3Dプリンター業界、新型コロナの影響は？大手4社の決算情報から読み解く

大手3Dプリンターメーカーのstratasys社（アメリカ）、SLMsolutions社（ドイツ）、Tekna社（カナダ）、HP社（アメリカ）の4社が最新の決算を発表した。

今回は3Dプリンター業界の大手4社の2021年度の決算情報から新型コロナの影響や今後の取り組みなどご紹介する。

stratasys社：2019年度の水準まで回復

アメリカに本社を置くstratasys社は現地時間の2022年2月23日に2021年度の決算を発表。売上高は5億220万ドルで、世界的な新型コロナウイルス感染拡大前の2019年度の水準まで戻した。前年の4億4,370万ドルの赤字から、6,200万ドルの赤字まで大きく回復した。一株あたりの赤字は98セント。

しかし、今回の決算を受け、ASDAQで取引されているストラタシスの株は14%下落し、22.59ドルでその日の取引を終えた。2022年度の初めと比較すると、株価の下落率は10%となる。

2022年度は、医療や歯科分野での売上増加が見込まれ、2021年の水準を上回る見通しだ。

SLM Solutions社：売上高前年比20%アップ

ドイツの3DプリンターメーカーのSLM Solutions社が発表した2021年度決算によると、売上高は7,500万ユーロで前年比20%アップとなった。これは2019年度と同水準。売上高のアップに一役買ったのは同社の3Dプリンター「NXG Ⅶ600」シリーズの販売増加だ。

営業利益に減価償却費を加えたEBITDAでは、900万ユーロの赤字だが、これは前年比で50%の改善となる。

SLM Solutions社のCEOであるSAM O’LEARY氏は「2020年度から売上高20％増加という事前予想を上回る結果をもって2021年度を終えることができました。NXG Ⅶ600シリーズの販売拡大により、2022年度とそれ以降のさらなる業績向上が期待できます。今後数年の間に、マーケットシェアをさらに広げていきます」とコメントしている。

SLM Solutions社は、すでに航空機部品製造大手企業から受注しており、2022年度の売上高は2021年度を上回る見込みだ。

Tekna社：売上高前年比21.8%アップ

カナダの3Dプリンター用金属粉末素材メーカーのTekna社が発表した2021年度決算によると、売上高は2,680万カナダドルで、前年比21.8%増加。第四四半期の間の売上高に絞ってみると前年同期比で18.9%のダウンだ。

これは新型コロナウイルスの感染拡大による製造から供給に至るまでの停滞が原因とされる。EBITDAでは870万カナダドルの赤字だった。

HP社：2022年第一四半期は前年比売上高9%アップ

HP社は2022年第1四半期の決算では、売上高が170億ドルだった。これは前年比で売上高が9%アップしたことになる。売上増加は3Dプリンターをはじめ、ゲームや産業用グラフィックス分野が好調だったことが要因とされている。

HP社のCEOであるEnrique Lores氏によると、HPの3Dプリント分野の収益は2022年第1四半期の間に大幅に増加したという。

HP社の「3Dプリントとデジタル製造」を担うプリンティング部門は、2021年第1四半期に比べて2億ドルの減収となった。これはTekna社同様に新型コロナウイルス感染拡大による業界全体のサプライチェーンの停滞が原因とのこと。しかし、3Dプリント分野単体で見れば収益は伸びていると発表された。

HP社は、3Dプリント分野単体での財務情報を公表していない。しかし、HP社独自の3Dプリント技術である「Multi Jet Fusionテクノロジー」が採用された同社の3Dプリンターによって、1億2,000万個以上のパーツが生産されたことを発表し、その好調さをアピールした。

まとめ

新型コロナウイルス感染拡大は、3Dプリンター業界にも大きな影響をもたらした。しかし、各業界への実績を着実と広げており、今回取り上げたどの企業も売上高アップという成果を残し回復の兆しを見せている。まだまだ世界的に感染終息がしたとはいえない状況下に置いて、復調しつつあるのは好ましい傾向だ。今後にもぜひ注目したい。

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