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「DfAM」と「DwAM」はどう違うのか?

イントリックス株式会社 丸岡 浩幸

イントリックス株式会社 丸岡 浩幸 樹脂製品メーカーで設計を14年、その後AMソフトウェア・装置販売ビジネスに20年以上携わった経験と人脈を基に、ShareLabを通じてAMに関わるみなさんに役立つ情報とつながりをお届けしています。

DfAMの誤解と違和感

8月も後半に入り、先週までに休んだ方、休めなかった方、それぞれいらっしゃるかと思います。私は8月生まれのためか、子供のころから夏が一番好きで、暑さより冷房で体調を崩しがちです。なのでこの歳になっても、8月後半になると、なんとなく夏が終わっていくさみしさが心にジワジワやってきます。それにはお構いなく酷暑は9月まで続くようで、それはそれで困ったことですが、皆さんそれぞれ対策をされ、残暑をお過ごしください。

さて、気温は高止まりですが、今月円と株は乱高下しました。一説にはAIによる多量高速取引も原因とのことですが、AIが人間を振り回すこともこれから増えそうです。どちらにしてもAIも道具で、道具はどんなものでも使い方で益にも害にもなり、それはAMも同じだと思います。そのAMという道具を使いこなすのに重要なポイントがDfAM(ディーファム)で、今回はその話題です。

国内でも最近はDfAMがDesign for Additive Manufacturingだと広く知られるようになりました。直訳すれば「付加製造のための設計」でそれ以外何物でもありませんが、重要である反面、本来の意味を誤解されて伝えられていることを目にします。例えば「AMを使うためにトポロジー最適化やラティス構造を使うことがDfAMです」とか、「AMを使うためにはまずDfAMを学ぶことが必要です」とか。しかし、AMを使うことが目的で設計をするのは「本末転倒」だと考えています。

私がかつてプラスチック製品設計技術者だった時を振り返ると、設計するときは、まず与えられた要件定義から、製品機能やQCDが最適になる形状をまず考え、その材質と形状と製造要件から射出成形が適していれば(当時はAMという選択肢はなかった)、金型と射出成形、場合によって組み立てなどの後工程の品質やコストを考えて、抜き勾配をつけたり、寸法公差設定をしたりして最終的な形状を設計していました。他のどの加工法の設計でも基本的な考え方は同じだと思います。

もちろん加工法を全く考えない設計もあり得ないのですが、AM「のための」設計というDfAMの考え方には私自身ずっと違和感があり、正しい解釈を説明したり、誤解を解いたりするのもこれまで苦労してきました。一方で、7月26日に私が前職から継続して幹事を担当しているJAMM(Japan AM Meet-up)の17回目をオンライン開催し、AM Consultant 山田 晃裕 氏のご講演「いつからAM、始めますか?」内でも、「ラティスやトポロジー最適化がDfAMではない」「いかにAMでの生産性(コスト削減)に貢献する設計」と仰っていて、DfAMの正しい考え方を示され、実践されてきた方ならではの説得力がありました。(講演録画動画はYouTube ShareLabチャンネルでご覧ください。)

DfAMについて絶対正解はないのですが、私が考える「目指すべきDfAM」を以下の図で表してみました。

ここでは詳しい説明は省きますが、DfAMはエンジニアリングチェーン+サプライチェーン全体を考慮に入れること、また例えば、製造品をどう品質評価管理するのか、などから遡って設計すること、さらに、プリント前後を含んだAM工程全体も考慮した設計だと考えています。つまり「AMだけのための設計でない」ということです。

「DfAM」と「DwAM」はどう違うのか?

目指すべき考えからしても、DfAMという言葉がどうもしっくり合わないと思っていたところ、先日視聴した海外のウエビナーでパネルティスカッションがあり、その中で「この方が合う!」と思った用語が出てきました。それが「DwAM(Design with AM、ディーワム)」でした。

ForではなくWithということは、あくまでものづくりの一部としてAMを使うための設計で、AMだけのためではない設計を表現する用語だと解釈しています。別の言い方をすればDfAMはAMが設計の目的、DwAMはAMが設計の一部というのが2つの違いということです。DwAMがこれから世界や日本で広まるかはわかりませんし、単なる用語の話ではありますが、前述の「目指すべきDfAM」はDwAMではないかと考えています。みなさんもこの違いについて考えてみてはいかがでしょうか。

ShareLabニュースにもう一言

「宮城AM研究会」参加報告

開催されたのは先月でしたが、各地で対面での交流イベントが増えてきたのはうれしいことです。この講演でもDfAMについて正しい理解を広めていただいたようでした。加えて、宮城AM研究会スーパーバイザー 東北大学 千葉晶彦 特任教授がおっしゃったように、これからますます金属、樹脂を横断した情報共有、学習も必要だと思います。またみやぎデジタルエンジニアリングセンターからは各種プロジェクトや補助金の募集案内のほか、11月19日(火)~22日(金)にドイツ・フランクフルト国際見本市会場で開催予定の国際製造加工技術専門見本市「Formnext 2024」について、「あくまで現地集合&現地解散、費用は全額自己負担前提で、会場でお互いに情報交換しましょう!」が主目的の調査同行について募集案内がありました。関心のある方はぜひ記事本文をお読みください。

ではまた次回。Stay Hungry, Stay Additive!

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