AM界隈の「もったいない」とは?
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
イントリックス株式会社 丸岡 浩幸 樹脂製品メーカーで設計を14年、その後AMソフトウェア・装置販売ビジネスに20年以上携わった経験と人脈を基に、ShareLabを通じてAMに関わるみなさんに役立つ情報とつながりをお届けしています。
展示会「TCT JAPAN 2025」はどうだった?
日本では立春も過ぎ、プロ野球のキャンプが始まり、中国の旧正月「春節」も終わりましたし、世界的にもいろいろと動き出す時期になりました。一方特に日本海側で例年より多い雪により、まだそれどころではないという地域の方も多いかと思います。雪も日本列島の独特な気象と地形によるものですし、水の元として必要でもあり、観光含め人が利用をしている点では「日本の大事な資源」でもあり、降りすぎれば「災害」にもなる両面があるものの、雪のあまり降らない地域に住む私が言うのはどうかとも思いますが、ニュースを見て「これだけの雪を日本特有の資源としてもっと活用できないものか」と思うことがあります。今回はそれに似た話題です。
2025年1月29~31日に東京ビッグサイトで展示会「TCT JAPAN 2025」が開催されました。シェアラボでは今回新しい取り組みとして、開催前にこれがどのような展示会で、どこをどうやって見るのが良いのかを動画「ShareLabTV」や記事でお伝えし、開催中には来場者と同じ立場でブースを訪問し、そのブースで何を見てほしいかをインタビューした動画を開催中にSNSで配信したり、開催後はブースやセミナーのトピックスを記事でお伝えしました。


とても多くの情報交換と人の交流があった有意義な3日間で、全体として日本のAMが幅広いものづくりに定着して、ツールも使い方も進化していることが分かった良い面があった一方で、日本のAM界隈に前からもあった「もったいない」と思うことがまだまだたくさん残っていて、「それをもっと有効に活用できないか」という課題も個人的にあらためて感じました。
AM界隈の「もったいない」
今回の展示でよかったと思うことの一つに、日本全国にある「公設試験研究機関」と呼ばれる公的な技術研究所や工業技術センターが集まった特設展示エリアがあったことです。そこに掲示されていた「金属AM装置MAP」には、日本全体で金属AM装置を整備している機関が25あり、その中の11機関が展示をしたとのことでした。
展示されたそれぞれの機関は、単純に装置を持っていたり機器開放をしているだけではなく、様々な基礎研究や、地場産業に役立つ活用研究をされていますが、これだけの装置や研究技術職の方々が日本にはあり、これらが十分に知られていない、または活用されていないとすればもったいないことで、全国的に機関どうしの情報共有や相互装置利用がもっと出来たり、また民間企業もまず知って相談してみる、協働してみることは大事だと思いますし、こうしてみるとまだ整備されていない地域もかなりあるので、そこを連携してカバーしていく施策も必要だと思いました。
また、企業ブース展示の中でも、もちろん企業や製品の名前は表示されていても、来場者に「何を提供するのか」「何が他の企業と違うのか」がわかりにくかったり、十分アピールが出来ていないと感じたブースが見受けられたことは「もったいない」と思いました。もちろんそれぞれの企業の考え方、かけられるお金や人の条件はあると思いますが、出展して「誰に、何を伝えたい」ということを、ブースデザインや展示物で表現するだけでなく、説明員全員が理解して言葉にできることに加えて、展示会来場者に、限られた時間内にブースに来てもらうため、事前にできるだけ伝えておくことは、せっかくの展示会コスト対効果を高めるのに重要でしょう。来場者も本来の仕事の時間を割いて見に来るからには、展示会前の情報収集や、「何のために何が知りたいか」を事前に整理して出展者に正しく詳しく伝えることは、売り手使い手両方にとって、有効な展示会にするためにも必要だと思いますし、出来ていないとすれば本当にもったいないことです。シェアラボでもその「もったいない」を減らすために出来ることを、これからも提供していきたいと思います。
シェアラボでも先日イベント開催情報をニュースでお伝えした、「Additive Manufacturing Strategies」がニューヨークで2025年2月4-6日で開催され、概要について海外ニュースで報じられていましたが、そこで話されたこととして、「現在AM業界で生き残っている、または小規模でも成功を収めている企業の秘訣は?」として、「ユーザーが欲しいのはプリンターという箱ではなく、箱が作るモノで、箱を売るのではなく、アプリケーションを売ること」とありました。このことは日本でも全く同じで、「箱」だけを宣伝して売ること、また買う側も「箱の情報や評価」だけで買って使うことは双方にとって「もったいない」ことであり、逆に言えばそこが良くなれば、AM界隈というより、日本の産業全体にとっても良い効果を生むことになると思いました。
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TCT JAPAN 2025主催者セミナー内でこのレポートの著者も講演されたので、レポートの内容もよりよくわかりました。このような日本のAM市場分析レポートは以前にもありましたが、特に本書は、日本だけが金属AMに取り組まないことの懸念とその背景や、どうすればよいかの提言が示され、AMに直接関わる方だけでなく、製造に関わる広い方に知っていただきたい内容だと思いました。

上のニュースと関連していますが、日本でのAMへの取り組みは、日本国内だけで進めるより、既に出来ている海外の規格、組織、教育なども積極的に活用することが有効だと思います。もちろん一方的に「利用するだけ」は良いことではなく、日本からの情報も提供し、協働して双方に利がある形で進めることが、一過性で終わらせないためにも必要なことであり、上記のような提携はとても良いことだと思いました。
ではまた次回。Stay Hungry, Stay Additive!