エレファンテックが新たに約9億円の資金を調達
環境に優しい独自の金属インクジェット印刷による電子回路基板開発を行うエレファンテック株式会社(東京都中央区)が、新たに約9億円の資金調達を実施。同社の累計資金調達額は約90億円となった。
2014年の設立から10年経たない短期間のうちに90億円もの資金調達を可能にした背景には、画期的な独自技術に対する市場の期待値の高さがうかがえる(画像は独自技術で製造された回路基板「P-Flex」の標準サンプル/出典:エレファンテック社)。
エレファンテック社の独自技術
エレファンテック社は、基材上の必要な部分にのみインクジェットで金属を印刷し、その後銅メッキ技術で金属を成長させるという独自の製造方法「エレファンテック製法(ピュアアディティブ法)」を開発。フレキシブル基盤「P-Flex」を生み出した。エレファンテック製法は従来の基盤製造法よりも工期を短縮しつつ、コストや環境負荷を削減できる。
エレファンテック社によれば、従来の製造法と比べると銀使用量は70%、CO2排出量は75%、水使用量は95%削減できるという。
金属をナノ化しインク状にしたものを、基材上の必要な部分に対してのみ印刷するエレファンテック製法には、3Dプリント技術が用いられている。この製法は試作品の製造ではなく、最終製品を作り出す方法として開発され、すでに2020年からP-Flexは量産化が始まっている。量産後、現在に至るまでリコールは発生していない。
今後はエレファンテック製法を業界標準にすべく、印刷装置の販売も計画しているようだ。環境に優しい金属インクジェット印刷による電子回路基板の量産化は、世界初となる偉業だ。電子回路製造に3Dプリントを用いる技術においては、エレファンテック社が圧倒的に先行しているといえるだろう。
インクジェットものづくりを支援するAMCも運営
エレファンテック社では、インクジェットを中心とした3Dプリント技術を用いた製造方法がさまざまな業界に広まるよう、顧客とともに材料や製品の開発を行うAMC(Additive Manufacturing Center)という組織を運営している。
顧客が使用したい液体がインクジェットに適しているか、どのメーカーのインクジェットヘッドがよいか、インクジェットよりも適した製造法はないかなどについて、顧客と伴走をするようなかたちで支援をする。試作品の生産や小ロットでの製造にも応じ、最終的には量産化へ向けての支援や提案も行っているようだ。
特に「エレクトロニクス」「ヘルスケア」「テキスタイル」「オプティクス」の4分野はインクジェットとの親和性が高いことから、重点的に推進していくとしている。
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