再生医療ベンチャーCyfuseが東証グロースに上場
九州大学発の再生医療ベンチャー企業Cyfuse(サイフューズ)が、2022年12月1日、東証グロース市場に上場した。Cyfuseはバイオ3Dプリンターの開発やバイオ3Dプリンターを用いた医薬品の開発を行っている。
目次
バイオ3Dプリンティング技術で再生医療に取り組むCyfuseが東証グロース市場に上場
Cyfuseは、2010年に設立された九州大学発の医療ベンチャーで、バイオ3Dプリンターを活用した新たな再生医療の確立に取り組んでいる。Cyfuseは、2013年にSeriesAで5.4億円、2015年にSeriesBで14億円、2018年にSeriesCで15億円の資金調達を実施してきた。
漸進的な技術開発や資金調達を経て、2022年12月1日、東証グロース市場に上場した。上場に伴う資金調達23億3600万円は、開発中の末梢神経などの再生臨床試験費用や、開発パイプラインの商業化必要な機器の開発費用、人件費に充て事業の拡大を目指す。
再生医療は今後の成長が期待される注目領域
再生医療とは、人工的に培養した細胞や組織、構造物を使って、機能の低下した臓器や失われた臓器を再生させる医療のことだ。
再生医療は、2006年頃、iPS細胞誕生によって大きく注目を集めるようになった。iPS細胞は、皮膚などから採取した細胞を、どんな臓器にも分化することができる細胞(幹細胞)へと人工的に変化させて作られる細胞のことだ。このiPS細胞を培養し、特定の刺激を与えることで所望の組織を作り出すことができる。
iPS細胞を用いた移植手術は、目の網膜など、小さな組織から臨床試験が進められている。将来的に、活用範囲は順次拡大していくだろう。
再生医療は、従来の移植医療と異なり臓器ドナーを必要とせず、主に自身の細胞を使うために拒絶反応のリスクが少ない。また、従来の医療では解決できなかった医療上のニーズ(アンメット・メディカル・ニーズ)を解消する可能性を有する。
加えて、再生医療に関する技術は、外科的治療方法としてのみならず、新たな医薬品の開発に対しても画期的な基盤技術となるかもしれない。これからの医療の発展を担う技術として、多くの注目を集めている。
サイフューズがバイオ3Dプリンティング技術で実現する新たな再生医療
Cyfuseは、再生医療の新たな可能性を模索している。Cyfuseが取り組むのは、バイオ3Dプリンターを活用した立体的な組織や臓器、「3D細胞製品」を構築だ。バラバラの細胞と、それらが立体的に結びついた組織では、機能が全く異なり、人体への影響も大きく変わってくる。
これら3D細胞製品の開発と、関連技術の開発、及び、製品の効果を検証するための臨床試験がCyfuseの主な事業だ。
また、Cyfuseでは、バイオ3Dプリンターの開発も行っている。
組織を針で串刺しにし、立体的に並べて培養した後、針を取り除くという剣山メソッドによる3Dプリンティング方式は他の業界にはない珍しい方式だ。Cyfuseのサイトで見られる以下の動画では、Cyfuseの3D細胞製品がどのように作られているのかが分かりやすく紹介されている。
再生医療はいままでの医療技術では治療が困難な患者を救う可能性を秘めている。バイオ3Dプリンティング技術を活かして多くの命が救われる可能性がある。2030年には100億円以上の売り上げを挙げることを目指して活動を行っているようだ。
サイフューズの将来構想の中で、デバイス販売(つまりバイオ3Dプリンターの販売)の割合はグラフからは20%以下程度のように読めるが、すでに装置開発は第3世代まで進化を遂げているという。ラボ機から臨床機、商用機と着実にステップを踏んでいることが伝わってくる。工業製品でいうところの最終部品製造を安定的にこなす装置開発に入っている段階だ。その次のステップは量産機といえるだろう。細胞培養装置を開発する医療機器メーカーでもあり、自社開発の培養器による組織・臓器製造を行うサービスビューロでもあるサイフューズ。
当面は難しいかもしれないが、大量製造できるようになれば、手に届く価格に落ち着いてくる可能性もでてくるだろう。サイフューズの今後の躍進が、よりよい医療の実現につながるのであれば、ぜひ積極的に応援したいところだ。
医療領域におけるバイオ3Dプリンティング技術の活用事例
医療現場に3Dプリンタが活用される事例は、特に海外で増えてきている。過去、当サイトで取り扱った内容については、以下の記事も併せてご参照頂きたい。
>>再生医療の進化に貢献。バイオ3Dプリンター国内外最新事例
>>結合双生児モデルを3Dプリントし、難易度の高い分離手術を3Dプリンターがサポート
>>3D Systemsが新バイオテクノロジー企業 Systemic Bioの設立を発表し、創薬と開発を加速
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