持続可能な未来住宅!豪州初の多層3Dプリント住宅が完成 ― Contec Australia

2025年9月4日
Contecのウェブサイトより。

西オーストラリア州タッピングにおいて、豪州初となる複層住宅が3Dコンクリートプリント技術によって完成した。本プロジェクトを主導したのは、Contec Australia(オーストラリア・西オーストラリア州)である。従来のレンガ造や型枠工法に依存しない新しい建設手法は、持続可能な社会に資するだけでなく、住宅供給の迅速化やコスト削減といった社会的課題の解決に直結する成果である。

この住宅は、着工から完成までわずか5か月で引き渡しに至った。特筆すべきは構造壁の施工で、3Dコンクリートプリンターを用いることで、わずか18時間という短時間で全ての壁面を成形した点である。(上部画像はContec Australiaのウェブサイトより。出典:Contec Australia)

3Dプリント住宅の革新性

今回採用された技術は、いわゆる「インシチュ型3Dコンクリートプリント(現場施工型の3Dプリント工法)」である。現場に設置した大型3Dプリンターが、専用の高強度コンクリートを積層することで壁を形成する。従来のレンガ積みと比較して、構造壁コストを約22%削減でき、強度はレンガの約3倍となる50MPaを実現した。

さらに、施工の効率性だけでなく、耐久性能や環境適応性においても従来工法を凌駕する。耐火性・耐水性に優れ、シロアリ被害を受けない構造を実現。加えて、サイクロンに耐え得る堅牢さを備え、気候変動リスクの高まるオーストラリアにおいて極めて有用な住宅形式である。

また、壁材の熱性能と音響性能も高く、省エネ性能や居住快適性の面でも大きな強みを持つ。環境負荷の低減と住環境の向上を両立する点で、持続可能な都市づくりにおける理想的なモデルといえる。

工期短縮がもたらす社会的価値

建設業界において工期の短縮は、単なる効率化以上の意味を持つ。労働力不足が深刻化する現状において、少人数で迅速に住宅を建設できる技術は、慢性的な人手不足を補う有力な解決策となる。さらに、災害復興や急速な人口増加に伴う住宅需要への即応力を持つ点でも、社会的な意義は大きい。

今回の西オーストラリア州タッピングの住宅の事例では、5か月という短期間で土地整備から完成引き渡しまでを完了した。従来工法であれば一年以上かかる場合も少なくないことを考えると、3Dプリント建設の可能性を強く印象づける成果である。

コスト削減と住宅供給の加速

構造壁において22%のコスト削減が実現したことは、住宅購入者や社会にとっても大きな利点である。建材費や人件費の高騰が続く中、安価かつ迅速に住宅を供給できる技術は、住宅市場に新たな選択肢を提供する。特に西オーストラリア州では人口増加が続き、住宅不足が社会問題化しているが、この技術はそうした課題解決に直結する。

また、建築廃材の削減効果も見逃せない。3Dプリントは必要な量の材料を精密に積層するため、廃棄物の発生を最小限に抑えることができる。環境負荷を軽減しつつコスト削減を実現する点は、持続可能な建設技術としての大きな優位性である。

建設業界における新たなスタンダードへ

今回のプロジェクトは単なる実証ではなく、商用ベースでの実現という点に意義がある。Contec Australiaは、パースおよび西オーストラリア州全域で3Dコンクリートプリントによる住宅建設を展開可能であると発表している。今後、同社が提供するソリューションは、より多くの住宅供給プロジェクトに適用されていくことが期待される。

オーストラリアは災害リスク、住宅不足、環境負荷といった複合的な課題に直面しており、それらを同時に解決し得る建設技術の導入は社会的にも極めて大きな意味を持つだろう。

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