島津ら、1台3,000万円の国産3Dプリンター開発に着手!日本で金属3Dプリンターの普及促進を狙う
島津製作所の子会社である島津産機システムズ株式会社およびエス.ラボ株式会社、第一セラモ株式会社と近畿大学が「MEX方式(材料押出積層法)の金属3Dプリンターによる金属・セラミックス部品の開発技術の革新」を目的にした共同研究を開始した。研究期間は2年間で、4者の拠点に装置と部材を置き効率的に研究を進めていく。
共同開発に至った経緯
日本で金属3Dプリンターを導入するにあたっては大きく分けて3つの課題がある。海外製の装置・原材料が多く流通しているため「導入・利用コストが高い」「アフターサービスが十分ではない」「日本メーカーの需要に即した製品が少ない」という課題だ。
今回の共同研究では3つの国内メーカーと大学のそれぞれの専門性を活かし、MEX方式金属3Dプリンターの純国産化を達成することで既存の課題を解決する狙いがある。想定価格は3,000万円だ。
開発予定の金属3Dプリンターについて
現在、金属3Dプリンターの多くは、敷き詰めた金属粉末をレーザーで溶かしながら造形する「PBF方式」(粉末床融解結合方式)が採用されている。その中で、樹脂を素材に使用する3Dプリンターで主流だった「MEX方式(材料押出積層法)」を金属3Dプリンターでも採用する動きが出てきている。MEX方式は金属粉末を混ぜた樹脂材料を熱で溶かしながら造形した後に、樹脂を除き造形物を作成する方式だ。
必要設備のシンプルさや造形スピードの速さ、大きな造形物にも対応できるという点で、試作品だけでなく実部品の製造にも適しているとされる。
さらに今回の共同研究では、有機溶剤を用いない方法の実現を目指しており、「環境に配慮した金属3Dプリンター」の普及につなげたいという狙いもある。
共同研究の金属3Dプリンターは、第一セラモの3Dプリンター用材料を、エス.ラボの金属3Dプリンター「GEM200DG」で造形し、島津産機システムズの小型真空脱脂焼結炉「VHS-CUBE」で焼結する加工過程の実現を目指す。近畿大からは金属3Dプリンター技術の権威である近畿大学次世代基盤技術研究所の京極秀樹特任教授が研究全体の評価・指導に当たる。
共同研究は一カ所で集中して行うのではなく各者の拠点に装置・部材を置いて効率的に研究を進め、材料ごとの最適な処理条件の探求や金属3Dプリンターシステムの改良に取り組み、専門知識がなくても容易に金属3D造形品を生産できるノウハウを確立することを目指す。
日本で金属3Dプリンターの普及が遅れている理由
海外では金属3Dプリンターを活用したさまざまな事例が発表されているが、日本ではそれほど多くない。今回の共同研究でも解決すべき課題として提示されているが、導入コストが高額であることがその理由としてまず挙げられるだろう。
金属3Dプリンターは1億円以上することが珍しくない。大量生産によって生産コストを下げられるのなら検討の余地はあるが、金属3Dプリンターは製品を大量生産できるほどの造形スピードは望めないのが現実だ。そのため、製品自体が高価値で、販売数量も少ない医療分野や航空宇宙産業向けの製品に偏ってしまう。
今回の共同開発での生産を目標をしている金属3Dプリンターは税込価格で3,000万円。アフターフォローの課題や国内需要を満たす、日本企業向けで低コストの純国産金属3Dプリンターが開発されれば、日本の金属3Dプリンター市場も活性化するだろう。今度の動向にも注目したい。
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