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退役戦闘機の部品を再生し次世代へ!Rolls-Royceの3Dプリント活用と持続可能な防衛技術

Rolls-RoyceのWebサイト

Rolls-Royce Holdings plc(ロールス・ロイス、イギリス・ロンドン)は、RAF(イギリス空軍)の退役機「Tornado(トーネード)」の部品を金属粉末に変換し、それを用いて3Dプリントで新たな部品を製造するという初の試みとなるリサイクルプロジェクト「Tornado 2 Tempest」に参画した。この技術により、オルフェウス小型エンジンコンセプトの部品が製造された。(上部画像はRolls-RoyceのWebサイト。出典:Rolls-Royce)

次世代戦闘機「Tempest」への応用を見据えた持続可能な製造技術

オルフェウスはFCAS(Future Combat Air System:将来戦闘航空システム)プログラムの一環であり、本プロジェクトは、次世代戦闘機「Tempest(テンペスト)」の開発においても本技術の適用可能性を示すものである。TempestはRolls-Royceの「Grow Combat」戦略の中核をなす機体であり、本プロジェクトはその持続可能な製造技術の一環として実施された。イギリス国防省(MOD)が保有する余剰資産には、戦略的に重要な金属が多く含まれている。高品質な鋼、アルミニウム、チタンなどが含まれ、これらを有効活用することで国防産業のサプライチェーンを強化できる可能性がある。

退役機のチタン部品を再利用し、3Dプリント製部品の性能を実証

本プロジェクトでは、退役機「Tornado」の部品のうち、チタンを多く含む部品(低圧圧縮機のコンプレッサーブレードなど)を選定し、これを洗浄・粉末化した。得られた金属粉末を用いて3Dプリントにより新たなノーズコーンやコンプレッサーブレードを製造し、その性能を検証した。Rolls-Royceは、この3Dプリント製ノーズコーンをオルフェウス試験エンジンに装着し、試験環境下での運転を実施した。その結果、部品の適性と安全性が実証され、将来的な適用可能性が示された。

国防リサイクルの推進と戦略的金属の確保を目指す協力体制

このプロジェクトは、MODのDE&S(Defence Equipment & Support)傘下の「Defence Recycling & Disposals Team(DRDT)」が主導し、MOD FCASチーム、Rolls-Royce、ランカシャー州バーズコーに拠点を置くAdditive Manufacturing Solutions Limited(AMS)と協力して実施された。また、英国戦略司令部の「Defence Support Organisation」の支援を受けており、「Circular Economics for Defence Concept Note(防衛の循環経済概念)」の一環として資金提供が行われた。

本プロジェクトの成功は、退役機の部品を再利用することが可能であり、MODおよび国防産業全体に大きな利益をもたらす可能性を示している。特に、英国の防衛産業やそのサプライヤーにとって戦略的金属の確保が容易になる点は重要である。

持続可能な防衛技術の実証と産官学連携

Rolls-RoyceのFCASサステナビリティ担当副社長であるアンドリュー・イーディ氏は、本プロジェクトについて、Tornado 2 TempestはFCASサステナビリティ戦略とMOD防衛支援戦略に根付いた持続可能性の原則を具現化するものであると述べた。ロールス・ロイスは、循環経済の実践とデジタル技術を活用した持続可能な事業運営において業界のリーダーであり続けることを目指している。MOD、産業界、中小企業の協力によって実現した画期的な取り組みであり、持続可能で先進的な技術の可能性を示す好例である。

デジタル・プロダクト・パスポートの実証と防衛産業の持続可能性向上

また、このプロジェクトでは「デジタル・プロダクト・パスポート」の概念が実証された。これにより、材料の由来やライフサイクルデータを記録・管理し、材料の適切な選定や偽造品の排除を可能にすることが期待される。

DRDTの戦略・潜水艦リサイクル担当シニアコマーシャルマネージャーであるトーマス・パウエル氏は、本技術について、貴重な戦略金属の調達コストや負担を軽減するだけでなく、従来の鍛造技術と比較して、より軽量で耐久性の高い部品を製造できる点を評価した。これにより、MODの持続可能性と運用効率の向上が期待される。DRDTの商業系研修生やロールス・ロイスの研修生を含む80人以上が参加し、現行技術と革新技術を融合させることで、将来の防衛能力の維持・発展に貢献した。

持続可能な防衛サプライチェーンの構築と循環経済の実現

FCASのサステナビリティ要件マネージャーであるロブ少佐は、Tornado 2 Tempestのような革新的な技術プロジェクトは、RAFの供給チェーンへの依存を低減し、長期的な作戦継続を可能にすると指摘した。さらに、これにより排出量と廃棄物が削減されるという付加的なメリットも得られる。今後、FCASのライフサイクル全体を通じて、戦略的材料の確保が一層困難になることが予測される。世界的なサプライチェーンの混乱と競争の激化が続く中、既存の資源を最大限に活用することが求められる。

MODの国防物流・支援部門の責任者(CDLS)は、Tornado 2 Tempestプロジェクトが前線支援の改善に貢献したことを評価し、ロールス・ロイスにCDLS Commendation(表彰)を授与した。

AMSのディレクターであるロバート・ハイアム氏は、AMSのモットーである「持続可能な未来のための革新的ソリューション」を本プロジェクトで具体化できたことに感謝の意を示した。MODおよびロールス・ロイスと協力し、国防分野における循環経済のプロセスと部品供給の新たな可能性を実証できたことを誇りに思うと述べた。

本プロジェクトは、持続可能な製造プロセスの実証にとどまらず、デジタル技術を活用したリサイクルの新たな可能性を示す重要な一歩となった。

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国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

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