ASTM International(アメリカ合衆国・ペンシルベニア州、以下、ASTM)の積層造形センター・オブ・エクセレンス(AM CoE)は、積層造形(AM)サプライチェーン全体にわたる品質保証、規制遵守、プロセス管理の強化を目的とした新たな製造業者向け認証プログラムを開始した。この発表は、ASTMが英国最大級の積層造形専門展示会「TCT 3Sixty」においてナレッジパートナーおよびプラチナスポンサーを務めるタイミングと重なっている。(上部画像はASTMのプレスリリースより。出典:ASTM)
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従来QMSの限界を補完するAM特化型の新認証プログラムをAM CoEが開発
従来の品質マネジメントシステム(QMS)規格(たとえば、ISO 9001、AS9100、ISO 13485、IATF 16949)は、業界にとって重要な役割を果たしてきたが、積層造形の特有のニーズに特化したものではない。こうした従来の要求事項を基盤に、AM CoEは積層造形に固有のプロセス、材料、リスクを対象とした、新たな製造業者向け認証プログラムを独自に設計した。本プログラムは、業界のリーダーたちによって開発されたものであり、AMの運用に特化した認証手段としての機能を果たす。
AMCCが業界横断の認証基準を策定、AM特有の品質保証体制を構築
このプログラムの開発にあたり、ASTMの積層造形センター・オブ・エクセレンス(AM CoE)は、ボーイング、ロッキード・マーチン、サフラン、フォード・モーター、ストライカー、ベクトン・ディッキンソン、ゼネラル・モーターズなどを含む25社以上の最終ユーザー企業とともに、積層造形認証委員会(AMCC)を設立した。
この取り組みにより策定されたAM認証プログラムは、一般的なQMS(品質マネジメントシステム)に代わって積層造形特有の活動を検証することで、顧客がサプライチェーン全体において信頼を構築するために必要な保証を提供するものである。
AM認証プログラムの使命は、積層造形における製造品質に関する共通の期待値を定義し、技術的に厳格でありながら実用性の高い認証フレームワークを構築することにある。本プログラムは、業種横断的な実効性を確保するため、OEMごとの特有の要件に対応できるよう調整されており、その監査基準はISO/ASTM 52901、ISO/ASTM 52904、ISO/ASTM 52920といった国際的に認知された規格を基盤として構築されている。
多様な現場で柔軟性を実証、AM認証が製造業の効率化と信頼構築を支援
AM CoEは、監査基準と認証手法を検証するため、AM Craft社(ラトビア・リガ)、Oechsler社(ドイツ・アンスバッハ)、KSB社(ドイツ・ラインラント)においてパイロット監査を実施した。各社における実施は、異なる技術、材料、運用環境に対する本プログラムの柔軟性を証明する結果となった。
新たに提供されるこの認証を通じて、ASTMおよびAMCCは、製造業者に以下のような支援を提供することを目指している。
- 重複する監査を減らすことで時間とコストを削減
- OEMとサプライヤー間の透明性を高めることでコンプライアンスを容易化
- 品質と安全性の最高基準を満たすAM技術の迅速な市場投入を促進
AM認証プログラムは、ASTM AM CoEが提供する各種認証プログラム群に加わるものであり、AMQ(ISO/ASTM 52920)をはじめ、積層造形部品(ISO/ASTM 52901)や金属PBF-LBプロセス(ISO/ASTM 52904)に関する認証、AM施設の安全認証(ISO/ASTM 52931)、人材認証(ISO/ASTM 52942、ISO/ASTM 52926など)などが含まれている。
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