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大阪・関西万博で3Dプリンター製演台を初導入 ― 鴻池組、スワニー

3Dプリンターを用いて製作した演台。

株式会社鴻池組(大阪市中央区、以下、鴻池組)および有限会社スワニー(長野県伊那市、以下、スワニー)は、大阪・夢洲で開催される2025年日本国際博覧会(以下、大阪・関西万博)において、小催事場建設工事(EXPOナショナルデーホール)向けに、3Dプリンターで製作した演台および司会者台を納品した。これらの什器には、鴻池組の建設現場から回収されたPPバンド(ポリプロピレン製梱包バンド)を原料とした再生プラスチックを活用している。(上部画像は3Dプリンターを用いて製作した演台。出典:鴻池組、スワニー)

建設現場発の課題に挑む!3Dプリンターとリサイクル技術で廃プラ再生

建設現場では、工事期間中に多様な産業廃棄物が発生する。中でも廃プラスチックは資材の梱包材や養生材として多く用いられており、その材質の多様性からマテリアルリサイクルの実施が難しく、大半が廃棄物を焼却する際に発生する熱エネルギーを活用するリサイクル方法「サーマルリサイクル」に回されているのが現状である。このような課題に対して、鴻池組では以前よりマテリアルリサイクルへの取り組みを行っており、プランターの製作を通じて得た3Dプリンティングの技術を応用し、博覧会で使用される什器の製作に挑戦した。

PPバンド回収から3Dプリンターによる演台・司会者台製作のプロセス
PPバンド回収から3Dプリンターによる演台・司会者台製作のプロセス(出典:鴻池組、スワニー)

循環型社会の実現へ。廃プラ什器の提案が万博協会に承認

本件は、「建設過程で生じた廃プラスチックを原料として新たな製品を製作し、博覧会終了後の撤去時には再びマテリアルリサイクル資源として循環させる」という、博覧会の基本方針である「循環型社会の実現」に資する取り組みとして、博覧会協会に提案され、承認を得たものである。

再生材と環境配慮型素材を活用。3Dプリンターで実現した持続可能な什器

製作には、株式会社TBM(東京都千代田区)がリペレット処理を行った再生PPペレットを使用し、スワニーが保有する3D Systems社(アメリカ・サウスカロライナ州)の大型のペレット押出式3Dプリンター「EXT TITAN Pellet」により成形を行った。演台および司会者台の素材は、50%以上が再生PPペレットで構成されており、残りは形状の安定化と強度向上のためのフィラー材を含むコンポジット素材である。

リサイクルマテリアルを用いて演台・司会者台を製作するために使用したペレット押出式3Dプリンター「EXT TITAN Pellet」
リサイクルマテリアルを用いて演台・司会者台を製作するために使用したペレット押出式3Dプリンター「EXT TITAN Pellet」(出典:3D Systems社、スワニー)
3Dプリンターを用いて製作した司会者台
3Dプリンターを用いて製作した司会者台(出典:鴻池組、スワニー)

また、デザイン面では、大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」や関連モチーフを意匠に取り入れた。この装飾部には、旭化成株式会社(東京都千代田区)が製造した環境配慮型材料であるセルロースナノファイバーフィラメントが使用され、3Dプリンターで出力された。什器全体が環境負荷を抑えた素材で構成されている。

式典で実用性と環境性を証明。万博期間中もリサイクル什器として活躍へ

製作された演台および司会者台は、3月23日に開催された大阪ヘルスケアパビリオンの開館式にて初めて使用された。また、3月27日には、警察および消防の専門部隊発足式においても使用され、実用性とデザイン性の両立が実証された。今後も、大阪・関西万博の開催期間中を通して、さまざまな式典やイベントの場において繰り返し活用される予定であり、リサイクル素材の有効活用事例として来場者に広く発信される見込みだ。会場における資源循環の象徴としても、その存在感を発揮していく。

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国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

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