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SpaceXのラプターエンジンが進化!火星到達に向けた革新的技術

ラプターエンジン「1」「2」「3」

スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(以下、SpaceX)のラプターエンジンは、スターシップ計画の中心的存在である。従来のマーリンエンジンと比べ、推力や効率の面で大幅に進化を遂げた。SpaceXは、ラプターエンジンの開発を通じて、火星ミッションをはじめとする多目的で持続可能な宇宙探査の実現を目指している。(上部画像はラプターエンジン「Raptor 1」「Raptor 2」「Raptor 3」出典:SpaceX)

開発における技術的課題

ラプターエンジンは、SpaceXの次世代ロケット「スターシップ」に搭載されるメタン・液体酸素(LOX)燃料を使用するエンジンである。開発初期から現在に至るまで、ラプターエンジンは多くの技術革新を遂げてきた。

マーリンエンジンと比べ、推力や効率の面で大幅に進化を遂げた開発だが、数多くの技術的課題が存在したのも事実である。その一つが、高圧環境下での燃料の安定供給だ。メタンと液体酸素を高圧で燃焼させる全流動燃焼サイクルは、理論上は非常に効率的だが、実現には高度な技術が求められる。また、エンジンの再利用性を確保するためには、繰り返しの点火と燃焼に耐えうる耐久性が必要であり、耐熱性の高い材料の開発や冷却システムの最適化が不可欠であった。さらに、エンジンを軽量化しつつも高出力を維持するという相反する要求を満たすために、設計の精密化が求められる。しかし、これらの技術的課題を克服することで、SpaceXはラプターエンジンの実用化に成功し、次世代の宇宙探査を支えるエンジンを完成させた。

稼働しているエンジンの写真
稼働しているエンジンの写真(出典:SpaceX)

ラプターエンジンとマーリンエンジンは、どちらもスペースXが開発したロケットエンジンだが、設計や使用目的、燃料において以下のようないくつかの違いがある。

「ラプターエンジン」

  • 燃料: 液体メタン(LCH4)
  • 酸化剤: 液体酸素(LOX)
  • ラプターエンジンは、液体メタンと液体酸素を燃料とするフルフロー段階燃焼サイクルのロケットエンジンで、エンジンの効率が向上し、高推力と再利用性が確保されている。

マーリンエンジン

  • 燃料: ケロシン(RP-1)
  • 酸化剤: 液体酸素(LOX)
  • マーリンエンジンは、ケロシンと液体酸素を燃料とするガス発生器サイクルのロケットエンジンで、主にファルコン9とファルコンヘビーロケットの第1段と第2段に使用されている。

ラプターエンジンとマーリンエンジンとの比較

ラプターエンジンとマーリンエンジンを比較すると、いかにラプターエンジンが技術的に大きな進化したかが分かる。マーリンエンジンはケロシンと液体酸素を燃料とするシンプルな燃焼サイクルを採用しており、主にファルコン9ロケットに使用されてきた。これに対し、ラプターエンジンはメタンと液体酸素を燃料とすることで、よりクリーンな燃焼を実現し、再利用性を高めている。また、ラプターは全流動燃焼サイクルを採用しており、マーリンの開サイクル燃焼サイクルに比べて効率が格段に向上していて、推力においてもマーリンエンジンを大きく上回り、重い貨物を地球低軌道やそれ以上の軌道に運ぶことが可能となる。さらに、ラプターエンジンは設計段階から再利用性を考慮しており、メンテナンスの容易さや耐久性の点でも優れている。これらの特徴により、ラプターエンジンはマーリンエンジンの後継として、次世代ロケットエンジンのスタンダードとなりつつある。

3Dプリンターによる製造技術でコスト削減とスピードの向上

ラプターエンジンの製造においては、3Dプリンター技術は極めて重要な役割を果たしている。最大の利点は、製造工程の効率化とコスト削減にある。従来の製造方法では、エンジンの複雑な部品を作るために複数のパーツを個別に製造し、それらを組み立てる必要があったが、3Dプリンターを用いることで、一体型の部品を直接製造することが可能となり、製造時間が大幅に短縮される。

また、材料の無駄を最小限に抑えつつ、設計の自由度を向上させることができるため、軽量かつ高性能なエンジン部品の製造が可能となり、ロケット全体の効率性があがる。さらに、試作段階においても、設計の迅速な修正と再試作が容易であり、開発サイクルの短縮にもなる。これによって迅速かつ低コストで生産することが可能で、ロケット打ち上げのコスト削減と頻度の増加を実現している。

ラプターエンジンがもたらす宇宙探査の未来

ラプターエンジンの高効率かつ高出力な性能は、これまで以上に遠い目的地へのミッションを可能にする。特に、メタン燃料は火星での現地生産が可能であり、長期間の宇宙ミッションでの燃料供給問題が解決されるという。ラプターエンジンを搭載したスターシップは、低コストかつ頻繁にミッションを実行できるため、宇宙探査がより一般的かつアクセス可能なものとなる。また、ラプターエンジンの再利用性により、ミッションごとのコスト削減が実現し、商業宇宙飛行や深宇宙探査の可能性が大幅に広がる。

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