国内最大級出力で非破壊検査!日立の産業用X線CT撮像サービスは原理上960mmのアルミも透過可能!
2020年1月29日から3日間に渡り、東京ビッグサイトで開催される国内最大級の3Dプリンティング&AM技術の総合展「TCT Japan 2020」(以下、TCT)。ShareLab(シェアラボ)編集部は同イベントのメディアパートナーとして事前情報をお届けしていく。
X線CT(コンピュータ断層撮影)というと、病院で治療のために撮影してもらうのが身近だが、産業界でもX線CTが活躍している事はご存じだろうか。30年前、種子島の国産ロケット重要部品の検査に用いられたのが開発契機という、日立製作所の産業用X線CT装置はその代表例といえるだろう。
2020年1月29日から開催されるTCT Japan 2020に初出展する日立製作所のHiXCT(ハイエックス・シー・ティー)はそんなハイエンドなX線CT装置だ。今回は、日立製作所のヘルスケアビジネスユニット 汎用分析システム営業部の木村真輔氏に、お話を伺った。
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――早速ですが、日立製作所のヘルスケアビジネスユニットにて、産業用X線CT装置を取り扱っているとのことですが、ヘルスケア製品も扱っているのですか?
ヘルスケア製品も提供していますが、私たちはガイガーカウンター(線量計)など放射線に関する装置を扱っています。その中でも私は産業用の高出力装置として人体ではなく、金属などを検査する非破壊装置としてHiXCTシリーズというX線CT装置を扱っています。
――そもそもX線CT装置は産業界でどのように用いられているのでしょうか?
産業用X線CT装置は、 いわゆる非破壊検査が可能な装置です。 複雑な構造物も破壊せずに断面を見える化でき、分厚い金属でも、内部を含めた形状と密度分布を、非破壊・非接触でデータ化する事ができます。金属などの堅く、密度の高いものも、X線CT装置であれば内部構造が撮影できますので、発電所のタービンや、自動車のエンジンなども分解せずに検査できます。
――装置販売に加えて、非破壊検査サービスも提供しているんですね。
はい。今回のTCT Japan 2020では、ご依頼を受けて当方で撮像する検査サービスをご紹介していきたいです。「HiXCT」は高額な検査装置なので、気軽に導入できる企業様は多くありませんが、年間数十件の撮像相談をいただいている実績がございます。「他の産業用X線CTでは実現できなかった構造物の撮像」を中心にご相談が来ている状況です。
――「他の産業用X線CTでは実現できなかった構造物の撮像」とは、具体的にはどのようなご相談でしょうか?
HiXCTの大きな特徴は出力の高さです。分厚い鉄板でも非破壊で内部の状態を撮像できます。航空宇宙分野での撮像以外にも、産業用途であれば、自動車のエンジンを、X線CT装置を用いてポリゴンデータや3DCADのデータにしたいというご要望や、破損したタービンなど不具合品の徹底調査を行うためのご相談、などに対応してきた実績があります。守秘義務もあるので、多くはご紹介できないのですが、火焔型の縄文土器のような文化財や遺跡から出土した土を解析し、データ化した実績もあります。
――なるほど。競合車のエンジンを持ち込んで分解せずに解析できれば、その後に破壊試験などにもそのエンジンを用いることができるからお得ですね。
そうかもしれません。そんな産業用X線CT装置の中でも、日本最大級の出力水準で非破壊検査ができるのがHiXCTの強みですが、CTデータは、オプションでSTLや3DCADデータに変換することもできます。3DCADにすれば流体解析や密度解析など、シミュレーションにも活用できるので、大きなメリットがあります。
――日本最大級の出力、ということですが、どれくらいの分厚さまで測定できるんでしょうか?
もっとも出力の高いHiXCT-9Mという装置では、9MVの高エネルギーX線を使用しています。原理的に鉄であれば320mm、アルミであれば960mmの分厚さでも透過することが可能です。(装置使用には制限があり、撮像できる検体寸法はφ600㎜×H1000㎜です。)
――日本最大級である出力水準のイメージが掴めました。ちなみに、検査サービスは、おおよその金額を教えてください。
価格表のようなものはなく、「基本料金+1スライスあたり」という積算方法でお見積りしています。200㎜角の検体でしたら200スライスで撮像すると想定して、おおよそ80万から90万くらいでしょうか。材質の違いによって金額は変わりませんが、検体の形状などに応じて、適切な撮像方式を確認しながらお見積りしていきます。撮像のための条件設定は時間をかけてお話合いをさせていただき、お見積りしています。
――では撮像の条件設定が定まった後の撮像はどのくらいの時間で、できるのでしょうか?
1スライスの撮像が15秒程度なので、最大サイズのH1,000㎜を1㎜ピッチで撮影した場合、4時間から5時間程度で検査はできます。装置は茨城県ひたちなか市にあるので、検体の運搬時間や検査体制を整える時間なども必要となります。都度お見積り時にスケジュールをきちんとすり合わせて検査サービスをご提供しております。
――積層造形を中心とした新しいモノづくりを目指す方に伝えたいことはございますか?
ロケット部品の検査から始まった産業用X線CT装置ですが、過去30年にわたり、実際にみなさんの「ここで困った」というニーズをくみ取りながら、機能改善を続けてきました。積層造形ならではの非破壊検査ニーズというものがあると思っておりますので、みなさまが積層造形を行う上でのお困りごとをお伺いしながら、我々がお手伝いできることを探していきたいと思います。
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日立製作所で放射線に関する装置を扱う事業部が提供する「国内最大出力」の産業用X線CT装置。公開できる事例に限りがあるという事だったが、開発から30年、多岐にわたって撮像をおこなってきたという。日本一パワフルな非破壊検査装置を一目見たければTCT Japan 2020の日立製作所ブースに行ってみよう。どんな悩み事にも、先駆者がいることを教えてもらえるかもしれない。
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2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。