都市型マイクロファクトリー「錦町三丁目工場」誕生!3Dプリントで少量多品種生産を実現 ― デジタルファブリケーション協会

2025年9月17日
株式会社デジタルファブリケーション協会のプレスリリースより。

東京都千代田区のビル街に、新しいものづくりの拠点「錦町三丁目工場」が誕生した。ファブラボ神田錦町(東京都千代田区、運営元:株式会社デジタルファブリケーション協会)とデザイニト株式会社(東京都千代田区、以下、デザイニト)が共同で設立したこの都市型マイクロファクトリーは、3Dプリント技術を中心に据え、少量多品種の生産体制を整備。従来型の大量生産とは異なる、新しい製造の姿を提示している。(上部画像はデジタルファブリケーション協会のプレスリリースより。出典:デジタルファブリケーション協会)

都市に根差す“小さな工場”

錦町三丁目工場は、金型を用いた従来の製造方式に依存せず、柔軟でカスタマイズ性の高い製品を生み出す仕組みを備えている。少量生産を前提とした工場は、個人のクリエイターや中小規模の企業にとっても使いやすい存在であり、従来の製造業が抱えてきた「大量生産の壁」を超える挑戦の場となっている。

加えて、環境への配慮も大きな特徴である。同工場では独自に開発した廃プラスチックの再利用プログラムを導入。不要になったプラスチック素材を新たな製品に再生させることで、廃棄物削減と資源の循環利用を推進している。これにより、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを製造の現場から発信している。

デザインと製造をシームレスに統合

錦町三丁目工場のもう一つの強みは、デザイン事務所、ファブラボ、製造拠点を一体化した運営体制である。これにより、アイデアの構想段階から試作、そして量産に至るまでのプロセスをスムーズに繋げることが可能となった。従来は時間とコストを要した試作工程を短縮し、迅速な製品化を実現している。

市場の変化に即応できる柔軟性は、今後のものづくりにおいて重要な競争力となるだろう。特に都市部に立地することで、デザイナーやクリエイターが気軽にアクセスできる環境が整っており、都市生活者の新しい需要に即応できる仕組みとして注目される。

伝統工芸との連携

自社工場での製造に加え、外部工場との協働にも積極的に取り組んでいる。長崎県波佐見町の磁器メーカーと連携したプロジェクトでは、ファブラボ神田錦町が企画やプロトタイピングを担い、伝統的な波佐見焼に新しい要素を取り入れた商品開発を進めている。

このように、地域の工芸やものづくり文化と結びつくことで、都市型工場が地方産業と共存・共創する道を切り開いている。

オリジナル商品の展開

錦町三丁目工場は、自社ブランドのプロダクト開発も行っている。第一弾として発表されたのが「Pleats Series(プリーツシリーズ)」と「Moire Series(モアレシリーズ)」である。これらは同工場が持つ技術力とデザイン力を融合させた象徴的な製品であり、現代的な美しさと実用性を併せ持っている。

左:「Pleats Series(プリーツシリーズ) 」 右:「Moire Series(モアレシリーズ)」出典:株式会社デジタルファブリケーション協会
左:「Pleats Series(プリーツシリーズ) 」 右:「Moire Series(モアレシリーズ)」(出典:株式会社デジタルファブリケーション協会)

さらに、粉末焼結方式の3Dプリント技術を用いて制作された「終わらない花 バラ」も注目を集めている。本物さながらの質感と色彩を再現し、時間が経過しても色褪せない特性を持つこの製品は、インテリアやギフトとしての利用価値が高い。

終わらない花 バラ。出典:株式会社デジタルファブリケーション協会
終わらない花 バラ。(出典:株式会社デジタルファブリケーション協会)

今後の展望

錦町三丁目工場は今後、製品ラインナップを拡充するとともに、受注生産やロット販売といった事業も展開する計画である。企業や自治体からの依頼に応じたオリジナルデザインの提供も可能であり、特定のニーズに合わせた柔軟な対応力を備えている。

さらに、ファブラボの理念である「自由な創造を支える場」を実現する拠点として、多様な人々が集い、新しいアイデアを形にして発信していくことを目指している。

背景にある2つの組織

デザイニト株式会社は2010年設立のデザイン事務所で、製品デザインやブランディング、商品企画などを幅広く手掛けてきた。「売れるものをつくる」「他にはないものを形にする」を理念に掲げ、徹底したリサーチと現場理解を基盤に世界市場に適応する製品を開発している。

一方、ファブラボ神田錦町は世界的に広がるファブラボネットワークの一拠点として2012年に活動を開始。3Dプリンターやレーザーカッターといったデジタル工作機器を活用し、誰もがアイデアを迅速に形にできる環境を提供している。

都市型製造の未来像

「錦町三丁目工場」は、都市の中に息づく新しい工場のモデルケースといえる。環境に配慮しつつ、デザインと製造を直結させる体制を整え、さらに伝統工芸とも協働する姿勢は、従来の製造業に新しい視座を与えるものだ。大量生産から多様性重視のものづくりへと転換が進む中で、この工場の取り組みは都市型製造の未来像を示す試みとして注目される。

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