會澤高圧コンクリート株式会社がコンクリートワインタンクの開発と実証実験を開始
會澤高圧コンクリートはワイン醸造用コンクリートタンク開発プロジェクト「よっつめのテロワール」を開始した。2022年9月からは、コンクリートタンクの効果に関する実証実験もスタートしている。3Dプリンター住宅などで大きく注目を集めるコンクリート材料を使った3Dプリンターの可能性は建築物以外にも広がっている。
目次
コンクリート材料の3Dプリンターを活用したワイン醸造
ワイン醸造用タンクをステンレスから、コンクリートに置き換えようという動きが現れている。この活動を推進するのは、會澤高圧コンクリートと北海道のぶどう農家、及び醸造家らだ。
なぜステンレスではなく、コンクリートなのか?プロジェクトに携わる醸造家は次の3つの利点を挙げた。
- 多孔質であるコンクリートは酸素を透過し、緩やかな発酵を促す。
- ステンレスに比べて熱伝導性が低く、外気温の影響を受けにくい。
- 容器素材の香りがワインに移ることがない。
ステンレス容器にはない上記の特性は、ワイン作りを大きく変える可能性を秘めている。ワインの個性を生み出す3つの要素である「気候」 「土壌」 「地形」をテロワールと呼ぶが、コンクリートタンクは「第4のテロワール」になり得るかもしれない。
會澤高圧コンクリートらが進めるコンクリートワインタンク開発普及プロジェクト「よっつめのテロワール」には、このような願いが込められている。
ブランドの個性を表現する唯一無二のタンクを3Dプリンターで造形
コンクリートは、その組成によって、酸素透過性や熱伝導性を制御することができる。會澤高圧コンクリートが目指すのは、醸造家それぞれのワインに対する願いや、ぶどうの個性を引き出すことだ。
また、ワインタンクは3Dプリント技術によって作られ、その形状をも自在に変化させることができ、唯一無二のワインタンクを作り出すことができる。多くはワインの対流を生み出す卵型が人気だが、醸造家の好みを反映した個性的な造形も可能だ。
會澤高圧コンクリートの蓄積してきたコンクリート組成や造形についての知見は、ワイン醸造で存分に発揮されることになるだろう。
科学的アプローチによる比較実験ーコンクリート組成をデザインすることでワインの風味も味付けできる可能性
醸造家からは一定の評価を受けているコンクリートワインタンクだが、9月からは、科学的アプローチによる効果実証実験もスタートした。
本実験では、色々な条件を変えながら、ワインの成分(ミネラル、pH、溶存酸素量など)が時間経過と共に変化していく様子をステンレスのタンクと比較する。
この実験でワインの味とコンクリートの組成に相関が見つかれば、科学的データを元に作りたいワインに近づくことが可能となるだろう。
會澤高圧コンクリートは、建築業界で培われたコンクリートに関する知見を様々な分野に応用し、コンクリートの可能性を切り開いてきた。同社に関する過去の取り組みについては、以下の記事もご参照頂きたい。
日本初!宿泊施設をコンクリート3Dプリンターで造形ー會澤高圧コンクリート株式会社
また、開発を担う鵡川工場生産科学本部の担当者は「これまでは試飲などによる主観的な評価や簡単な分析しかできなかった。コンクリートタンクへの科学的で客観的な実験結果を得たい」と語り、将来的には年5台程度の出荷を目指すとしている。
コンクリート材料の3Dプリンティング活用はまだ始まったばかり
今回のワインの発酵タンクのように、コンクリート材料をつかった3Dプリンター活用は、発想次第で新しい市場創出のために活用できる。 3Dプリンター住宅などで大きく注目を集めるコンクリート材料を使った3Dプリンターの可能性は建築物以外にも広がっている。 まずは先行する住宅建築用の3Dプリンターの活用事例を見ながら、新しい用途開発にも思いを巡らせてみてほしい。
住宅事例(https://news.sharelab.jp/cases/construction/3dprinting-house-japan-220713/)
ホテル事例(https://news.sharelab.jp/cases/apparel/furniture_220511/)
橋事例(https://news.sharelab.jp/cases/construction/bride-stainless-210906/)
土木事例(https://news.sharelab.jp/cases/construction/ict-construction/)
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