「ストラタシス・デー」トークセッション「AMで出来ること 今とこれから」参加報告

2025年6月16日
記者撮影 トークセッションスライド
記者撮影 トークセッションスライド

2025年6月6日、東京で株式会社ストラタシス・ジャパン主催による、ストラタシスユーザーなど限定招待者会場参加イベント「ストラタシス・デー(Stratasys DAY)」が開催され、シェアラボの丸岡がストラタシス・ジャパンからの依頼を受け、トークセッションの司会担当、参加した。まずこの機会を与えていただいた株式会社ストラタシス・ジャパンの皆様と講演、参加をされた皆様にこの場を借りて感謝の意をお伝えしたい。昨年のストラタシス・デーにも参加し、シェアラボでもお伝えしたが、今回もほぼ満席となる100名以上の参加者があり、主催者からの講演より、ユーザーの活用事例とトークショー、講演後の懇親会に多くの時間が当てられ、ユーザーや導入検討中の参加者どうしの交流、情報交換が活発に行われた機会として、大変有意義なイベントであった。(上部画像は「ストラタシス・デー」トークショーステージ シェアラボ記者撮影)

ストラタシス社概要

ストラタシス社(Stratasys Ltd.)は1989年にアメリカで「FDM方式」と称されるMEX(材料押出法)3Dプリンターの発明者であるスコット クランプ 氏により創業され、2012年のMJT(材料噴射法)3DプリンターメーカーObjet社との合併などを経て、現在AM基本工法5種の樹脂3Dプリンターおよび材料の世界最大規模のメーカーで、日本でも多様な産業と用途で多くのユーザーが製品を活用している。

主催者講演の要点

開会挨拶として、株式会社ストラタシス・ジャパン 代表取締役社長 シャルマ スニール 氏が「AM市場が開く、私たちの未来」と題し講演した。

株式会社ストラタシス・ジャパン 代表取締役 シャルマ スニール 氏 シェアラボ記者撮影
株式会社ストラタシス・ジャパン 代表取締役 シャルマ スニール 氏 シェアラボ記者撮影

AM業界は市場の変動にもかかわらず、持続可能な価値を提供することで成長を続けている一方、製造全体市場のわずか0.05%であり、今後も成長の可能性があるとともに、ストラタシス社もこれまでにない価値を研究開発スピード、柔軟性と適応性により提供していくと述べた。

続いて株式会社ストラタシス・ジャパン 竹内 翔一 氏より、現状28種まで拡大しているプリンター、および材料、ソフトウェアの新製品、発売予定製品の概要紹介があった。

トークセッションの要点

トークセッションの前にユーザー事例として、下記3件の講演があった。

その後、合同会社DMM.com 勝 智哉 氏を加えた4名のユーザーに対してシェアラボ 丸岡が質問をし、それぞれ答えていただく形式で、「ユーザーに聞く試作と製造の最新事情 AM で出来ること 今とこれから」をテーマにトークセッションが開催された。

トークショー登壇者(左から松本氏、池田市、久保氏、勝氏、丸岡)シェアラボ記者撮影
トークショー登壇者(左から松本氏、久保氏、池田氏、勝氏、丸岡)シェアラボ記者撮影

まず3社の講演に含まれた内容も踏まえ、「テクノロジー」と「ビジネス」の2つの観点で、使っているAMの現状とこれから目指すこと、その実現のためにストラタシスに対する要望を聞いた。

例として、久保氏(八十島プロシード)は、MEX法プリンターを中心とした受託樹脂製造サービスにおいて、計測機器を整備し、全数検査を実現していること、また約縦3メートル、横2メートルサイズの製造依頼に対し、7台の大型プリンターで分割パーツを並行造形、接着にて納期と±1mmの誤差要求を満たしたが、一般に分割数を最小にするために造形部品が大きくなると単品での歪みやねじれが懸念されるが、この件ではそれがほぼ影響なく、現状の高機能MEXの特長と性能の進化について述べた。一方、3Dプリンターを実用品製造装置としての活用を拡げるには、現状の製品寿命が短かすぎ、他の工作機械同様、正しいメンテナンスを行えば安定し、より永く使えるよう、また補修部品も速く十分に供給されるよう、メーカーに改善を要望した。

池田氏(キャステム)は、AMやSNS活用により、新入社員応募や女性社員の増加など、人材面での効果もあると述べた。またセラミック型による精密鋳造製造において、ロストワックス(焼失中子)をAMで製造しているが、これはかなり以前から国内でもあった用途だが、実は広く知られておらず、最近「デジタルキャスト」と銘打って宣伝したことや、焼成条件の工夫による技術課題解決によって、需要が増えているとのことであった。

松本氏(m-tech)は、メーカーがスペアパーツ製造を終了した、古い大型バイクの電装コネクターなどをAMで製造しようと考えたが、AMの知識が無かったので、自ら展示会に行き、可能性のあるプリンターと材料と出会い、テストや設計変更を繰り返す中での課題解決に適した新材料が、次々発売になって現状のビジネス成立につながったことを紹介し、具体的な課題を持って展示会に行くことの大事さ、また課題にぶつかっても、材料の進化で解決する例もあるという、AMの特徴と可能性を示した。一方、特に紫外線硬化樹脂材料は消費期限があり、かつ購入単位が現状大きすぎて、高額かつ使いきれないことが製品コスト高の要因のひとつとし、メーカーや販売代理店に対し、複数ユーザー間で材料を共同購入使用できる、または小ロット単位で低額で購入できるようにしてほしいという要望を提案した。

勝氏(DMM.com)は、同社のオンライン3Dプリントサービスの利用者は法人と個人両方あり、増加に伴いAM装置や人員も増強してきたが、個人ではフルカラーフィギュアを作る用途も多く、形状や色の品質を高める要望を述べるとともに、価格については、3Dプリンターや材料のコストが高い安いというより、価格を決めるのはキャラクターなど「何を作るか」であり、その課題が重要との見解を示した。

終了後に聴講者の何名かから感想を伺ったが、「ユーザーとして同感することがあり参考になった」「導入を検討しており、ユーザーの声が参考になった」などの声が聞かれた。

参加を終えて

特にストラタシス社製品ユーザーは、10数年以上永く使うユーザーから始めて間もないユーザーまで、また工業だけでなく医療やファッションまで幅が広く、企業規模も多様なこともあり、前回から継続している、ユーザー中心のイベントとして「ストラタシス・デー」は、普段接点の少ない人とのつながり作りや、一般に知ることが難しい貴重な情報を交換できる場として大きな価値がある。またこのイベントでは、用途が試作か製造かに関わらず、「売るもの」「実際に、または長期に使うもの」を作るユーザーの割合が多く、それに必要なメーカーへの要望も高くかつ具体的な傾向が見られ、1対1だけでは伝えにくい要望を共同で伝えるなど、ユーザーにとってもメーカーにとっても重要かつ必要な場であることは海外でも同様であり、日本でも今後このようなイベントが増え、メーカーにも、日本のユーザーの要望に応える、更なる製品サービス開発改善に取り組むことを期待したい。

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今回の取材に関連するものとして、これまでShareLab NEWSが発表してきた記事の中から3つピックアップして紹介する。ぜひあわせてご覧いただきたい。

設計者からAMソフトウエア・装置販売ビジネスに20年以上携わった経験と人脈を基に、AMに関わるみなさんに役立つ情報とつながりをお届けしていきます。

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