セレンディクス、3Dプリンター住宅のデザインコンペ初開催 ─ 令和版「ハウス55計画」で“車の価格”の50㎡住宅を募集

2025年12月4日
〈参考〉ウクライナでの復興住宅デザインイメージ 提供・出典:CLOUDS Architecture Office、セレンディクス
〈参考〉ウクライナでの復興住宅デザインイメージ 提供・出典:CLOUDS Architecture Office、セレンディクス

3Dプリンターを用いた住宅の開発と販売を行うセレンディクス株式会社(以下、セレンディクス)は、同社初となる建築デザインコンペティション「令和版ハウス55開発プロジェクト」を開催している。応募の受付は、建築系マッチングプラットフォーム「スタジオアンビルト」上で、2025年12月14日(日)23:59までとなっている。

住宅市場の逼迫と過去の国家プロジェクトの再評価

日本の住宅事情は現在、深刻な問題を抱えている。住宅金融支援機構の調査によれば、住宅ローンの借入時の平均年齢は44.5歳に達し、完済時には70代後半となる例も増加している。また、新築マンションの年収倍率は全国平均で10.09倍(東京は17.78倍)と、過去最高値を記録している(2024年10月・株式会社東京カンテイ調べ)。

このような住宅を巡る厳しい状況において、再び注目されているのが約半世紀前の国家プロジェクト「ハウス55計画」である。この計画は、1980年(昭和55年)を目標年とし、100平米の住宅を500万円台で供給することを目指して国(旧建設省・通産省)が主導したものだ。一定の成果を収めたものの、物価高騰などの外的要因により「大量供給」の目標は達成されなかった。

現在、同様の「住宅危機」に直面する中、セレンディクスはこのプロジェクトの精神を現代に再解釈し、3Dプリンターという革新的技術を用いてその再現を図ろうとしている。

コンペの概要

  • テーマ:令和版ハウス55開発プロジェクト
  • 応募締切:2025年12月14日(日)23:59
  • 賞金
    1等:114,000円
    2等:8,000円
    3等:5,000円

なお、最優秀作品は実際の3Dプリンター住宅として建設される予定であり、採用後は別途設計契約を締結する。記載の賞金はコンペティション賞金であり、契約金額は別途協議される。

募集要項

本コンペでは、以下の条件を満たす3Dプリンター住宅のデザイン提案を募集している。

  • 延床面積50㎡程度
  • 「車を買う価格」で安定供給可能な住宅設計
  • 夫婦2人世帯向けの平屋住宅
  • コンクリート3Dプリンターによる屋根まで一体成型が可能な構造
  • 日本的な美意識に基づいた「そぎ落とした美しさ」を持つミニマルなデザイン

提出物の要件

  • コンセプト文、意匠図、平面図・立面図(縮尺自由)
  • スケッチ・パース・模型写真などのイメージ資料
  • 提出形式:A3サイズ、JPG / PNG / GIF(PDF添付も可)
  • 詳細は公式応募ページにて確認可能
出力されたパーツ(出典:セレンディクス)
出力されたパーツ(出典:セレンディクス)
屋根含む一体成形のイメージ(出典:セレンディクス)
屋根含む一体成形のイメージ(出典:セレンディクス)
3Dプリンターでの出力(出典:セレンディクス)
3Dプリンターでの出力(出典:セレンディクス)

飯田國大Co-founderのコメント

セレンディクスは2022年に日本初の3Dプリンター住宅を完成させて以来、2024年には能登半島で2人世帯向けの「serendix50」を建設、2025年にはJR駅舎の建設を手掛けるなど、3Dプリンター建築の実用化を着実に進めてまいりました。


3Dプリンター住宅は、構造強度、耐火性、耐水性、断熱性の4つの機能面ですでに優位性を持っています。今回のコンペでは、5つ目の要素として『美しさ』の実現を目指します。約50年前の国家プロジェクト『ハウス55』の理念を受け継ぎ、車を買う価格で住宅を購入できる新しい未来の自由な社会の実現に向けて、皆様からの革新的なデザイン提案をお待ちしております。

シェアラボ編集部コメント

3Dプリンター住宅という未来の住まい方が、単なる実験段階から実用・普及フェーズへと進化していることを象徴する動きだ。セレンディクスが打ち出す「令和版ハウス55計画」は、50年前の国家プロジェクトの理念を、現代のテクノロジーで再構築しようとする試みであり、住宅の常識を塗り替える可能性を秘めている。

注目すべきは、コンペの目的が単なるデザイン提案にとどまらず、**「車を買う価格で住宅を手に入れる」**という新しい社会ビジョンの実現を掲げている点だ。デジタルファブリケーションと建築設計が融合するこの分野において、日本発の革新的なモデルケースとなるか、今後の展開が期待される。

若手建築家や設計者にとっては、自らのアイデアが実際に建築される貴重なチャンスでもある。未来の住宅像を描くこのチャレンジに、どのような作品が集まるのか、引き続き注視していきたい。

用語解説

■ 3Dプリンター住宅
建築用3Dプリンターを使って住宅を造形する技術。型枠や大量の職人を必要とせず、材料(主にコンクリート)を積層して壁や構造を自動的に構築する。工期の短縮やコスト削減、省人化が期待される。
■ ハウス55計画
昭和55年(1980年)を目標に、100㎡の住宅を500万円台で提供することを目指した国の住宅政策プロジェクト。建設省と通産省が主導し、工業化住宅の普及を図ったが、物価上昇などにより大量供給は困難だった。
■ 令和版ハウス55計画
セレンディクスが提唱する現代版の住宅供給構想。3Dプリンター技術を活用し、50㎡の住宅を「車を買う価格」で実現することを目指す。かつての国家プロジェクトの理念を、テクノロジーと民間主導で復活させる試み。
■ 一体成型
壁・屋根・床などを一度に連続して出力する構造方式。接合部が少なくなるため、防水性・断熱性・構造強度の向上につながる。3Dプリンターでの施工により、これまでにない自由な形状設計と短工期化が可能。
■ スタジオアンビルト
建築家と依頼主をつなぐオンラインの設計マッチングサービス。コンペ形式でアイデアを公募したり、建築設計の外注依頼を出すことができる。今回のコンペも同サイト上で実施されている。
■ 意匠図・平面図・立面図
建築設計に必要な図面類のこと。意匠図は建築全体のデザインイメージ、平面図は真上から見た間取り、立面図は側面から見た外観を示す。デザインコンペではプレゼンテーションの核となる資料。
■ そぎ落とした美学
日本の伝統美意識を反映した「無駄を削ぎ落とした」シンプルで静謐なデザイン思想。素材感や光の取り込み方に重点を置く。ミニマルデザインや禅的美意識とも関連し、世界の建築界でも高評価を得ている。

建設業界の関連記事

今回のニュースに関連するものとして、これまでShareLab NEWSが発表してきた記事の中からピックアップして紹介する。ぜひあわせてご覧いただきたい。

記事検索

1995の記事から探す

最新記事

編集部のおススメ記事