0.1mmのダビデ像をプリントする驚異の高精細金属3Dプリントシステム
概要
ETHチューリッヒのトマソ・ザムベリ教授率いる研究チームは、スイスの3DプリンタメーカーであるExaddonが開発した金属3Dプリントシステム「CERES」を使用して、世界的にミケランジェロ作として有名な大理石彫刻のダビデ像(高さ5.17m)をわずか1mmと0.1mmというスケールで3Dプリントに成功した。
わずか1mmスケール のダビデ像
上の写真を見ていただきたい。
これがわずか高さ1ミリスケール(実寸0.7mm)と聞いてすぐ実物をイメージできるだろうか?
この高さ1mmのダビデ像、作成にかかった時間は12時間だが、一切の研磨仕上やバリ取り等の後処理なく3Dプリンターによる積層造形のみで作成されたのだというから驚きだ。それよりもさらに小さい 0.1mmの小さなダビデ像は僅か20分でプリントされたという。 ( 0.1ミリサイズ の方については以下のリンク先にある (d) 画像をご覧いただきたい)
マイクロメートルスケールを実現する金属3Dプリンター
この造形を可能にしたのが、Exaddon AGが独自開発し、マイクロメートルスケールのプリントを可能にした金属3Dプリントシステム「CERES」だ。
CERESは、ナノメートルの解像度で、サイズが1~1000マイクロメートルの複雑な微小金属オブジェクトを室温で、しかも造形時に崩れないようにするためのサポート材以外に、焼成や焼き戻しといった後処理も必要とせずに印刷できるという。
これは、コンピューター支援のアライメント機能を備えた2台の高解像度カメラによるピンポイントでナノメートル単位の正確な位置決めのほか、空気圧駆動の液体分注システム、電気化学堆積法、光学力フィードバックといった技術の組み合わせによって実現されている。
この最先端のシステムは、直感的なグラフィカルユーザーインターフェイスを備え、システムの全ての部分をシームレスに接続するCAPAソフトウェアによって操作される。
印刷プロセスにおけるコアコンポーネントは、カンチレバーに結合されたマイクロピペットにある。これにより、マイクロピペットの先端が接触する力をリアルタイムに監視でき、溶解した金属を高精度で堆積させ、非常に小さな金属構造を層ごとに構築できるという。
映像で見たい方は以下の動画をご覧いただきたい。
この3Dプリントのプロセスは、例えばコンピューターチップの接続やマイクロエレクトロニクスシステムを正確に修復するための新しいプロセスとして、電子産業向けに活用されることが期待されており、ユースケースとしては、マイクロチップ、半導体、高周波アンテナ、マイクロコイルなどが挙げられている。
今回ご紹介したダビデ像の材料には銅が採用されているが、プラチナ、金、ニッケル、銀などの他の金属でも出力可能。
一般の方どころか、日本の製造業でも多くの方が気づいていないレベルに到達している海外3Dプリンターの技術発展にこれからも目が離せない。
関連情報
CERES ULTRA-PRECISE PRINTING SYSTEM
Additive Manufacturing of Sub-Micron to Sub-mm Metal Structures with Hollow AFM Cantilevers
国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。