3DプリンティングメーカーのFormlabs(米国マサチューセッツ州サマービル)は2025年11月13日、SLA(光造形)方式向けの新たなエンジニアリング材料「Tough 1000 Resin」と、性能を向上させた「Tough 2000 Resin」を発表した。両材料は既存の「Tough 1500 Resin」とともに、新たなToughレジンファミリーを構成する。
同社によると、新しいToughレジンファミリーは高強度・高耐久の熱可塑性プラスチックに匹敵する性能を備えており、3Dプリントによる実製品用途への展開をさらに加速させる材料群として位置付けられている。
これらの材料は、高い耐衝撃性と耐久性を備え、過酷な使用環境や繰り返し荷重にも対応する。また、Form 4シリーズで造形した場合には、鮮明なディテール表現とダークマットな外観を実現できるという。
目次
HDPE、ポリプロピレン、ABSをベンチマークに開発
Toughレジンファミリーは、各材料の引張弾性率に基づいて命名されており、それぞれ代表的な熱可塑性プラスチックと同等レベルの機械特性を持つ。
Tough 1000 Resinはシリーズの中で最も高い靱性と延性を備え、HDPE(高密度ポリエチレン)に匹敵する性能を実現した。
Tough 1500 Resinは剛性と柔軟性のバランスに優れ、ポリプロピレンに近い特性を持つ。
Tough 2000 Resinはシリーズ中で最も高い強度と剛性を備え、ABS樹脂に匹敵する機械特性を実現している。
Formlabs共同創業者兼CEOのMax Lobovsky氏は次のようにコメントしている。
「Formlabsは、ボタンを押すだけでどのようなパーツでも製作できる製品の実現を目指してきた。そのためには、スピードや使いやすさだけでなく、日常的に使用される製品と同等の耐久性と回復性を持つパーツを製作できることが不可欠である。新しいToughレジンファミリーによって、世界で広く利用されている熱可塑性プラスチックと同等の強度や耐久性を備えたパーツをSLA方式で製造できるようになる。」

実運用環境でも高い耐久性を確認
新材料はすでにアーリーユーザーによる評価が進められている。
Cool Machinesの製図工兼メカニカルデザイナーであるAdam Warren氏は、氷点下環境で実施される厳しい耐久試験においても良好な結果が得られていると説明する。
「当社が製造する実製品用部品は、氷点下での過酷な耐久試験に耐える必要がある。非常に負荷の高い用途で使用しているが、Tough 1000 Resinは十分な耐久性を示している。」
Form Cure L V2で大型パーツの後処理を効率化
Formlabsはあわせて、新型二次硬化装置「Form Cure L V2」を発表した。
同製品はForm 4Lなどの大容量SLAプリンターで造形した大型パーツに対応しており、造形可能なすべてのパーツを収容できる設計となっている。
また、ほとんどの造形品の二次硬化を60秒以内で完了できるとしており、後処理工程の効率化を実現する。
こうした後処理ワークフローの改善により、試作から検証までのリードタイム短縮や生産性向上が期待される。
Radio Flyerの製品開発エンジニアであるAgostino Lobello氏は次のように評価している。
「エンジニアリング用レジンを含め、すべての材料で非常に短時間の二次硬化が可能だった。作業時間を短縮でき、完成品をより早くエンジニアへ届けられるようになった。」
PreForm 3.54で作業効率を向上
さらに同社は、プリント準備ソフトウェア「PreForm」の最新版となるPreForm 3.54を公開した。
今回のアップデートでは、FormシリーズおよびFuseシリーズ向けに複数の新機能が追加されている。
主な追加機能は以下の通りである。
- 新しいサポート材生成アルゴリズム「Supports V2」
- 測定ツール
- CADアセンブリインポート機能の向上
- パッキング機能の向上
- ユーザーエクスペリエンスおよびナビゲーションの改善
これらの機能強化により、サポート生成やデータインポート、パーツ配置といった準備工程の作業時間を削減し、設計や問題解決などの重要な業務へより多くの時間を割けるようになるとしている。
Formlabsは、材料、後処理装置、ソフトウェアを一体的に強化することで、SLA方式による試作から実製品製造までの活用範囲拡大を目指している。
編集部コメント
今回の発表は、SLA(光造形)の材料性能向上と生産ワークフロー改善の両面を強化する取り組みとして注目される。
特に新しいToughレジンファミリーは、HDPEやポリプロピレン、ABSといった製造業で広く利用されている熱可塑性プラスチックを基準に性能を示しているため、ユーザーにとって用途をイメージしやすい点が特徴である。光造形は高精細な造形品質を強みとしてきたが、近年は機械特性の向上によって最終製品や機能部品への適用も進みつつある。
また、Form Cure L V2やPreForm 3.54の発表からは、造形品質だけでなく、後処理やデータ準備を含めたワークフロー全体の効率化を重視していることがうかがえる。試作から小ロット生産までを視野に入れた環境整備が進むことで、SLA方式の活用領域は今後さらに広がる可能性がある。
用語解説
| ■ SLA(光造形) 液体レジンにレーザーや光を照射して硬化させる3Dプリント方式。高い表面品質と寸法精度を特徴とする。 |
| ■ HDPE(高密度ポリエチレン) 耐衝撃性や耐薬品性に優れた熱可塑性プラスチック。容器や配管、工業部品など幅広い用途で使用されている。 |
| ■ ABS樹脂 強度や剛性、加工性に優れた熱可塑性プラスチック。自動車部品や家電製品の筐体などに広く利用されている。 |
| ■ 二次硬化 光造形後のレジン部品に紫外線や熱を加え、材料本来の機械特性を引き出す後処理工程。 |
| ■ PreForm Formlabsが提供する3Dプリント準備ソフトウェア。造形配置やサポート生成、プリント設定などを行うために使用される。 |
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