国際宇宙ステーション内でヒトの膝半月板の3Dバイオプリントに成功
宇宙におけるバイオテクノロジー事業などを行うREDWIRE社が、2023年9月7日、国際宇宙ステーション(以下、ISS)に設置した3Dバイオプリント施設(以下、BFF)を改良し、宇宙軌道上で初めてヒトの膝半月板の3Dバイオプリントに成功したと発表した。
バイオプリントとは、人工的に生成されたiPS細胞から3Dプリント技術を用いて生体システムや治療製品を作製することをいい、バイオファブリケーションとも呼ばれる。
今回のヒトの膝半月板の3Dバイオプリントの成功は、民間人の10倍とされる米軍兵士の一般的な傷害のひとつである半月板損傷の治療法改善へつながることが期待される。
REDWIRE社はISS向けに20の研究施設を開発し、現在はそのうちの10施設がISSで運用され、世界をリードする研究を提供している(上部画像はREDWIRE社のプレスリリース。出典:REDWIRE社)
ヒトの膝半月板の3Dバイオプリントの概要
ISSの微小重力条件下で動作するBFFは、生きたヒト細胞からなるバイオインクが使用された。3Dバイオプリンターにより、最初のバイオプリントが成功すると、新しく形成された半月板組織はすぐに専用機器に移される。細胞増殖に必要な条件をシミュレートした厳密に制御された環境で組織が14日間にわたって培養された。
この2週間の培養の後、組織は固化・成熟し、単なる足場から機能的な生きた組織へと進化した。バイオプリントされた膝半月板は、分析のためにSpaceX Crew-6ミッションに搭載され、2023年9月4日にフロリダ沖に着水したのち安全に保管された。
この実験は、米軍兵士と人類に恩恵をもたらす可能性のある画期的なバイオテクノロジーを探求し、適応させることを目的に行われた。バイオプリント作業は、宇宙飛行士であるNASAのFrank Rubio氏、Warren Woody Hoburg氏、Stephen Bowen氏、そして、アラブ首長国連邦のSultan Al Neyadi氏によって実施された。
REDWIRE社は今後、2023年11月に予定されているSpaceX CRS-29のISSへの補給ミッションで、心臓組織のバイオプリント実験を含む、医薬品開発と再生医療に焦点を当てた実験を行うとしている。
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