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冷却可能な3Dプリント容器で蚊が媒介する病気の蔓延を抑制

冷却可能な3Dプリントキャニスター

蚊が媒介する黄熱病やデング熱、ジカ熱などの蔓延を抑制するツールとして、冷却可能な3Dプリント容器をオーストリアのウィーンにあるFAO/IAEA(国際原子力機関)共同食品・農業核技術センターの害虫防除研究所が開発した。FAOは国際連合食糧農業機関、IAEAは国際原子力機関の略称。(上部画像は冷却可能な3Dプリントキャニスター。出典:FAO/IAEA(国際原子力機関)共同食品・農業核技術センター)

世界中に広がるネッタイシマカ

黄熱病やデング熱、ジカ熱などの病気を媒介するネッタイシマカは、起源はアフリカにあるものの、現在の地球温暖化などの影響で世界中の熱帯、亜熱帯、温帯地域で見られるようになった。

その範囲は拡大し続け世界的な感染の危機となっている。効果的なワクチンがない場合に、感染を減らす最も効果的な方法の1つは、病気を媒介する蚊の個体数を減らすことだ。しかし、長年の農薬散布などの影響で、農薬や化学物質に耐性を持つ蚊が少なくない状況にある。

黄熱病を媒介する蚊の活動範囲
黄熱病を媒介する蚊の活動範囲(出典:国際感染症ジャーナル)

そこで、注目されているのが無菌昆虫技術と呼ばれるもので、今回開発された冷却可能な3Dプリント容器もそれをサポートするものとなっている。

蚊における無菌昆虫技術では、オスの蚊の生殖機能を弱らせ、不妊化し、メスと交尾しても卵を生ませないことでその総数を減らすことを指す。この際、オスの蚊を不妊化することを滅菌という。冷却可能な3Dプリント容器は、それ自体が滅菌を行うものではなく、冷却により蚊を動けない状態で留めるものだ。滅菌は、動けなくなった蚊に放射線を照射することで行われる。

容器は約10万匹もの成虫を圧縮し、動けなくして保持できる。薬品を用いないため、環境破壊を伴わない点と、一度に大量の蚊に対して滅菌が可能な点にメリットがある。

3Dプリント容器の製作

冷却可能な3Dプリント容器は、生分解性プラスチックのPLA素材に、UltiMaker社のFDM方式3Dプリンター「S3」で製作された。3Dプリンターが採用された大きな理由は、コスト面に優れているからだ。また、3Dプリンターは近年急速に世界的に普及しつつあるため、必要な国でこの技術が採用できる点も評価された。

冷却可能な容器の製作に用いられた3Dプリンター「S3」
冷却可能な容器の製作に用いられた3Dプリンター「S3」(出典:Ultimaker社)

今回開発された3Dプリント容器は、蚊の増加、滅菌、放出を効率的に管理するツールとして使用でき、最終的には黄熱病やデング熱などの病気の蔓延を防ぐのに役立つと考えられている。今後の研究開発にも期待したい。

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今回のニュースに関連するものとして、これまでShareLab NEWSが発表してきた記事の中から3つピックアップして紹介する。ぜひあわせてご覧いただきたい。

国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

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