AMの旅は続く-丸岡担当最終回

2025年9月11日
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9月になっても猛暑、台風、竜巻がつぎつぎやってきて、小さい秋を見つけるにはまだまだかかりそうですが、家では夜になると秋の虫の声が聞こえるようになり、月日が経つ速さも感じます。このコラムも2024年5月から書き始め、今回で32本目となりますが、丸岡が担当する最終回となります。そこで今回は、私が考えるAMのいまとこれからについてお伝えします。

AMのいまとこれから

コラム開始からの約1年半の間にも、世界と日本で政治、社会、経済、技術に大きな変化があり、それに影響を受けたことは間違いないですが、AM産業にも予測できなかった変化がいくつも起こりました。日本国内でもShareLabニュースでいくつかお伝えしてきたように、大阪・関西万博でのAMを使った展示に見られたような新しい使われ方、技術、ビジネスが活発に出てきましたし、ミズノ社がスポーツ業界において世界でも初めて3Dプリンターを活用した、個人の足にフィットするシューズ「3D U-Fit」を発売したこと、セレンディクス社とJR西日本社が世界初の3Dプリンター駅舎をJR初島駅に建て、使われ始めたことなど、世界に先駆け、注目されることも起きました。もう少し大きい話では、10年で1兆円規模とされる「宇宙戦略基金」や、「経済安全保障重要技術育成プログラム(K-program)」でもAM関連の複数のプロジェクトが採択され、動き始めたことなどが変化の例として挙げられるでしょう。

もちろんいい話ばかりではなく、特にAM装置メーカーの経営不振、合弁買収撤退もありましたし、日本では特に、自動車含む輸出産業でアメリカ関税による負の影響がこれから出てくるでしょう。しかし、先日9月1~3日に開催された、日本AM学会 第1回講演大会へ参加し、今回は金属関連の講演と参加が中心であったものの、参加してみて分かった国内研究と応用の規模と技術の高さと拡がりや、6月に開催された、3Dプリンター個人愛好家によるイベント「Japan RepRap Festival 2025」で感じた人の熱量や新しいアイデアから、若い世代の方々がこれからの日本のAMを動かしていくエネルギーを感じました。また2026年2月にニューヨークで開催予定の「Additive Manufacturing Strategies 2026」には日本からの共同司会者が参加しますし、これまで欧米各地で開催されてきた「CDFAM」が、ついに日本で開催される(2026年10月8~9日 東京国際フォーラム)予定となったことから、日本に対する海外からの関心も高まってきたと思います。

海外AM先進地域の場合、産業構造や課題からAMへの需要が高く、新しい製品やビジネス開発の総量も多く、それらを支える投資や公的支援もあり、加えて要求に対してAMのQCDレベルが追い付いていなくても、現状使える部分から使い始めるという文化的な面からもAM産業が進展していますが、日本国内では需要、投資も低く、要求に対してQCDレベルが追い付いていないと使わない傾向は続いていると思います。しかしながら、需要や要求というのは、内圧でも外圧でも急に変わりますし、日本は基本的に新しいことに保守的ではあっても、外からの大きな変化には急に、柔軟に対応できる特長もあると思います。それにより日本のAMも進展する可能性は十分あるでしょう。第49回技能五輪国際大会は2028年11月に愛知県で開催予定で、そこではAM部門もあるとのことで、若い世代の方々がその可能性を大きく広げてくれることも期待しています。

AMの旅はまだまだ続く

世界的にも、AMを実際に使うことは、使ってすぐ効果が出る瞬間的なものではなく、ある程度長い期間使い続け、小さい成果を積み上げて、更に高みを目指す「旅」にた例えられていることはご存じの方も多いでしょう。私もこれまでいろいろな立場で旅を続けてきましたが、今9月末で現職を退職し、10月から陸上自衛隊武器学校にて、3Dプリンティング専門教務の職に就く予定となりました。最長5年の任期付きで、どこまでになるかはわかりませんが、若い世代の方にAMについて伝えながら、これまでと別の道で旅を続けられることはとてもありがたいことだと感謝しています。

また、このコラムをお読みいただいたことにも深く感謝致します。本当にありがとうございました。加えてこれからもShareLabのご愛読、ご支援を頂けますよう、心からお願い致します。世界でも日本でも、多くの方がAMの旅を続けていて、でも決して一人旅ではなく、大勢が同じ方向を目指して一緒に進んでいくのがこの旅の良いところでもあり、私も続けられる理由でもあります。みなさんも良い仲間と良い旅を続けてください。

Stay Hungry, Stay Additive!

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画像:丸岡が生成AIで作成

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