、ソイパティ)。

動物性原料による培養肉の製造技術はまだ発展途上中だが、豆や食用昆虫など他の代替タンパク質よりも従来の肉に最も近く、生産速度が速い点でメリットが見込まれている。

世界の食肉市場において、ソイパティや培養肉は、菜食主義を掲げるベジタリアン向けの食材でもあるが、宗教上の理由で特定の動物の食肉を口にすることができない人々への食の自由を開く嗜好品でもある。

培養肉・フード3Dプリンティングの未来

SFを題材にした映画や小説の中では、天然の肉が高級品で、培養肉は安物でまずいという設定が多くみられるが、現状は培養肉の方が希少性がある状態だ。当面、通常の食肉が一般的である時代は続くだろう。だが、製造量の増加や生産装置の技術進化で培養肉が安定的に製造可能な食糧として流通するポテンシャルはある。

食肉を生産するためには、家畜を育てるための飼料や、その元になる植物を栽培するための膨大な水資源を必要とする。世界を見渡せば、水が貴重な地域は数多くある。食肉を工場生産できることは非常に有益で貧困や飢餓の解決に貢献できる可能性もある。

いずれも日本では実感しにくいメリットではあるが、培養肉はアレルギーをもった人にも楽しめる食材を生み出すことも可能だろうし、フード3Dプリンティング技術を活用することで、介護食などにも適応が可能だ。栄養素や食感もデザインできることで、ケーキのような外観の牛肉料理や、和菓子のような見た目と味の魚肉料理も生まれるかもしれない。従来の常識を打ち破る可能性が培養肉やその調理の先にはある。バイオ3Dプリンティング技術を活用した、分厚いお肉が製造できる日が待ち遠しい。

なお、過去にShareLabNEWSが取り上げたバイオプリンティング関連の記事も併せてご覧いただきたい。

国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

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