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世界初!?伸縮する収納可能型の3Dプリント橋が中国・上海でデビュー

「EternalWheel」BLUA

「万年輪」と名付けられたこの景観歩道橋は、中国・上海に存在する3Dプリントされた伸縮する橋だ。長さ9.34メートル、幅1.5メートル、高さ1.1メートルというサイズで、上記のGIFアニメーションのように折り畳まれた状態からコントローラーによる操作で対岸に架けられるよう稼働する。

橋は、昔から人の往来を目的とした建造物である。地名に橋の名が付けられているほどにアイコンにもなる存在だ。船の往来を可能にするために、分割して跳ね上げたり、上昇する橋があるが、このように収納される橋は見たことがない。城の周りの堀に架けられた橋を収納できるようにした可能性はあるかも知れない。そんな収縮可能型で伸縮する芸術的な景観を重視した橋がこの「万年輪」だ。

実用性が主ではない目的とは

収納された状態の「EternalWheel」、赤く見えるのが対岸の貨物船(出典:量子位)

人通りが多い場所でもなく、船が行き交う川というわけでもない。むしろ、隣に貨物船が行き交う川がある。設計チームはこう語っている。

過去数年間に建設業界で3Dプリントが達成した事例の大部分は、デモンストレーションのみを目的としています。3Dプリントのエンジニアリングアプリケーションは、静的ディスプレイとしてではなく、よりインタラクティブで機能的なものとして機能できるだろうか? この課題に対する事例を探求するための出発点として、私たちは新しいスマートな建設の可能性を試してみたいと思っています。

設計チーム BLUAArchitects 担当者

「可能性を試してみたい」

建物は動かないもの、乗り物は動くものだが、店舗が動き始めているように制約は変化するものだ。鉄骨構造の機械式油圧回転システムに3Dプリントされたカバーと床板を取り付けた構造の橋で、重さが約850キログラムと、オーソドックスな石橋の約1万分の1以下という軽さだ。軽量ながら同時に20人を運ぶことができるよう設計されている。また重量オーバーの際には警告音が発信されるセンサーが搭載されている。

万年橋の設計図版(出典:量子位)

実用性以外の目的として、もう1つの可能性と思われるのが景観の作り方である。3Dプリンターのような新しい技術では、とかくモダンなデザインが期待される傾向にある。しかし、4000年の歴史を持ち出すまでもなく、かの国では多くの重要な文化財を応用することの可能性も試しているようだ。橋には中国の伝統絵画の巨匠 斉白石と呉昌碩の有名な作品が描かれているが、そのままを写植するのではなく、特徴を抽出して転写している。残念ながら側面のパネル以外の床面やその逆側の模様が映像では確認しきれないが、おそらくこの方法が一定の評価を得られるのだろう。

であれば、橋ごとにいろいろな図柄を応用して、架け替えのたびに変更することも可能だろう。そうなると街のあちこちに芸術品が置かれ、街全体が美術館のようにデザインできるのではないだろうか。まさに3Dプリンターで街を作るようなイメージである。

中国の伝統絵画の巨匠である斉白石と呉昌碩の有名な作品(出典:量子位)

技術的な優位性のアピール

この橋のパネル作製には、FDM(Fused Deposition Modeling/溶融物堆積法)という造形方式の3Dプリンターを採用。ガントリータイプでありながら6軸ハイブリッド・アディティブ・マニュファクチャリング&CNC機械加工ができるタイプを独自に構築している。わずか3日間ですべての材料を作製できる。この橋を作製するにはオーバースペックな気もするが、中国らしい。

独自のガントリータイプの6軸ハイブリッドアディティブマニュファクチャリング&CNC機械加工機(出典:量子位)

3Dプリンターのコストよりも、1つの場所ですべての部材を短期間に作りあげることができる方がメリットが大きいと考えているようだ。可能性を試したい点の1つなのかも知れない。

考察:中国の3Dプリント市場

世界の工場といわれるようになった中国。その背景には、無尽蔵に調達できる安価な人的パワーにあった。しかし、2011年~13年のわずか3年間で中国が生産したセメント量が、1901年~2000年の101年間にアメリカで生産した量を超えているというほどの建設ラッシュが人件費の高騰を招き、多くの建設プロジェクトが頓挫する事態に発展している。そこへ新型コロナウイルスの影響も加わり、各国が自国で製造するムードが広がっている。その流れを支える技術の1つに3Dプリンティング技術がある。

3Dプリンティングは、自動化技術だ。製造工程に多くの人的パワーを必要としないため、人件費が高くても輸送費などのトータルコストで勝負することができる。

こうなると、3Dプリンター装置そのものが大きな市場になるはずだ。中国へ製造工場が移転するなかで、日本の製造装置産業が成長した流れと一致する。そのためには、3Dプリンターによる製造経験で世界をリードする必要があると考えれば「可能性を試してみる」ことが大事になる。経験に裏打ちされていない製造装置を購入する企業はないからだ。

そして、3Dプリンター装置だけをビジネスにするはずはなく、設計からシミュレーション、試作評価、製造、品質評価などのトータルでソフトウエアやメンテナンスなどをサービスとして提供する可能性がある。そのためにはどうしても世界の先頭を走り続ける必要がある。

中国国内でも人件費課題は重くなる。したがって、内需の製造においても3Dプリンター技術の浸透を後押しされる。自国製造に転換した企業においても、3Dプリンター技術が浸透すれば消費地での製造比率が高まる。そうなると世界の消費地でもある中国には3Dプリンターによる製造工場が増えるのは必然である。世界の工場ではなくなっても、世界最先端の工場であり続けるならば、3Dプリンター技術に注力するのは当然だろう。


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電機メーカー、デジタル地図ベンダーのソフトウエアエンジニア、サービス企画の経験を経て、コンサルティングファームのメンバーとして自動車会社の開発を支援する。予防医学を学び、幹細胞に興味を持つ。3Dプリンターで自身の車や家を作る時代がくることを夢に見ながら日々執筆に勤しむ。

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