環境負荷低減に貢献する建設物の製造実験を開始 ― 金沢工業大学
金沢工業大学(石川県野々市)は、3Dプリンターで造形した部材に、CO₂を強制的に吸収させるための「炭酸化養生装置」を設置し、環境負荷低減に貢献する建設物の製造実験を開始した。実験は金沢工業大学やつかほリサーチキャンパス内の「KIT×KAJIMA 3D Printing Lab」で行われている。
これまで、金沢工業大学は鹿島建設株式会社(東京都港区)と共同で、建設分野向けのセメント系3Dプリントに使用する材料に、環境配慮型のCO₂吸収コンクリート「CO₂-SUICOM」の技術を取り入れる「カーボンネガティブ3Dプリンティング」に関する研究開発を進めていた。(上部画像は金沢工業大学のロボットアーム式3Dプリンター。出典:金沢工業大学)
共同研究が目指すもの
建築現場で3Dプリンターを用いる事例は世界的に増加していて、3Dプリンターの導入により生産性の向上やコストの削減ができる点には、大きな注目が集まっている。
そのような状況の中、金沢工業大学と鹿島建設が共同研究で3Dプリンターの導入促進とともに目指しているのは、3Dプリントと環境配慮型コンクリート「CO₂-SUICOM」の組み合わせによるカーボンニュートラル社会の実現に貢献する施工技術の実装だ。
「CO₂-SUICOM」は、鹿島建設と中国電力株式会社、デンカ株式会社の3社によって開発されたもので、その製造過程で大量のCO₂を強制的に吸収・固定化させる。コンクリート製造におけるトータルのCO₂排出量をゼロ以下にできる世界で唯一のコンクリートだ。
CO₂に対して排出量を上回る除去や吸収を目指すものをカーボンネガティブといい、カーボンニュートラルと同様に環境に配慮した概念として注目されている。金沢工業大学では「KIT×KAJIMA 3D Printing Lab」内に2022年4月からロボットアーム式3Dプリンターを設置し、3Dプリンティングに適した「CO₂-SUICOM」の配合や、3Dプリンターの制御方法等について研究を重ねてきた。
コンクリートは打設後に、所定の品質を得るために一定期間保護する「養生」という工程を経る。今回開始された実験は、養生期間中にコンクリートに強制的にCO₂を吸収させる「炭酸化養生」の装置内に造形物を設置することで行うものだ。「CO₂-SUICOM」と3Dプリンターを組み合わせてカーボンネガティブを目指す実験の第二段階といえるだろう。
今後について
金沢工業大学と鹿島建設は、3Dプリンティングを建設分野に普及展開するためには、3Dプリンターによって製作したものを公共の場に設置し、広く認知してもらう必要があると考えている。
今回の実験では最適な養生条件や養生日数などについて検討を行い、2023年度中にはカーボンネガティブ3Dプリンティングによる製作物を北陸地方の自治体の公共の場に設置することが目標であると発表した。
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