『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』製作過程で3Dプリント技術を活用
NETFLIXにて2022年11月から公開された『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』の製作過程に関するインタビューがBefore&After誌に掲載された。ピノッキオの精緻な表情を作り上げるために3Dプリンターが活用されたことが語られている。(画像出典:Guillermo Del Toro’s Pinocchio – Credit: Jason Schmidt/NETFLIX © 2022)
人形の表情の演技にこだわった映画製作
『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』は、 1883年にイタリアで出版された児童文学『ピノッキオ※』をリメイクしたアニメーション映画だ。
同作の特徴は、「ストップモーション・アニメーション」で製作されていることである。
ストップモーション・アニメーションとは、人形を使ったコマ撮り映画を指す。人形を少しずつ動かしながら1コマごとに写真を撮り、それらをつなげて映像とする。CGを使った方が制作コストは抑えられるわけだが、モーションストップアニメにはCGにはない「存在感」と「ぬくもり」があり、近年モーションストップアニメによる映像作品も増えてきている。
※ゼペットおじいさんの作った木彫りの人形ピノッキオが意志を持って動き出し、幾多の冒険の末に人間となるストーリー。嘘をつき、すぐに美味しい話に騙されるピノッキオの姿から、誠実さや勤勉さの重要性を説く。
1940年にはディズニーがアニメーション映画を製作し、日本でも広く知られるようになった。
本映画の製作過程に関して、Before&After誌が、キャラクター製作ディレクターであるGeorgina Haynsにインタビューした記事が公開された(インタビュー記事はこちら)。
本記事では人形の製作過程から、撮影、視覚効果などさまざまな内容が語られている。その中でもデル・トロ監督は特に人形の表情の演技に拘って映画を撮っていたことが分かった。
例えばゼペットの頭部は機械仕掛けで目や唇やひげを前後左右に動かせるようにできている。ゼペットの豊かな表情は人形製作におけるメカニクスの賜物だ。
一方、ピノッキオの頭部は機械仕掛けではない。そもそも本作におけるピノッキオの顔は人と根本的に異なる構造を持つ。
ピノッキオには唇がなく、目は単なる空洞だ。唇の動きや眼球の動きで演技することはできず、空洞の大きさで表情を作り出す。
よって、本作のピノッキオの表情は何千もの「お面」をコマごとに付け替えることで実現された。このお面の製作に3Dプリンターが活用されている。
3DプリントやCGの技術を組み合わせ、豊かな表情を表現
ピノッキオの人形製作にあたっては、最初にデザインの下敷きとなる手作りの模型を作り、それを3Dスキャンした。その後コンピュータ上で、ある程度完成されたCGアニメを作り、必要となる表情を3Dプリント会社に発注する。
何千というお面を手作業で、正確に作り上げることは恐らく不可能だが、3Dプリント技術を駆使することで多様な表情の表現が可能となった。
ピノッキオの頭部のお面は樹脂3Dプリントによって作られたが、ボディは金属3Dプリントで作られている。こちらはさまざまな動きに対応でき、長い撮影に耐えられる堅牢さに貢献した。
人形の様々なパーツに3Dプリント技術が活用されているが、前述したメカニクスや、ボディの装飾には手作業で作られた部分も多い。ピノッキオは、メカニクス、CG、3Dプリンターなど、新旧さまざまな技術が組み合わされて完成した作品と言えるだろう。
関連記事
ShareLab NEWSでは、3Dプリント技術で「ペットのフィギュア」「アクセサリ」「独自の色彩表現」などを生み出した事例を記事にまとめている。以下の記事も、ぜひご覧になっていただきたい。
国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。