Markforged社が航空宇宙部品向け新材料「Vega」を発表
炭素繊維材料での造形を得意とする米Markforged社が、航空宇宙分野向けに開発した新素材「Vega」を発表した。「Vega」は「PEKK材」ベースのカーボンファイバー強化材であり、高強度と軽量化を実現している。PEEK材やナイロン材と比べても優れた材料特性を持つ「PEKK材」は、アルミ材の代替え材料としても検討できる。「Vega」に材料置換することで、軽量化・コスト削減に貢献できる可能性がある。(上部画像は「Vega」出典:Markforged社)
「Vega」の特徴
「Vega」は「PEKK材」の樹脂にカーボンファイバーを充填した高性能複合材料だ。アルミ並みの高強度と軽量性を両立している。Markforged社によれば、「Vega」は3Dプリンターでの製造に使用されるほとんどの高耐熱プラスチックを上回る優れた表面に仕上がるという。滑らかな黒のマット表面仕上げで、航空宇宙部品に必要なクオリティを提供できる。
またこの新素材は、高耐熱プラスチックで問題となりやすい反りに強く、高付加価値の用途向けに難燃性・耐煙性・耐毒性(FST)を備えているという利点も持つ。特に、生産部品において欠陥が少なく反りが少ないということは、生産レベルの表面品質を提供するために必要な後処理が少なくて済むということである。そのため、検査時の部品受入率の歩留をアップできるだろう。
優れた機械的特性、耐熱性、耐薬品性を備えた「PEKK材」
「PEKK材」は重合体の一種であり、ポリエーテルケトンケトンの略称である。結晶性熱可塑性プラスチックに分類され、優れた機械的特性・耐熱性・耐薬品性を有している。ガラス移行温度が143°Cと高く、高温でも形状安定性に優れている。航空宇宙や自動車などの高機能部品に用いられている。
従来3Dプリンターの材料として利用されるようになってきた他の樹脂と見比べても「PEKK材」は利点が多い。たとえばPEEK材は耐熱性、化学耐性に優れるが、連続使用温度は250°Cと「PEKK材」の300°Cに及ばない。引張強さなどの機械的特性でも「PEKK材」が上回る。
PPS材も優れた耐熱性を有するが、耐熱温度220°Cが限度で、形状安定性は「PEKK材」に劣る。ナイロン系樹脂は130~150°C程度が限界で、航空宇宙向けなどのミッションクリティカルな場面では、さらに高機能な樹脂を利用したいという声も出てくるだろう。
航空宇宙分野でのメリット
「Vega」は優れた材料特性を持つ「PEKK材」にカーボンの長繊維を配合した高機能材料だ。従来Markforged社が製造業に提案してきたアルミ部品から樹脂部品への代替を推進する際に、注目される選択肢といえるだろう。アルミ材と比べると「Vega」に材料置換することで、軽量化・コスト削減に貢献できる。「Vega」の発売により、Markforged社の3Dプリンターの用途が航空宇宙分野にも広がることが期待される。
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