Eplus3Dが歯科用金属3Dプリンター「EP-M150」の活用事例を公開
ドイツに本社を置く金属3DプリンターメーカーのEplus3D社が、歯科業界における歯科用金属3Dプリンター「EP-M150」の活用事例を公開した。日本では導入があまり進んでいないものの、海外のデンタル業界では3Dプリンターが積極的に導入されている(画像は歯科用3Dプリンター「EP-M150」/出典:Eplus3D社)。
>>歯科業界における EP-M150 金属 3D プリンターによるハイブリッド製造(Eplus3D)
目次
3Dプリンティング技術の浸透が始まっている日本のデンタル業界
日本における入れ歯・歯の被せ物・歯の詰め物・矯正装置などの歯科用器具の製造は、依然として歯科技工士が手作業で作成していることがほとんどだ。多くの工程があるためエラーが発生しやすく、さらには「時間と手間がかかる」「コストが高くなる」という課題がある。また、歯科技工業界全体として、人手不足で1人あたりの業務量が多く、後進の育成も進みにくいといった課題もある。
そのため、日本においてもデンタル業界で3Dプリンターの導入に関心が寄せられているが、医療認証を得た金属3Dプリンターを導入している日本国内の歯科技工所は、2022年11月時点では2社のみだった。
ShareLab NEWSでは、上記2社のうちの1社、倉繁歯科技工所にインタビューを行っている。日本のデンタル業界における3Dプリンター活用に興味のある方は、以下の記事もぜひご覧いただきたい。
またその他の動きとして、国内では歯科矯正分野での業界団体「一般社団法人日本3Dプリンティング矯正歯科学会」も発足しており、23年7月には学術大会が開催される。スイス Smile AGのSimon Graf氏や、国立台湾大学醫学院付設醫院 矯正歯科 Kelvin Wen Chung Chang氏が講演予定。 教育講演では弁理士の赤塚氏が「3Dプリンティング技術に関する知的財産の保護 」で3Dプリンティング技術の権利保護についてご講演する。
3Dスキャナーで患者の歯や歯茎の情報をデジタルデータ化
歯科用の金属3Dプリンターを導入しても、歯科技工士が不要になるわけではない。海外のデンタル業界では、歯科技工士の仕事の効率化と生産性向上のために3Dプリンターが積極的に導入されている。Eplus3D社が発表した資料によれば、ほとんどの歯科技工所で最新設備の3Dスキャナーが利用されているようだ。
海外では3Dスキャンによる患者の歯や歯茎の情報をデジタルデータ化し、作成されたスキャンモデルをもとに、歯科技工士が専用のデンタルCADソフトでパーツを設計する。その後、3Dプリントしたあとの仕上げ加工を行うというプロセスが取られているとのこと。日本では、「歯科用アルギン酸塩印象材」と呼ばれるピンク色の粘土のようなものでアナログに歯の型を取る手法が多くとられている。
金属3Dプリンターは機械自体が数千万円ほどする高価なものだ。導入するとなると周辺機器やスペースも確保しなければならない。そして、日本では3Dプリンター製の歯科用器具は保険の適用外となっている点でも導入の壁がある。この問題が早急にクリアされることを期待したい。
3D プリントとフライス加工を組み合わせたハイブリット製造
Eplus3D社が発表した資料では、ドイツのオスナブリュックに本拠を置く歯科技工所「FIP Zahnkunst GmbH」の金属プリンター活用事例が詳細に掲載されている。歯形のスキャンからSTL形式の3Dファイルへの変換、3D造形、フライス加工、熱処理や切削などの後処理など、多数の工程の中で3Dプリンティング技術を上手く組み込んでいる。その結果、設計後のワークフロー全体には、約 10 分の作業と計算作業が含まれが、数回のマウスクリックだけでワークフローを完結できるほどに自動化がなされている。
そして、3Dプリントとフライス加工を組み合わせることで、使用する材料量を最低限まで抑え込みつつ、ユーザーに最適な製品を提供できるようになり、コスト面でもフライス加工のみの場合に比べて、最大 90% 削減できたとのこと。
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