宇宙から医療へ!老舗AMサービスビューロの取り組みー金属技研株式会社
2020年1月29日から3日間に渡り、東京ビッグサイトで開催される国内最大級の3Dプリンティング & AM技術の総合展「TCT Japan 2020」。ShareLab(シェアラボ)編集部は同イベントのメディアパートナーとして事前情報をお届けしていく。
今回取材したのは、熱処理の受託サービス業を主力とする金属技研株式会社(以下、金属技研)だ。2013年とかなり早い段階から、積層造形の受託サービスをはじめている。当初は研究開発用途という事だったが、オバマ大統領の演説など産業界の関心の高まりに従い、本格的な造形受託サービスが始まったという。金属技研株式会社の増尾大慈氏にお話をうかがった。
――金属技研さんのご紹介からお願いいたします。
弊社は1960年代から熱処理の受託加工の企業としてスタートしました。真空熱処理、接合処理、HIP処理を得意としています。食品業界と建築業界以外はあらゆる業界のお客様がいらっしゃいます。
金属の積層製造に関しては、2013年からサービスを行っておりまして、国内では古株のほうかな、と思います。医療業界、航空宇宙業界での実績が増やすべく営業・生産活動を行っています。
――AMに取り組むきっかけを教えてください。
積層造形で造形した金属部品に、 熱処理技術で 付加価値を与える、という研究を行うために開発機として金属積層造形機を導入したのですが、アメリカのオバマ大統領の演説以降、お引き合いが激増しまして、試作、最終製品に対する依頼への対応が始まりました。
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オバマ大統領の演説に対して少し補足しておく。2013年にアメリカのオバマ大統領が一般教書演説で、 国家プロジェクトとして3Dプリンタに大きな開発投資をし、米国の製造業を変革するのだと宣言した事を指す。
この演説では「試作品」でなく最終製品をそのまま造形できる装置を目指しており、ハイテク産業での雇用創出をねらったもので、アメリカ国内での政府主導の技術拠点開発やユニコーン企業を生み出す契機にもなっている。
この演説の影響で日本でもホビーユースの安価な3Dプリンターが流行するなど、国際的な熱狂を生み出しが、まだ発展途上にあったAM技術に対する過大な期待は、多くの失望も生んだ。そんな高い期待値にもまれながら、ノウハウを蓄積したサービスビューロが現在の日本の積層造形をけん引している。金属技研もその中の一社だといえそうだ。
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――どんなお客様が多いですか?
お引き合いとしては金型鋼やアルミ合金でなにかを造形するというお話が多いのですが、得意としているのは高い水準の品質管理体制を必要とする航空宇宙業界と医療関係のお仕事です。
航空宇宙業界のお仕事は試作だけではなく、最終製品に使われる部品も含まれますので、非常に品質を厳しく問われます。素材もチタン合金やニッケル合金での製造が多いです。そこで培った積層造形の良さを生かしたモノづくりへの取り組み、品質へのこだわりが弊社の強みになっています。
また2019年に医療機器製造業の認可も取得して、人工骨などのインプラント分野での取り組みを始めています。
――品質へのこだわり、という点、もうすこし踏み込むとどのような取り組みになるのか教えてください。
ISOやASTMなどの公の規格に準拠した品質管理を実際の工程に落とし込んでいます。特に社内一貫生産にこだわりを持っており、最終的な造形品質に影響を及ぼす各工程を管理、フィードバックをかけることによる品質管理はお客様から高い評価をいただいております。
たとえば造形材料となる金属粉末の管理範囲も広く、粒度分布の測定器、形状を確認する機器を社内で保持しています。造形後のCTスキャンでワークを光学的に測定し品質を確認するなど、造形プロセスの前後工程から品質を管理しています。
同じデータ、同じ装置でも取り組み方や装置を所有する会社のノウハウで仕上がりが変わってくる点が積層造形のユニークな点でもありますので、仕上がりに影響するポイントを踏まえた管理をおこなって、良品を導くようにしています。
――パウダーの世代管理やCTによる造形後確認まで行っているんですね。いまは生産拠点はどこにあるのでしょうか?
AMに関する設備は神奈川県にある自社工場に集約していまして、4台の金属積層造形装置と1台の樹脂3Dプリンターを持っています。取り組みの主力は金属です。特にチタン合金やニッケル合金など素材自体が高い付加価値を持つ素材を活かして、今までにないものを作る活動を行っています。
――今回のTCTで見てほしい点はありますか?
「 Additive Manufacturingは試作から実用部品へ 」というテーマでブースづくりを行っています。サービスビューロとしては実際のワークは守秘義務の関係上お見せしにくい部分もあるのですが、お客様のご許可もいただき、会場でみてもらえる造形物を多めにご用意しました。
特に見ていただきたいものが、ロケットの噴射ノズルと人工衛星の太陽光パネルの展開部分です。ロケットの噴射ノズルは、積層造形で出力したあと、ろう付けでセラミックスを加工してあります。
こうした後工程でも付加価値をつける取り組みを実感いただけるような造形物や、大きな造形物、精細な造形物も展示する予定ですので、サービスビューロとして私たちができることを感じていただければ幸いです。
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2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。