3Dプリンターでスペア入れ歯を作製!1年で500個突破ー株式会社お守り入れ歯
北海道札幌市に本社を置く株式会社お守り入れ歯が実施している、スペアの入れ歯を3Dプリンターで製作するサービスが、2021年9月のサービス開始以来、累計で500個の製作数を突破した。(画像は3Dプリンターでデジタルコピーされた歯(ひとり分)出典:お守り入れ歯社)
目次
スペア入れ歯製作サービスの概要
スペア入れ歯製作サービスは、現在使っている入れ歯を3Dスキャナーで細部まで読み取ってデータ化し、3Dプリンターで全く同じ形のプラスチック入れ歯を複製するものだ。
サービスを受ける流れとしては、電話、インターネット、LINEで申し込みを行い、問診後に入れ歯を預け、デジタルコピーを行う。問診はオンラインでも可能だ。データを取った入れ歯は返却される。完成したスペア入れ歯は、必要に応じて歯科医院で調整が行われ、ユーザーの手に届く。
従来の入れ歯製作が、通院をしながら1か月ほどかけて行うのに対し、お守り入れ歯社のスペア入れ歯は1~14日と短期間で作成可能で、オンライン診療を選択すれば一度も通院する必要はない。入れ歯の受け渡しは、郵送にも対応している。
スペア入れ歯製作の需要
スペアの入れ歯には、もしものときの予備としての役割だけでなく、さまざまな需要がある。
たとえば、入れ歯を外した顔を見せたくない、会話がしにくいので外す時間を短くしたいというニーズだ。入れ歯だということを周りに秘密にしているケースもある。
通常、入れ歯を清潔に保つためには丁寧なブラッシングをしたあと、最低でも2時間、可能ならひと晩洗浄液に浸しておく必要がある。しかし、入れ歯を外した顔を見られたくないという思いから、入浴中にブラッシングだけしてすぐに装着し、就寝時もつけたままという人も多いという。
また、就寝時に入れ歯を外すと顎が落ち着かずに安眠できない、夜中に喉が渇いても水が飲みにくいといった悩みを抱える人もいる。
スペアの入れ歯があれば、その日に装着した入れ歯は一晩しっかり除菌でき、就寝時もスペアをつけて寝られる。食事や会話にも支障がなくなるため、日常用としてはもちろんのこと、外出時や旅行時にも活用できる。
寝る際に入れ歯を付けて寝ると誤嚥性肺炎の予防にもつながる
唾液や食べ物などが食道ではなく気管に入り、細菌を気道に誤って吸引することで発症する誤嚥性肺炎は、就寝時の汚れた入れ歯が原因の1つと考えられている。
スペアの入れ歯をつくれば、清潔な入れ歯を装着して就寝できる。健康面でもプラスに働く点は多そうだ。
誰がどうやって使う?気になるお値段は、保険適応の有無、壊れない?
総入れ歯は高額な買い物だが、どこにでも売っているものでもない。歯科医に作ってもらって一つしかない。そのスペアが簡単に手に入るのは非常にうれしいサービスだ。だが、口に長い時間入れておくものでもある。自分でまたは家族で総入れ歯を使っている方はイメージがつくかもしれないが、眼鏡よりも総入れ歯の方が管理が面倒らしい。
そこで、メールで気になる点を問い合わせみたところ、素早く回答をいただけたので、ここで紹介しておこう。回答いただけたのは、株式会社お守り入れ歯の代表取締役 池田 昭 氏だ。
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シェアラボ編集部:どのメーカーの3Dプリンターですか?素材の名前やスペックは?
池田氏:弊社の主力機器はクルツァージャパン社のカーラプリント4.0となっています。試験的にラピッドシェイプ社のD20+を使用しています。カーラ、ディーマというレジンを用いています。数値的なスペックが公表されておらず、下記のサイトを参考にしてもらえたらと思います。( クルツァージャパン社 のサイト)
シェアラボ編集部: 医療用品ですか?
池田氏: はい。薬事の認証を受けています。
シェアラボ編集部: 歯と歯茎の素材は同じですか?
池田氏: 歯と歯茎の部分は別の素材でプリントして接着しております。
シェアラボ編集部: 硬さはどの程度でしょうか?人間の歯より硬いですか?やわらかいですか?
池田氏:メーカーの公表値が無いのでこれは感覚ですが、人間の歯よりはやわらかいです。従来の義歯用の歯よりもやわらかく、耐摩耗性にはまだ課題があります。
シェアラボ編集部: 色はどうやって着色していますか?
池田氏: 着色は行っていません。
シェアラボ編集部: 生体適合性のレベルは?常時口の中に入れていても危険性はありませんか?
池田氏: 日本および海外の薬事認証をクリアしており、生体への危険性はありません。
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メール取材に対して、大変しっかりとした返答をいただけた上、追加取材にも対応できる旨ご返信をいただけた。タイミングを見てぜひお話を伺ってみたいと思っている。(その際は何卒よろしくお願いします。)
サイト上でも気になる情報は説明されていた。値段などが気になるところだが、なんと3Dスキャニングしてデジタルデータを起こすところまでは無料だった。入れ歯がないと困る人は、予約して北海道の指定の場所でスキャニングを行うことで、手元にない期間をなくすこともできるようだ。治療と旅行をセットで行うメディカルツーリズムという形態があるようで、日本はその受け入れ先としても有名だが、入れ歯も旅行資源になるかもしれない。
残念ながら保険適用外で、樹脂の3Dプリンターでの製造になるため、金属入れ歯も樹脂の入れ歯になる。硬いものを噛む際に、入れ歯が欠けてしまう点も気になるが、サイト上では「壊れる可能性の無い入れ歯はありません。お守り入れ歯の場合は、デジタルコピーデータがあると壊れても新しい入れ歯をすぐにお作りできます。」と明確に回答されていた。その代わり歯茎や歯の色は選択できるので、健康的な色にしてもらえるようだ。着色ではなく素材の色ということなので、色落ちなどの心配もなさそうで安心だ。
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