【TCT Japanみどころ】樹脂材料の品質規格が新設―日本化学繊維協会
3Dプリンター用フィラメントの品質規格新設!
先行して規格整備がすすむドイツやアメリカとは違って、いままで日本には3Dプリンターの品質規格も存在しなかった。まさ徒手空拳で地道に社内でノウハウを築いていくしかなかった造形者に朗報がある。
TCTJapanに出展している日本化学繊維協会は、日本の化学繊維産業の健全な発展を目的に設立された化学繊維の業界団体だが、ついに3Dプリンタ用樹脂フィラメント材料について品質・性能に関するJIS規格を新たに策定した。今後各社各様に製作、表示された製品の比較選択が統一された規格の元で表示され、材料選定のために活用できる可能性がある。
樹脂フィラメントの性能表示は各社独自の指標で表現しているため、購入前の比較検討は非常に困難だ。そのため利用者には、実際に購入してみて造形試験する、という実地で確かめる姿勢が求められてきた。そもそも3Dプリント後の造形物の性能はプリンター機種やセッティング等に大きく影響を受ける。その上、材料として着目すべき規格項目は樹脂の種類によって異なる。共通言語がないまま製品の銘柄数が増えている現状は利用者にとっては取り組みを難しくする一つのハードルになっていた。
日本化学繊維協会では、最も汎用的なポリ乳酸(PLA)を対象とした、FDM方式の3Dプリンター用PLAフィラメントの精度・耐久性・出力安定性等、材料を評価する際の評価軸と試験方法を明らかにし、一定の基準で比較できるように規格整備した。(JIS K 6821)
TCT Japan2020年12月開催の会場では展示ブースがなく、オンライン出展のみだが、JIS規格策定時の3Dプリンター用PLAに対する試験内容に関しての紹介は画期的な取り組みなので一読の価値はあるだろう。本規格策定のために、独自の試験装置を開発し、特定の3Dプリンターの影響を受けないように配慮されているなど、苦労が垣間見えるが、その舞台裏は独自に取材したので別途ご紹介したい。
PLA材料を提供する材料メーカーでも独自に造形試験結果を持ってはいるものの、複数社の提供する材料を比較する際に、比較軸が異なったり評価方法が統一されていないため、カタログスペックを見ても判断がつきにくいという現状の課題を解決する糸口になることが期待される。
実際に購入する前は、こうした細部がわかりにくいと感じていた方も多いだろう。一つ疑問が解決すると次の疑問が頭に浮かんでくる。
展示会会場は、素材のスペシャリストに教えを乞う絶好の機会だ。今回のTCT Japanはリアル会場に足を運べない場合でも、出展者にウェブ会議を申し込むことができるハイブリッド開催となっている。無料で専門家にコンタクトをとることができる貴重な機会となっているので、積極的に活用したい。
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2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。