株式会社ハイパーブレイン(愛知県名古屋市、以下、ハイパーブレイン)は、文部科学省が推進する「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」の枠組みのもと、愛知県立大府東高等学校および至学館大学と連携し、高校生を対象とした探究型教育プログラムを企画・技術の両面から支援した。本プログラムは、ドローン、フォトグラメトリ、3Dモデリング、3Dプリントといったデジタル技術を段階的に体験することで、データ取得から立体出力までの一連のものづくりプロセスを学ぶ構成となっている。実施期間は2025年8月から12月までであり、高校・大学・企業が役割を分担しながら取り組んだ。
目次
ドローン撮影とフォトグラメトリによる地層の3D化
フィールドワークは、愛知県南知多町に位置する師崎層群の海岸地形で行われた。ここでは、地層が露出した自然環境を対象に、ドローンを用いた空撮を実施した。取得した画像データについては、ハイパーブレインがフォトグラメトリ技術を用いた3Dモデル化を支援し、地層の形状や質感を高精度に再現した。生徒たちは、自然物をデジタルデータとして扱うプロセスを通じて、空間構造への理解を深めた。


大学生が講師を務めるBlender基礎講習
3Dモデリングソフト「Blender」を用いた基礎講習では、至学館大学の学生が講師役を担当した。高校生にとっては年齢の近い先輩から学ぶ形式となり、質問や意見交換が活発に行われた。ハイパーブレインのスタッフは全体の運営および技術面でのサポートを担い、受講生は3Dデザインの基本操作や空間把握の考え方を実践的に学習した。

フォトグラメトリ講習による実践的データ編集
企業連携の一環として、ハイパーブレイン講師によるフォトグラメトリ講習も実施された。師崎層群の地層データに加え、大府東高等学校の校舎を対象に3Dモデルを生成し、Blenderを用いた編集作業を行った。不要部分の切り出しやノイズ除去といった工程を通じて、3Dデータを「使える形」に整える実践的な作業を体験したほか、文化財保存、建築、測量分野などにおける社会的な活用事例についても理解を深めた。
法規と安全を重視したドローン操作講習
ドローン講習では、航空法をはじめとする関連法規や安全管理の考え方を学んだうえで、実機操作を体験した。単なる操縦体験にとどまらず、安全に運用するための基礎知識と判断力の重要性が強調された。


デジタルデータから実体へ!探究型学習としての3Dものづくり体験
フォトグラメトリによって作成した3Dモデルデータは、3Dプリンターを用いて実際に立体物として出力された。高校生は、画面上のデジタルデータが物理的な形状へと変換される工程を体験し、デジタルものづくりの全体像を実感した。大府東高等学校では、本事業を探究型学習の一環として位置づけ、「創造力」や「挑戦する姿勢」の育成を重視した。ドローン、3Dモデリング、3Dプリントといった技術に段階的に触れることで、生徒が主体的に学ぶ姿勢を育むことを目的としている。
高校・大学連携による次世代人材育成に向けた継続的な取り組み
ハイパーブレインは今後も高校・大学との連携を通じて、次世代を担う若者が先端技術に触れる機会を継続的に創出していく方針である。ドローンや3Dプリンターといった実社会で活用が進む技術との出会いを通じ、自ら考え、形にする力を育む支援を続けていく。
シェアラボ編集部コメント
ドローン、フォトグラメトリ、3Dモデリング、3Dプリントを一連の流れとして体験できる点が、本事業の大きな特徴である。データ取得から出力までを実践的に学ぶ構成は、3D技術を「使える知識」として理解するうえで有効だ。高校・大学・企業が役割を分担するモデルは、今後のDX教育の一つの参考例といえる。
用語解説
| ■ フォトグラメトリ 複数方向から撮影した写真データを解析し、対象物の形状や寸法を三次元データとして再構成する技術。ドローンと組み合わせることで、地形や建築物、文化財などを非接触で高精度に3D化できる。 |
| ■ Blender(ブレンダー) オープンソースで提供されている3Dモデリングソフト。3Dモデル作成、編集、3Dプリント用データ出力まで対応し、教育現場から製造業まで幅広く利用されている。 |
| ■ ドローン 無人航空機の総称。空撮、測量、点検、防災など多用途で活用されており、本事業では地層や校舎の撮影による3Dデータ取得手段として使用された。 |
| ■ 3Dモデリング 立体物をコンピュータ上で三次元データとして作成・編集する工程。フォトグラメトリで生成したデータの修正や、3Dプリントに適した形状設計に用いられる。 |
| ■ 3Dプリンター 3Dモデルデータをもとに、樹脂などの材料を積層して立体物を造形する装置。試作や教育用途をはじめ、製造業や医療分野でも活用が進んでいる。 |
| ■ 探究型学習 生徒自身が課題を設定し、調査・実践・振り返りを通じて理解を深める学習手法。主体性や思考力の育成を重視し、DX教育とも親和性が高い。 |
| ■ DXハイスクール事業(高等学校DX加速化推進事業) 文部科学省が推進する事業で、高校教育におけるデジタル技術活用と人材育成の強化を目的とする。ドローンや3D技術などの先端分野を教育に取り入れる取り組みが進められている。 |
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