日本初!吉村建設工業が国交省からの国道工事をPolyuseの建設用3Dプリンターで現場施工
吉村建設工業が、国土交通省発注の国道24号河原町十条交差点工事において、日本の建設用3DプリンターメーカーPolyuse(ポリウス)の建設用3Dプリンタを活用し、国内公共事業として始めて、作業現場で3Dプリンターを稼働させ直接構造物を印刷する「オンサイトプリンティング(現場施工)」を実施した。(写真はオンサイトプリンティングの模様。出典:Polyuse)
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日本の国道工事で初!建設用3Dプリンターの現場施工
国道24号河原町十条交差点(京都市)電線共同溝工事は、国土交通省近畿地方整備局が発注する公共工事だ。これを、地元の建設業者である吉村建設工業と、建設用3Dプリンタを開発するPolyuseが請け負った。
Polyuseの建設用3Dプリンタが活用されたのは、歩車道境界ブロック(いわゆる、縁石)の設置だ。工場で事前に印刷した縁石を持ってくるだけでなく、現場に3Dプリンタを導入し、現地の地形に合わせた部材をその場で印刷すること(オンサイトプリンティング)に挑戦した。
Polyuseは本施工を無事に完遂し、公共事業としては国内初となるオンサイトプリンティングを成し遂げている。3Dプリンタの実用性と高い信頼性、効率の良さを大々的にアピールする結果となった。
建設用3Dプリンターで国交省の要求項目を達成。現場施工の道が開かれた
現場は、緩く傾斜した長いカーブが続く公道、真夏の炎天下だ。3Dプリンタには以下のような性能が求められた。
・3Dプリンタの移動とサイズ調整
・傾斜3%への対応
・夏の外気温下での安定した造形
工事現場では、工場内とは違い、印刷のための自由なスペースが与えられるわけではない。3Dプリンタは、施工予定地の近くに専用スペースを確保し、順次移動させつつ印刷を行う必要があった。Polyuseは、必要に応じてサイズを変更できるマシンを用意し、現場に臨んだ。
現場の環境に対応するに当たっては、吉村建設工業と共に、事前計測を行った。傾斜が存在する場合、材料を積み上げていく際に、造形物が崩れてしまうリスクも否定できない。Polyuseでは、本施工環境と同等の模擬環境を用意し、事前に十分なテストを行うことで、傾斜の問題をクリアしている。
オンサイトプリンティングが工場内での印刷と最も異なるのは、風雨や直射日光を遮るものが存在しない点だ。施工が行われたのは7月の暑さの中であったが、Polyuseではこれまでにも夏や冬、雨季、屋外など様々な環境での印刷実績があった。今回の周囲環境に合わせて調整を行い、炎天下での安定造形を実現した。
本施工による2つの効果ー施工期間の削減と自由形状の実現
実証実験を兼ねた本工事であったが、3Dプリンタによるオンサイトプリンティングのメリットが可視化された。
1つは、施工期間の大幅な短縮だ。
従来工法では基礎となるコンクリートを敷設した上に、縁石部材を載せる。基礎コンクリートの型枠組立や打設、養生、型枠の取り外しなどにはどうしても長い時間が必要だ。
一方で、今回行ったオンサイトプリンティングでは、基礎と縁石部分とを一体化して印刷する。工数が減ったことが工期短縮に繋がり、施工期間は半分以下となった。
今回のような公道の工事では、少なからず交通に影響を与える。オンサイトプリンティングが一般化していけば、周辺住民への負担も大きく軽減されるだろう。
2つ目は、現場の環境に合わせた任意形状の縁石を形成できることだ。
道路の傾斜、カーブやその度合いはそれぞれ異なる。従来部材では直線の部材を並べて、隙間を埋めていたが、3Dプリンタを使えば、より柔軟に現場の地形に対応することが可能だ。
建設用3Dプリンターの今後の課題と展望
本施工からは、メリットだけでなく、今後の課題も明らかとなっている。設置する座標の設定や、非水平環境での印刷は、今後の改良次第で改善できる可能性も指摘された。さらなる研究開発によって、工事現場の効率化がなされることに期待したい。
現在の建設業界は、深刻な人手不足が存在している。国土交通省発表資料によると、技能労働者約340万人のうち、今後10年間で約110万人が高齢化等により離職の可能性が高まり、若年者の入職が少ない傾向が算出されている。更には、日本の社会インフラの老朽化が急速に進んでいる。高度成長時代を通じて、山間部まで張り巡らされた国道、県道、市区町村道のメンテナンスは今後の日本の大きな課題だ。大型車両が入れない細い道の周りの擁壁の維持などは気候変動で予想外の被害を経験している日本各地で大きな問題にもなっている。
こうした課題解決のために注目されているのが、建設・土木工事のDXそのものである建設用3Dプリンターの存在だ。建設用3Dプリンターの開発をすすめるPolyuseは、建設の実際現場におけるDX化が業界の生産性向上においては特に重要と考え、ICT建機として建設用3Dプリンターを位置づけ開発を進めてきたし、実際に施工を行う吉村建設工業は、国交省からの受注案件で、段階を踏みながら、実際に現場施工を行う段階まで具体化を進めてきた。
Polyuseは、建設用3Dプリンタを使って、従来にない建造物や工法に挑戦している。 Polyuseの過去の事例については、以下の記事も参照していただきたい。
Polyuse社製建設用3Dプリンターが国土交通省主導のPRISMプロジェクトで共同実証を行う
TCWとPolyuseがPCカーテンウォールに関する共同研究を開始
国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。